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  水の都メネス、国家解体戦争後の大気汚染と環境破壊が進んだこの世界で水資源はとても貴重なものであり、それをそのまま飲用できる自然の水源を有するメネスは飲用水を科学的に生成して代用している他勢力にとって、喉から手が出る程に自勢力下に治めたい都市のひとつとしてその地に存在している。

 

 そんな水の都メネスは、対岸が霞んで見える程の広さを持つメネス人口湖と大規模な採水ポンプ基地から伸びた全長40キロメートルの送水パイプで結ばれた、政治、産業等の都市機能を持つ都市部の二つで成り立っている、前者をメネス採水区、後者をメネス行政区と区別し、都市で生活する人々は採水区を町、行政区を都と呼んでいる。


 メネスは旧世界のロストテクノロジーによって作り出された、自然サイクルを利用し、高度な科学技術によって補完された湖故に、生活インフラ全てを湖が賄っている、日々の糧もその殆どが湖で採られているおかげで、都と町の流通の要である目抜き通りは人やトラックで溢れ返り、毎日がお祭りの様な賑わいぶりだ。 


 そんな町と都を結ぶ街道を外れて巡察用ルートを使い、大型トラックが余裕で中を通れそうな大きなパイプラインに沿って一行は進んでいた。

 「もうすぐ都の第一ゲートが見えてくるはずだ」

ハンドルを握るモーリスは何度もこの道を通っているだけあって道が分かるらしく、地図も見ないで唐突にそう話した。

 「第一ゲートって?」

都に来た事の無いエルリックが皆の予想通り質問してきたので他の三人は思わずはにかんでしまう、すると俺の出番と言わんばかりに横に座って窓の外を眺めていたミーシャが、自警団の仕事が無い時に通っている、学校の有名な先生の真似をする。

 あごを上げ、左手の人差し指を立てて「良いですか、エル坊君」と少々高慢な口調で話し始めた・・・。


 ゲートとは、侵略者から都市を防御するために作られた防壁の事で、侵略者を撃退するための重火器や、侵略者の行動を察知する野戦レーダーなどで武装しつつ、侵略者の進行を遅滞させる地雷や障害物を無数に配置し、トーチカの中から自警団が攻撃できるように作られた、防御陣地の事で第一と第二の二重の防御となっている、第一ゲートは前述の第二ゲート程厳重ではなく、もっと簡素にした作りで第二ゲートより外側に布陣された防御陣地の事だ・・・。


 ミーシャが面白おかしく、自分が陣地警戒の仕事に着いていた時の事や、ゲートの門番中にこっそり昼寝していた事などの、エピソードを交えてゲートの事や陣地の事を話していたので前に居る二人も会話に入り皆で盛り上がる。

 

 会話の内容が説明から面白話、そして苦労話へと転換してきたのでエルリックも過去の苦労話を持ち出して会話に参加する。

 中でも相当な大惨事となった事を会話の話題にしたせいで、当時の事を思い出してしまい、目頭が熱を帯びて目が潤んでくる。


 エルリックの話が一息付くとミーシャが「そいつは災難だったな」と言って背中をバシバシ叩いてきた。

 エルリックの話のオチが読めたリゲルとモーリスは、楽しそうに大人の話を始めるものだから後ろの二人は会話に参加できず、頭の上に浮かんだはてなマークが見えるんじゃないかと思うほどに小首をかしげている。

 

 少し眠気が襲って来たミーシャは話を遮る様に、座席の間から腕をビシッとまっすぐ伸ばし、質問を投げかけた。

 その質問に答えようと後ろを振り返ったリゲルだが、大口を開けて頭を前後に揺らして船を漕いでいるエルリックを見て思わず、体勢を戻して腹を抱えて笑い出す。

 なにか話そうとして口を開けるが可笑しくてジタバタと座席の上でもがく事しかできない。


 そんなエルリックをミラー越しに見ていたモーリスは「ゲートが見えて来たからシャンとしろ」と皆を窘める。

 リゲルは涙目になりながら笑いを必死で堪え、ミーシャは肩をゆすり「起きろー」と言ってエルリックを起こす、そのエルリックは「んあ?」と変な鳴き声を漏らし、口の端に溜りかかった涎を左手で拭い背筋を伸ばしてシャンとする。


 程なくして、車の前方に有刺鉄線で作られた大人の腰より少し高い程度の柵が、幾重にも張り巡らされているのが見えて来た、車は目の前に張られたゲートの何も張られていない所に向かって進み、そこで銃を構えて仁王立ちしてこちらに目で殺さんばかりの、殺気交じりの視線を突き付けてくる門番の指示に従い車を止める。

 別の門番がモーリスの元まで来ると、彼に巡察で使う通行証を見せ事情を説明した。

 事情を無線連絡で聞いていた、その門番は「大変だったな」と声を掛けてくる、同時に銃を持っていない左手を上げて、空中に円を描き他の門番に異常なしのサインを送ると、車の前にいた門番の一人が車止めを手で引いて退かし、車がゲートを通行できるようにしてくれた。

 モーリスが礼を言って車を出すと、車止めを移動させた門番がコンコンと車のドアを軽く叩いて挨拶をする、モーリスはそれに窓から手を出し挨拶を返す。

 車が動き始めるとエルリックは自分を見ていた門番と目が合った、彼は意図せず握った左手の親指を立ててニカッと歯を見せて笑顔を作る、エルリックはとっさに手を振って挨拶を返すと、その門番は綺麗な笑顔を顔いっぱいに浮かべてにこやかに笑っていた。


 第一ゲートを通過すると見える風景は殺伐とした仰々しい景色へと一変した、第二ゲートへ続く道幅8メーターの凹凸の激しい通路は、せわしく九十九折(つづらおり)に曲がりくねっており、視界を遮る様に高く積み上げられた土嚢が進路を一方向に限定している。

