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冒険者さんは静かな場所を好みます  作者: 如月 那乃華
第1章.初めての事ばかり
7/21

7.引きこもり中


はあ…殺してしまった…クイジさんを…人を…。

どうしよう、見つかったら。

見つかったら、私はきっと、殺されてしまう……!


「…ねぇねぇ、知ってる?」


何の話だろう?


「近くで、人が殺されていたらしいわよ。しかもナイフで!」

「ナイフで殺されていたんですか?…物騒ですね、最近」


───見つかった…大変だ…!もし、私だと、ばれてしまったら……!

嫌だっ、死にたくない…外に、出たくない…シャル…っ!


***


怖い、怖い、怖い。

外に出るのが怖い。

クイジさんとのあの一件があり、外がものすごく怖い……!


「いやだ、もう人を殺したくないっ…怖いよ…」


あの時は、どうでもよくて、何も考えてなくて…!私が私じゃないみたいだった…!

もう嫌だ…!

クイジさんを殺してしまったから…!だから、怖い。

また、私が私じゃなくなるんじゃないかって…!


「やだやだ、怖いよ……っ!」

『そんなことないよ』


誰?怖い…嫌だ…っ!答えを……知りたくない……っ!

また、殺すの?…人を。


『違うよ、ルナ』

「!?」


どうして、私の名前を…嫌だ、出てってよっ!!知らない。

誰も知らない!


『ルナ、僕はシャル。覚えてるかい?』

「…シャル……私の、家族。私のたった一人の…家族…!」


すぐに顔を上げて、目の前にいる者が誰か確かめる。

シャルに似た、紫水晶のパープルアイの瞳を持つ狼。


『そうさ』


私が拾った、狼の子。

犬だと思っていたら狼だった。

利口だから、可愛いから、そのまま飼い続けた。

……でも…シャルは…死んだ。

私はその日から、うるさいのが嫌いになった。

……そうだ、昔の私に戻っただけ。単にただ、戻っただけじゃないの……っ!


『それは違う!』

「何が違うの。シャルは私のただ1人の家族だった!小さい頃に死んだ親なんて、親じゃないっ!ただの他人!……シャルが死んだ日から、私は孤独なの!」

『違うよ、ルナ!僕も拾ってくれた日を覚えてる!だから、ここに来た…外に出よう。僕はそこにいる。早く来てくれ、ルナ…』

「シャルっ!行かないで!」


行ってしまった、外に。

シャル…会いに来てくれた…こんな私に。

……今行くよ、シャル。


***


「シャル…なんで会いに来てくれたの?私に」


私は、シャルが会いに来てくれた理由を知りたい。

今も昔も引きこもり。

ずっとずーっと、私は孤独。


「シャル、答えてよ!もう…行かないで」

『それはできない、ルナ。でも、これを受け取って』


渡されたのは、シャルの瞳のような、美しい紫水晶パープルアイの塊。

まるで、宝石みたい。


「シャル、これは…?」

『僕の魔石…いつでも呼んで。助けが必要な時だけ。約束』

「シャル…」


消えてしまいそうな…シャル。

私の知ってる、甘えん坊のシャルじゃない。

凛々しい、野生の狼。

でも、心の中は少しだけ甘えん坊の時のシャルと同じ。


『ルナ…僕の魔石は変身ができる。他の人の姿になれるんだ。でも、自分を忘れないでね…』

「シャル……!…ありがとう。また、会えるといいね。どこかで」

『会えるさ。それがある』


…ありがとう、シャル。

そして、サヨナラ。

また会う日まで。


『じゃあ』

「バイバイ、シャル」


一瞬、シャルが微笑んだ気がした。


過去はわかっても、未来まではわからない。

この旅が永遠に続こうとも、乗り越えていく。

それは、誰にでもできる訳じゃない。

私だって、最初からできたんじゃない。

シャルのおかげで、できるんだ。

引きこもり復活です。

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