悪役令嬢、異世界に転生する。
私はこの世界で悪政の限りを尽くした。
あらゆる贅沢を楽しみ、豪遊をしまくった。
そのせいで領民から反感をかり反乱を起こされた。
今でもその光景は覚えている。
領民達の私に向ける冷たい怒りの眼。
ああ……私の命もここまでか。
ギロチンの音が私の首をはねる音。
ふと気付いたら現代の日本に転生していた。
真っ黒な髪。
見慣れない幼い顔立ち。
この生ではまっとうな人生を生きよう。
そう心に誓った私は、一生懸命に勉学に取り組んだ。
ガールスカウトに入って奉仕活動に参加したりもした。
それは前世での罪を払拭するかのように。
そしてその運命の日が突然訪れる。
私は、子供が車にはねられようとする場面に遭遇した。
体が勝手に動いていた。
私の体は子供の代わりに跳ね飛ばされ。
気付いたら昔の世界の自分に転生していた。
懐かしい見慣れた部屋。
金髪の髪。
見慣れた幼い顔立ち。
私の事を腫れ物に触るように扱うメイド達。
ああ……私は戻ってきてしまったのか。
悪逆の限りを尽くしていたこの異世界に。
「お嬢様。どうなされましたか?」
おずおずと専属メイドが私に問いかけてくる。
……この子にも転生前には散々なめにあわせてしまったわね。
「いいえ。なんでもないわ。今日もかわいいわね、あなた」
私の言葉にパチクリとした顔をして返事に窮している。
さて、この生ではどのように生きるべきなのだろう。
過去のように悪逆の限りをつくすのか。
それとも日本で過ごしていた時のように奉仕に励むのか。
問いかけなくても決まっている。
私を見つめる憎悪に染まった民衆の眼。
そんな目に晒されるのはもう嫌だ。
それならやることは決まっている。
私はゆっくりとベッドから這い出し。
お気に入りだった服に身を包む。
これから私がやるべきことはただ一つ。
転生前とは違った道を歩む。
それは不安でしかたないことだけれども。
それでも私の心はどこか、これから過ごす未知の日々に胸躍らせていた。
ご感想頂けたら嬉しいです。