チート名鑑故人編 及び九尾
すべてのチートは、六種類に区分される。
成長補正型、能力向上型、戦闘補助型、自己保存型、特殊能力型、生産型である。
生産型を除いて、すべてのチート能力は条件が満たされれば勝手に発動する。
当人が意図しなくても発動するし、当人が切りたいと思っても発動する。
各チートには最大レベルというものが設定されており、精神的な成長(挫折からの再起など)によって成長する。
最大レベルが高いほど伸びしろがあるのだが、逆に言うと最大レベルが高い能力ほど最初は弱い。
最大レベルが低い能力は、最初から安定して強いともいえる。
反則性については、危険性ともいえる。
対峙した敵からの評価であって、使用者本人がどう思うかは重要ではない。
デメリットがあっても効果が絶大ならば、反則性は極めて高くなる。
最も危険なチートでも『対策を事前に用意しなければ詰む』という程度で、何をどうあがいても絶対に勝てないチートなど存在しない。
優秀性については、使用者本人への利益である。
どれだけ強力でもデメリットがあれば下がり、そこそこ便利という程度の能力でも当人にデメリットがなければ上がる。
つまり『もしも選べるのならどんなチートがいい?』という程度。
発覚については、そのチートに気付いた理由である。
ステータス閲覧ができる都理が裏切っている関係上、全員が手探りで自分のチートを探っている。
中には知らないまま死んだ者もいる。
成長補正型
強くなるのが早くなる種類のチート。
あくまでも『習得が早くなる』だけのチートなので、同レベルの相手を大きく突き放すということはない。
はっきり言えば、反則的な強さからは一番遠い。
その一方で、それを獲得している人間は、一般的な意味で優秀なものが多い。
性格の傾向が『努力家』『積み重ねれば結果が出せる』という思想の持ち主がほとんどだからだ。
『成長』〈スピードラニング〉
〈経験値が早く入るようになる〉
最大レベル5
反則性 E 考慮に値しない
優秀性 D 正直ハズレ
発覚 レベル上げをしている時に、他よりも早く限界に達していることで気付く。
若竹伸のチート能力。
レベルアップが早くなるという、典型的な成長補正型チート。
倒す敵の強さによってレベルの上限が決まっているため、そこまで強力ではない。
精神的な成長によって成長限界が拡大したが、それでも特筆するほどの強さはない。
最終的には序盤の敵を倒すだけでもレベル100になれるようにもなるが、そのころには特に意味のないことになっているだろう。
チート能力そのものには、特に価値がないと言える。
『万能』〈コンプリートブック〉
〈全てのスキル、魔法に対して習得補正アリ〉
最大レベル5
反則性 C 注意が必要
優秀性 B 選択できるのなら候補に入る
発覚 スキル及び魔法の習得が普通よりも速かったため
瀬音らりのチート能力。
魔法とスキル、両方の習得が早くなる。
幅広いチートなので、成長補正はそこまででもない。
しかし『補助効果増幅』や『補助効果延長』のような魔法とスキルのコンボを考えれば、最も優れたチートともいえる。
難しい魔法、難しいスキルの習得は難しいが、それでもたくさんの魔法やスキルを覚えれられる。
ゼネラリスト。
『賢人』〈エンシェントスラッド〉
〈魔法の習得が早い〉
最大レベル5
反則性 C 注意が必要
優秀性 B 選択できるのなら候補に入る
発覚 魔法の習得が早かった
万マナのチート能力。
前述の『万能』〈コンプリートブック〉の、魔法限定版。
魔法しか覚えられない分習得は早めだが、チートの中には『攻撃魔法の習得だけ早い』だとか『補助魔法の習得だけ早い』というものもある。
魔法の習得に多くの時間を必要とする関係上、難しい魔法を覚えられるのはこの種類のチート保持者だけであり、戦力への貢献性は高い。
『武人』〈シークレットスクロール〉
〈武器の熟練度が上がりやすい〉
最大レベル5
反則性 D 単体なら問題ない
優秀性 C 当たりでも外れでもない
発覚 初めて使った弓矢などを、的に当てることができた
百葉武のチート能力。
武器の扱いが上達する。
