魔女と魔法少女と僕
魔女?だろうか。箒で空を飛び、黒いローブを身にまとい、特徴的な三角帽子を被っている。となりの自称魔法少女に目を向けるが、彼女も突然現れた謎の人物に警戒心を露にしている。
「よくも私の最高傑作を消滅してくれたわね」
箒の上に佇む女がにこやかに笑う。
表情とは裏腹に彼女からは怒気が発せられている。
「あなたいったい何者なの!?最高傑作ってどういうことよ」
「さっきそこの高校生が倒した魔獣は、というよりもあらゆる魔獣はすべて私が作ったものなの。何者かっていう質問には、あなたたち魔法少女の始祖とでもいうのかしら。もしくは末路かしら。そんな存在よ」
「な…いったいどういうことなの!?私はそんな話聞いたことない」
「まー、そうね。あなたたちの組織からしたら、自分たちの失態で危険な目に合わせているなんて言えっこないものね」
「失態…?まさか」
「だいたいあなたの考えている通りかもね」
「だとしたら私は、いったい、なんのために…」
自称魔法少女は絶望の表情を浮かべ、魔女はそんな少女に憐れみの表情を向ける。
僕は完全に蚊帳の外のようだ。
どうやら魔女の注意も僕には向いていないようだし、面倒くさいことに巻き込まれる前にお家に帰ろう。日も完全に沈んで真っ暗だし。
僕は踵を返し歩き始めた。
その突如、雷光が僕の目の前に走った。
「ちょっと何しれっと帰ろうとしてるのかしら」
「あら、ばれちゃったか。意外に鋭いね」
僕が気配を消すと、その場にいてもいることに気づかれないレベルだ。それでクラスでも誰からも話しかけれないようにしてるし。
え?それは気配を消してるわけじゃなくて、単純にぼっちなだけだって?
……
まー、とにかく、この魔女は油断ならないようだ。
僕は重心を落とし、臨戦態勢をとる。
「…やっぱり、あなた、ただ者じゃないわね。こんな威圧感感じたことないわ」
「ありがとう。お世辞でも嬉しいよ」
「でも、それでも。私の野望を邪魔したことは許せないわ」
魔女から濃厚な負のエネルギーがあふれ出す。
先ほど倒した‘この世ならざる存在’を上回るエネルギーだ。彼女が生み出したというなら、それも当然のことか。
宙にうく彼女に近づくために、足に力をためたとき、
「あーーーー!!!もういい。細かいことはどうでもいい。あなたがゴーギュラスの産みの親なのよね?今の私にはそれだけでいい。ゴーギュラスにぶつけるつもりだったこの激情をあなたにぶつけさせてもらう」
突然自称魔法少女がまくしたて、ステッキをへしおった。
へし折られたステッキから負のエネルギーがあふれ出す。
「術式展開、魔獣変化【プロメテウス】!!!!」
あふれでた負のエネルギーが少女に纏う。ゴスロリの衣装でふわふわとした外見から、とげとげしくシャープな外見へと変貌する。どこを触っても刃物で切り裂かれるようなプロテクターで体を覆い、理性をぶっとばした獣のように魔女をにらみ、ぐるると唸り声を上げる。
そして、がっと魔女に対して飛びかかった。