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すぐ感情的になるのは僕の悪いとこだ

 男の異能は完璧なる肉体操作。

 人間の限界まで引き上げられた身体能力を十全に使える力。100m走は9秒前半を記録し、ベンチプレスは500kgを持ち上げる。それでいて、フルマラソンは2時間を切る。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの五感から、反射神経なども究極まで研ぎ澄まされて、それを思うままに動かすことができる。


 それはこの異能がはびこる都立立川東高校において、一見地味な力に見える。しかし、彼はここまで生き延びていた。それは身体能力と同等に引き上げられた彼の思考能力・判断力により、ここまで的確な判断を下すことができていたからだろう。


 そんな異能の力を持っていたからこそ、仲間の‘絶対に召喚したいものを召喚できる召喚魔術’によって明美ではない別の人物が現れた異常事態に、一人距離をとり、じっと身構えていたからこそ、この現れた特殊な男の咆哮に対処し、意識を手放さずに堪えることができたのであった。

 

 男も選ばれた特殊な人間だからこそ、この目の前の異様な事態に恐怖を感じていた。



ーーーーーーーーーーーー


「…楽にしねると思うなよ?」


 僕の咆哮に耐えた男に向かって怒りを向ける。

 あそこまで期待させる演出をしておいて、ただ河原に移動しただけで、さらには突然火の玉をぶつけようとしてくる。これはぼこぼこにしても何も文句は言えんだろう。


「わかった。降参だ。なんでも言うことを聞くから許してくれ」


 男は立ち上がり、手を挙げてそんなことを言う。


 もちろん、僕はそんな言葉に耳を貸さず、みぞおちに一発こぶしをお見舞いする。


「…ぐふ!?」


 男はさらに驚愕の視線を僕に向けるが、そんなことはお構いなしに僕は男の足に回し蹴りを食らわせる。男の足は本来なら曲がらない方向に曲がり、地面に転がり込んだ。


「ぐはっ!いてーーーー!!!」

「黙れよ!!!」

「…!!」


 僕は男の髪を使んで、顔にぐっと近づく。


「人の存在を消そうとしておいて、殴られたくらいで悲鳴を挙げてるんじゃねー」

「ぐ…」

「大体なんだよ。人を期待させるだけ期待させておいて」

「悪かったから勘弁してください…勘弁してください…勘弁してください…」


 男は顔面を涙と鼻水と血でぐちゃぐたにして、みっともなく謝り続ける。

 僕はそんな男の表情をみて、弱いものいじめをしている現状に気付き、すっと感情がフラットに戻った。


「まー、僕も感情的になりすぎた、かな。もう許してやるから、二度とこんなことはするなよ」

「…しない!絶対にもう二度とこんなことはしない!このくだらない争いからも降りる!生きてるというだけで俺の望みはすでに叶っている!」

「お、おう。そうか。なんだ、達者でな」

「はい!!!」


 僕はそう言って、河原の上に上がり帰路につく。

 この時の僕は思わなかった。家に帰るのにあんなに苦労することになろうとは。

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