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二人目の契約者

「くそっ、無駄な抵抗しやがって…」


山賊の一人が俺に膝蹴りされた頬を肩で拭いながら吐き捨てた。

精一杯の抵抗をしたが、攻撃力が恐ろしく低い上に、刺叉装備の奴等に数で押されれば、両腕も使えずに手枷付きの俺はあっという間に押さえ込まれた。


それでも数人は負傷させたが。

腕を歯で噛み切って盛大に出血させたりな。

ざまーみろ。


「ふん。随分と元気な野犬だ。どれ」

「ぐっ」


髪を掴んで上を向かされる。

逆光でよく見えないが、録でもなさそうな顔をしていた。


「………まぁ、良いだろう。その目は割りと好みだ。

ダリル、お前がやれ。上手く使えよ」

「はい」


リーダー格の隣にいたヤバそうな男が近くにやってくる。

源本とは違うヤバイ気配だ。

左手に何かの水晶が輝いている。魔力感知で分かった。あれは凄まじい濃度の魔力が結晶化した物だ。それが大小2つ。


リーダー格の男が離れ、ダリルと呼ばれた男が俺の肩を踏みつけた。

その男を負けじと睨み付ける。

何をするのか分からないが、好きにはさせない。


男が口を開く。


「 ──告げる

海の向こう 空の彼方 星の膜 天の理を超えて

七つの王冠 49の翼を持つ光の主よ

汝の片割れを 刻を駆ける翼を授けて 今古き盟約に従い 我が元に平伏せよ」


まて、この詠唱は…。

細部が違うが、くそ女神に送り込まれたとき、脳内に響き渡った言葉だ。

あの時はジョンの幼い声だった。それが、今回はこいつの声が、魔力を纏って流れ込んでくる。


虫酸が走る。


「契約せよ  汝は我が牙 我は汝の爪である

三つの星と一つの星 交わり 我が力と成せ…」


やめろと、叫びだそうとしたが、声が出なかった。

前々から思ってたが、これもくそ女神の呪いか!?


「平伏せよ。世界を越えたものよ!」


バチン!!!と、首に凄まじい痛みが走った。

やられた。そんな気分だった。


拘束が外されたが、動く気すら無くなっている。


「これでお前は俺のファムルス(召使)だ」


あちらこちらから笑い声が聞こえる。


「さて、契約時の魔力の痺れが残っているうちに命令を下すんだったか…」


左の手首にジョンと同じような模様が浮かび上がっている。だが、こちらのは青ではなく、赤色だった。


「我は三鷹の爪、光を携えるもの。

夜を貫く蛇の牙をもつものに命じる」


男を見る。

こいつは、何を俺に願うのか。





「  俺の言うことに絶対服従しろ  」





















鉄の手錠が外され、両腕が自由になった。だが、俺の首には見えない首輪が付けられてしまった。

相棒契約という名の首輪だ。


ウィンドウの契約者の欄には、ダリル・ブリストルの名前が表示されている。


「バディ、か…」


いいや、アイツはバディではない。


アイツはバディなんか望んでいない。絶対服従の命令を下されて、俺は本当にアイツに逆らえなくなった。

ジョンの命令を拒否したとき、脱力感のみだったのが、アイツの命令に背くと、全身に凄まじい痛みが走るのだ。

くそ女神の高耐久値をすり抜けて、神経に直接干渉してくる痛みは耐えられるものではなかった。


一番最初の命令は、契約者の呼び方だった。


「俺のことは主人と呼べ」

「ふざけんな…。誰がお前なんかに──っっ!!!?」


そう口にした瞬間に今まで体験したこともない程の激痛で気絶し掛けた。

悶え苦しむ俺を見て、周りの奴等は笑った。


何で主人なんだ?と誰かが尋ね、ダリルが「躾のなってない野良犬にはきっちり上下関係を教え込まなくてはならない」と答えた。

リーダー格の男が膝を叩いて大笑いをした。

確かにその通りだと言って、俺を蹴飛ばした。


「ほれ、呼べ。 呼べ!!!! 」


リーダー格の大声が神経に響く。


「ボスの言うことが聞けねーのか? 早く呼ぶんだよ」


「うぅ、ぐっ、ちくしょう…。…………っ」


言いたくない。だが、言わないでいると痛みは益々強くなる。痛みで意識が朦朧としてきた。

これ以上は、無理だった。


言いたくない。

言いたくない。


だが、言わなければ。


呼吸すら苦しい。


屈辱的だ。


「…ッ…主人…」


そう一言、口にした瞬間に痛みから解放された。

脂汗が服を濡らしていた。


リーダー格の男が「これだからファムルスを捕まえるのは堪らん!!!」と大喜びしていた。なんて趣味が悪いんだ。やはり俺の録でもなさそうなと思ったのは当たっていたか。


「!」


朦朧としつつ、視界の端に覚えのある気配を見つけ、そちらを見る。源本が俺を同情の眼差しで見ていた。

ああ、なるほどな。

お前も同じ感じなのか。



あの後、何が楽しいのか様々な命令を下して、俺が拒否して苦しむ様を大勢で取り囲み、長時間いたぶって遊んでいたが、リーダー格の男の「解散」の一言で解放された。


その頃になると俺は全員の顔を把握し、全力で殺すと誓っていた。まぁ、殺す為に色々やらないといけない事があるがな。くそ女神の耐久値ナメんなよ。どんなにもがき苦しんでいても意識はしっかりあったんだ。絶対に殺してやる。覚悟してろ。


と、昨日あった出来事を恨みと共に記憶に刻み付けていると。


「あーあ、とうとうお前も飼いファムルスかー。お揃いイエーイ!」


源本が勝手に隣に腰掛けてハイタッチ要求をしてきた。

当然無視だ。


「つれねーなー」

「馴れ合うつもりはない」

「首輪付きとはいえ、同じファムルスよ?俺達。仲間だぜ?仲良くしよーやー」


全力の殺気を込めて源本を見る。


「貴様は俺の殺害リストのトップだ。死ね。いますぐ死ね」

「わぁー、責任転嫁はんたーい」

「ちっ!」


今すぐ此処で武器を発動したい。

だが、昨日、ダリルに組織の人間に攻撃をすることを先に禁じられてしまっていた。お陰でこいつを此処で(十字架で)殴り殺せない。

とはいえこいつも同じようなものなのか、俺に攻撃する様子はない。

どうやって仕返しできるだろうか?

間接的なら攻撃できるか?


「てかさ、だいたいお前んとこの女神が招いたんだぜ?恨むならそっち恨めよ」

「は?」


意味がわからん。


「俺達は命令された仕事の帰りにあの近くに居たんだが、突然ウィンドウに他所のファムルス案内表示出たんだ。森の綻びの位置情報込みで。したら行くのがフツーじゃん?」


脳裏くそ女神の高笑いが幻聴として聞こえている。

最後の言葉も含め、理解した。

あのくそ女神は、本当に自分が楽しむためだけに俺を地獄に落とすらしい。


「はは!!そーか、そーか、分かった」

「お?やーっとわかったか。んじゃ仲直りッと。わぁ」


肩を組もうとした源本を避ける。


俺は首に下がっている十字架を握り締め、誓いをたてた。

このくそ女神、首を洗って待っていろ。必ず聖杯を手に入れる。お前を殺す為に!!!!


真の地獄はこれからだ!!!

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