表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

1日の始まり

 こちらの世界に来て、記念すべき最初の目覚めの時間がやってきた。が、生憎とそれは心地よく感じることはなかった。むしろ拷問である。体が眠ることを拒絶しているのだ。あと数分くらいで鳴り出す時計を見つめながら、冴え渡った頭で今朝のことを思い出した。


 あれは、まだ私が夢の世界に閉じこもっていた頃の話。猛烈な眩しさが瞼を貫通して、夢の世界から私を引っ張り出したのである。少し直視するだけで失明する気がした。本当にそうなったら洒落にならないのでやらないが。地球では程よく目覚めさせてくれる太陽が、異世界風になると、まるで殺戮マシーンである。


 金属音が部屋に充満しているのに気づき、ようやく意識を取り戻した。夜までには対策を講じる必要があるなと思いながら、洗面所へ向かった。


 洗面所のドアを開けると、高さが1メートルと少しばかりの人形が立っていた。いや、訂正。女神である。


「おっはよー!起きるの早いんだね〜」

「おはよう。シャリルこそ早いね。流石店長さん」

「えっへん!せっかくだし、朝ごはんも豪華にしちゃおう!」

「毎日自分で朝ごはん作ってるの?」

「そうだよ。偉いでしょ〜」

「…いや、ほんと。こんなに小さいのに苦労してるね。私も見習わないとな…」

「あれ?泣いてるよ、鈴華。辛かったら相談くらい乗ってあげられるよ?」

「えっ、泣いてた?あちゃー。シャリルにはこんな顔見せたくなかったなぁ。ごめんね、ちょっと今は話せないんだ。自分でも心の整理が出来てないっていうか、何というか…でも、もしかすると、いつかシャリルに打ち明けられるかもね」

「そう。何かしらの事情があるのね。まあ、いつでも鈴華のことを受け入れる準備はしておかないとね」

「えっ、それって結婚…いやいや、何もない。こんなしっとりしたムードの時に不純なこと考えるなんて…」

「さっきから独り言が多いけど、私のこと嫌い…?」

「えっ、何でそうなる。いえ、そんな嫌いなんて滅相もない。むしろ好きです、愛してます」

「あら、そうなの。元気そうで良かったわ。そろそろご飯の支度をしなくちゃね。椅子にでも座って待ってて、すぐつくるから」

「パン屋のつくるパンですか。これは期待出来ますなぁ」

「え〜、プレッシャーに弱いんだからやめてよぉぉ」


 元の世界の事情を少し挟んでしまったが、最終的には和やかな朝を過ごすことに成功した。こんな新婚さんのような生活が毎日続くとなると、幸せすぎて出血多量でどこかへ転生してしまいそうだ。朝食を終えた後、言うまでもなくシャリルは仕事に勤しんだ。そんな姿も見たかったが、今日はシャリルの友達である、アフィと街を散策する予定が入っている。


 どうやら、この世界には元の世界とは一味違ったことが沢山あるらしい。シャリルには色々と教えてもらったが、他にも知っておくべきことはあると言う。それらは実際に肌身で感じた方が良いらしいので、今日より数日間、アフィによるカローリアツアーが行われるのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