鞭のような難しい武器を使いこなしたり、鉄球のように重い武器を高速で動く敵に命中させることができるようになる。
戦闘能力を大きく武器に依存するが、今回は大量の武器があったため真価を発揮できた。
扱いの難しい武器が必要とは限らないので、反則性も優秀性も低めである。
武芸百般、武ひゃっぱ。
能力向上型
筋力などの能力値が、高くなるチート。
特定の能力値だけが高くなるものと、特定の条件ですべての能力値が高くなるものの、二種類が存在している。
最大レベルが低めのものが多く、最初からそれなりには強い。
ただし、戦闘補助型に匹敵する攻撃力を得ることは難しく、自己保存型の防御力を得ることも難しい。
特定の条件で強化するチートの中にはそれに近いことができるものもあるが、それは極めて難易度が高い。
今現在の自分に自信を持っている者、これからの自分に自信を持っている者が獲得する。
『天恵』〈スタートダッシュ〉
〈最初から基本スペックが高い〉
最大レベル1
反則性 E 考慮に値しない
優秀性 C 当たりでも外れでもない
発覚 最初から能力値が全体的に高かった
高嶺花のチート能力。
特定の条件ですべての能力値が高くなるタイプなのだが、この場合は『最初からすべての能力値が高い』ので、実質的に条件らしいものはない。
その代わり一切成長の余地がなく、レベルが上がっていく度に意味を失っていく。
とはいえ、一番死にやすいのは最序盤であり、何の制約もなく強いというのは大きな安心材料である。
よって敵からは脅威ではないが、当人にとっては優秀なチートと言える。
『豪運』〈キングロード〉
〈運に補正あり〉
最大レベル3
反則性 D 格下なら問題ない
優秀性 C 当たりでも外れでもない
発覚 演習でサイコロを振ったところ、いい目が出続けた。
丁半白磁のチート能力。
運が良くなる。
特定の能力値だけが高くなるタイプであり、幸運が高い場合の利点としては……。
敵の攻撃が急所に当たりにくい、敵の急所に攻撃を当てやすい、敵の接近に気付きやすい、接近しても敵に気付かれにくいなどである。
格下相手なら『不意の事故』による怪我がなく、格上相手なら持久戦が見込める。
直接的な攻撃力や防御力では、戦闘補助型や自己保存型に勝てるわけはないので、能力向上型の中では安定した戦闘ができるほうである。
『怪力』〈パワープレイ〉
〈筋力に強化補正〉
最大レベル3
反則性 C 注意が必要
優秀性 B 選択できるのなら候補に入る
発覚 大きな岩を持ち上げることができた
岡城鬼のチート能力。
筋力が向上する。
特定の能力値が向上するタイプの中では、比較的当たりと言える。
気付くのが簡単で、効果もわかりやすく、攻防両面に効果を発揮でき、非戦闘時には運搬などができる。
ただ、相手の攻撃を防御できず不意打ちで喰らった場合、素の防御力で耐えることになってしまう。
速度で勝る格上を相手に、不用意な単独の突撃を仕掛ければ、未来はわかり切っている。
陸蒸気。
『晩成』〈ファイナルメンバー〉
〈レベルが低いうちは弱いが、後半になるほど強くなる〉
最大レベル1
反則性 E 考慮に値しない
優秀性 E 大外れ
発覚 不明のまま死亡
成金歩のチート能力。
特定の条件ですべての能力値が高くなるタイプであり、レベルが50を超えたあたりから、徐々に能力値へ補正が足されていく。
『天恵』〈スタートダッシュ〉と真逆であり、後半になるほど意味を増していく。
都理を勇者たちが倒して、レベル65から更に先の敵を倒すことになった時、ようやく真価が明らかになるという大器晩成型。
一旦レベルが上がり切ってしまえば、なんの制約もなく強大な力を振るうことができる。
逆に言うと、都理本人からすると全くもって脅威ではない。
『背水』〈ガッツブースト〉
〈体力が減るほどステータスが上がる〉
最大レベル3
反則性 B 戦術で対応しなければならない
優秀性 E 大外れ
発覚 不明のまま死亡
土俵綱のチート能力。
特定の条件ですべての能力値が高くなるタイプであり、体力が最大値の半分を切る当たりから、徐々に能力値へ補正が足されていく。