 そんな殺風景な景色をさらに殺伐とさせているのが、通路の外との境目に立ててある「危険、地雷原」と赤字でデカデカと書かれた、飾り気の一切ない木製の立て札が緊張感を煽る、それに追打ちを掛けるように周囲の刺々しい有刺鉄線の柵がその緊張感を逆なでする。

 第二ゲートまでの700メーターの道のりは第二ゲートの高見台から常に監視の目を光せていて、常に人の視線を感じて殊更不快になる。


 第二ゲートを通過した直後「無駄に緊張した」と言ってエルリックが深呼吸して肩の力を抜いた。

 何度も外地巡察でゲートの往来経験のある他三人は、ゲートの放つ攻撃的な張詰めた緊張感に慣れっこの様子だがエルリックは一人、疲れた表情を醸し出す。

 「そういえば、エルリックはゲートを通行するのは初めてでしたね」とリゲルが声を掛けてきたのは単に緊張を和らげるためだろう、恥ずかしい話だが町を出発するときのエルリックは空も明け切らぬ早朝と昨夜の遅番も有りゲートを出る前に任務開始早々に寝入ってしまったのだ。 


 このゲートは自警団しか使わないからこれでも警備は甘い方だとモーリスは言って、住民や商人、旅人達の使う街道は通行しやすいが警備はもっと厳重だと教えてくれた。

 エルリックはそこでの仕事に就いたことが無いので、想像してその様子を頭の中で想い描くと戦々恐々として手に持った鉄砲を両手でギュっと抱きしめ口を紡ぐ。


 周囲に露店や民家が見え、人々の生活の営みを感じてくると、今までの緊張が一気に緩んだミーシャの腹がまるで地響きの様に鳴り渡る。

 それをすぐ横で聞いていたエルリックは、リゲルから貰った携行食の残りが入っているチェストリグのポケットに手を移し「さっきの携行食の残り有るけど食べる?」と問いかけるが、ポケットに当てた手は、中に入っているものを取り出す事無く元の位置に戻された。

 ミーシャは空腹で食べる飯は最高にうまいと言って、話は再び食堂で何を頼むかという話題になり、モーリスは酒が有ればもっと良いと言って話が晩酌の方へ脱線する。


 頭上に伸びたパイプラインの途中で道は終わり、代わりにそこには三階建ての建物が三棟、中央の広場を囲うように建てられた広場に差し当たると、モーリスはその広場に整然と規則的に並べられた車列の一角に車を止めてエンジンを停止した。


 「まずは詰所に寄って面倒な事務手続きを済ませちまおう」とモーリスが車のドアを開けながら皆に言い、エルリックもその言葉に従い車を降りてモーリスについていく。

 建物の入り口近くまで来ると、先頭を歩いていたモーリスが足を止めてこちらを振り向き、他の三人も続くように円を作る。

 互いの銃に弾丸が入っていないか、ハンマーが落ちてセーフティーがかかっているかを手足を動かす如く当たり前の様に確認しあう。


 誰が言うでもなくタイミングを計ったかのように全員が同じタイミングで「バシャン!」とトリガーを引いて、ダストカバーを閉じる音が重なって響く。

 銃が安全状態になった事を各々確認すると「行くか」とモーリスが短く言い、建物の扉を開け中に入った。


 建物に入ると、ロビーに面して長方形をした大きくもない、引戸式のガラス窓に小さな荷物置き用の棚が窓のすぐ下に掛けられた小窓に向かい、棚に置かれた呼び鈴を持ち上げ揺らすとチリリンと澄んだ音が鳴る、少しの間隔を開けて窓の反対のカーテンが開き、続いて小窓も開けられる。


 「巡察第四班のモーリスだ、巡察の中間報告に立ち寄った」と窓を挟んで自分の目的を告げると、窓の向こう側から、恰幅の良さそうな顔立ちをした、立派な口髭を生やした人物が顔を覗かせる、その人はモーリスを見るや否や「無事で何より」「医務室へはもう行ったのか?」「体は異常ないのか?」等々、矢継ぎ早に一方的に質問しながら、慣れた様子で手際良く自警団指令室に連絡を入れたり、医務室への連絡やら手続やらを素早く済ませて行った、やはり自分たちの事は事前に知らされていた様だった。


 何もなければ、ここで巡察簿冊に途中経過を記入するのだが、今回は違っていた。

 一行を心配する矢継ぎ早に飛んでくる質問に、生返事で答えていたモーリスだが、相手の動作が一段落してきたころを狙って状況は今どうなっているか?と質問を返すが、新しい情報は得られなかったので、早々に礼と別れを言って医務室の入っている向かいの建物に足を進める。


 建物を出て今しがた通ってきた広場を今度は反対に向かって進んで行く。

 「相変わらず早口で何言ってるかわかりにくかったな」とミーシャが頭の後ろで両手を組み、銃はスリングで胸の前にぶら下がっている状態でリゲルに話しかけた。

 ストックが畳まれ、コンパクトになっている銃を背中に回して両手を開けているリゲルは、モーリスから書類の入ったケースを受け取ると「元々、彼はせっかちですからね」とミーシャと話し始めた。

 

 エルリックは戦車や装甲車、トレーラー等が整然と駐車された車列を横目に見ていると、目指す建物で白い旗が風ではためくのが視界に映る。

 気になってその方向に視線を移すと白衣を着た人が、入口の扉の前で両腕を組んで僕達を待っているのにその時初めて気が付いた。


お待たせしました続編です。

書いてる内に自分の語彙の少なさと、表現の未熟さに打ちのめされています。

これも楽しみの一つと思って作りましたので、お楽しみいただければ幸いです。

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