リスクと引き換えに戦闘能力が向上する。その伸び幅は同種である『野生』〈ネイチャースタイル〉よりもはるかに大きい。
うかつに攻撃をしてしまえば、殺し損ねて強大になってしまうという、敵にしてみれば嫌なチートである。
しかし当人にとっても、あっさり死にかねない危険なチートと言えるだろう。
ちなみに自傷や味方からの攻撃でも、瀕死になれば効果を発揮することができる。
『野生』〈ネイチャースタイル〉
〈装備が少ないほどステータスが上がる〉
最大レベル1
反則性 C 注意が必要
優秀性 B 選択できるのなら候補に入る
発覚 防具を初めて着たとき、能力値が下がるのを感じたため
佐鳥忍のチート能力。
特定の条件ですべての能力値が高くなるタイプであり、下着同然の格好になると最大値に達する。裸になる必要は全くない。
リスクと引き換えに戦闘能力が向上するが、『背水』〈ガッツブースト〉ほどではない。
とはいえ、著しい苦痛を前提としない分、使用者としては気軽に使うことができる。加えて、気づくのも簡単である。
敵にしてみるとそこまで脅威ではないが、『怪力』〈パワープレイ〉と違ってデメリットを当人が分かっているため、隙を突くのは難しい。
忍者。
戦闘補助型
攻撃を行った際や、魔法を使った際に特殊なボーナスが発生するタイプ。
敵を倒すことに優れており、格上であっても瞬殺することさえ可能。
全般的に最大レベルが低く、その分最初から強力である。
とはいえ素の能力値が高いわけではないので、逆に瞬殺されることもあり得る。
勝ち方にこだわりがあったり、逆に勝てばそれでいいと思っている者が獲得する。
『速唱』〈マシンガントーク〉
〈呪文を唱えるのが早い〉
最大レベル3
反則性 C 注意が必要
優秀性 D 正直ハズレ
発覚 魔法の詠唱が短くて済んだから
鴬丈のチート能力
通常の何倍もの早さで魔法を使うことができ、連射や早撃ちなどができる。
簡単な魔法の連射や難しい魔法を即時に発動させることを戦術とするが、実際には前者しか使えない。
というのも、魔法の習得にはボーナスが発生せず、加えて最大魔力にも補正がないため、簡単な魔法による瞬間火力以外は現実的ではない。
ただ敵にしてみれば、なんの前置きもなく怒涛の猛攻を受けることになるので、常に警戒を必要とする。
鶯嬢。
特殊能力型
それ単独で能力として成立しているタイプ。
他人とは違うことで優秀さを発揮したい者が獲得する。
種類は豊富で、カテゴライズは困難。
どれも他のチートでは真似できない、非常に独特の物ばかりである。
都理の『解析』〈ウォードウィスダム〉もこれに分類される。
『報復』〈ジャスティスペナルティ〉
〈受けた力を相手に返す〉
最大レベル1
反則性 A 事前の対策を要する
優秀性 E 大外れ
発覚 序盤で敵に攻撃された時、相手も同じ傷を負ったため
加寸土英のチート能力。
攻撃を受けると、攻撃をしてきた相手にも同じだけの傷を返す。自分が死ねば相手も死ぬ。
極めて自動的で受動的、心理的な防御手段であり非常時の矛である。
多数で一体の強敵を叩くときに最大の効果を発揮し、最悪でも相手を道連れにすることができる。
受けた傷を治しても相手の傷が治ることはないが、逆に相手も跳ね返った傷を治すことはできる。
あらゆる防御を貫通してダメージを返すことができるのだが、逆に言えば相手の防御手段を潰すということはできない。
(鎧を着ている相手にも傷を負わせられるが、鎧を壊すことはできない)
ちなみに自己保存型のチートで『無敵』〈ダメージシャッター〉というものがあるが、これに対しては無力である。
スクールカースト。
『隠蔽』〈ファイヤーウォール〉
〈調査の遮断〉
最大レベル3
反則性 A 事前の対策を要する
優秀性 B 選択できるのなら候補に入る
発覚 瀬音が習得した探知スキルに、反応しなかったため
恩業角氏のチート能力。
探知スキルの無効化ができ、成長次第では追尾攻撃や設置攻撃に反応されなくなる。
『解析』〈ウォードウィスダム〉の天敵ともいえるチートであり、一切情報を読み取ることができない。
透明化などの魔法を用いれば、索敵はほぼ不可能になる。しかしこのチートは隠れることに特化しており、隠れているものを見つけるということはできない。
また『解析』〈ウォードウィスダム〉でステータスがわからなかったため、結果的に隠ぺいに属する能力だと浮き彫りになってしまっていた。
彼への対策として、都理は二つの尾の能力を割いていた。
ソロなら優秀性はAでもいいのだが、味方への攻撃が誤爆されないとも限らず、何よりも味方からもどこにいるのかわからないという欠点がある。
生産型
アイテム等を無から創造し、運用できるタイプ。
どれもが共通して、最大レベルが10となっている。
最大にまで成長すれば比類ない性能を発揮できるのだが、それは序盤で役に立たないことを意味している。
自分に自信がなく、加えて自分以外の『何か』に対して過信している者が獲得する。
『錬成』〈フルメタル〉
〈自分しか使えない武器を生み出せる〉
最大レベル10
反則性 D 単体なら問題ない
優秀性 C 当たりでも外れでもない
発覚 銃に対してあこがれがあったため、やろうと思ったらできた
鋼烽火のチート能力
初期は拳銃程度しか生産できないが、レベルが上がるごとに強大な兵器さえ生産できるようになっていく。
しかしそれは多くの挫折や苦難を乗り越えねばならず、あまり現実的ではない。
少なくとも都理を殺害するまでの間には、そこまでの成長は見込めなかった。
成長の可能性というよりは、机上の空論ともいうべき境地である。
とはいえある程度の銃でも、対人戦ならば十分に脅威となる。魔法で強化すれば、相応の戦力になりえた。
※
※
※
九の尾
魔王から授かった、使い手が能力を設定できる尾。
痛覚が繋がっており、傷つくと使い手も痛い。
大きさを調整でき、小さくするほど出力や強度が下がり、大きくするほど全力を発揮できる。
他の尾を小さくすることで、一つの尾を過剰に強大にすることも可能。
その場合、限界を超えた尾は長時間使用不能に陥る。
尚能力の優先度としては、チート能力より下である。
仮に防御貫通系の効果を尾に持たせても、ダメージを無効化するチートには傷一つつけられない。
無理なものは無理なので、割り切って相手の穴や隙を突くべきである。
第一尾 斥力の尾
とても単純に、斥力を放出する尾。
攻守に活かされているが、攻撃よりも防御に優れている。
本人にも不可視なので、狙いがどうしても大雑把になってしまうからだ。
斥力を放つ際の反動は、任意で設定できる。
それを利用して、高速移動や空中での微調整も可能。
第二尾 傀儡の尾
人間に変身する尾。切り離して運用する。
自分以外にも変身させられるが、武器防具やチート能力は引き継がれない。
(ただし成長補正型の場合は、その限りではない。習得している魔法やスキル、通常よりも高いレベルなどが適正値になるということはない)
ある程度なら自動操縦も可能で、疑似的な連携も可能。
都理の魔法は詠唱と舞踊が必要なのだが、この尾を自分に変身させて踊れば本体が使用することもできる。
第三尾 猛毒の尾
毒を放つ尾。
相手に気付かれない不可視のガスを散布することもできるし、逆に視界を閉ざすほど色のあるガスを放つこともできる。
一番簡単に対策を立てられる尾であり、実質的には恩業対策の一発ネタである。
第四尾 弾丸の尾
弾丸を放つ尾。
大量に細かい弾を放つこともできるし、巨大な一発の弾を放つこともできる。
連射、拡散、狙撃とかなり応用が利く、威力の調節も含めて攻撃に特化した尾。
当然だが、長時間の連射、広範囲への攻撃、遠距離への狙撃、高威力などを発揮すると疲労する。
第五尾 透過の尾
尻尾そのものが変化し、透明になったり、相手の防御壁を素通りできるようになる。
初見殺しとして単純ながらも強力。格下相手なら、初見以外でも極めて有効に働く。
第六尾 同期の尾
他の尾と同じことができるようになる尾。
戦いに幅を持たせつつ、より強力なことができるように設定した尾。
第七尾 未定
第八尾 未定
第九尾 未定
一応念のため、離島対策として未設定だった。
今回で、ひとまず最終回です。
次回の更新は未定です。