6.悲しみの虹
少し、ヤバいかもしれません…
なので、見たくない人はスルーしてもOKです。
「…で、旅人さんは何で旅してるんですか?」
ついさっきの騒動から、一段落。
とりあえず自己紹介をしあって、旅人さんの名前がクイジとわかった。
……変な名前。(この世界では私の名前もだが)
「街が出してる依頼を受けて、虹薬を買いに来たんだ。そしたらお前がサボテンを食おうとしてるから……」
へぇー。街が出してる依頼…面白そうじゃないですか!
……ところで、虹薬って何?ポーションって確か……薬だったかな?
ホント、何でもアリな世界だね、ここは。
モンスターもいて、旅人もいてさ…あっ、竜っているのかな!楽しみ~。
「…サボテン食べようとしてて、悪かったですね!」
こっちは空腹だったの!しょうがないでしょ!(言い訳)
「あっ、そうそう。その街の依頼、私もついていっていいですか?いざって時はナイフがあります!」
「うーん…ところで、嬢ちゃんは、どこから来たんだ?」
どこから、来た…その質問には答えられない。
「…もし、もっと仲良くなれたら、教えます…それと、名前で呼んでください!わかりにくいです!」
「あー…ハイハイ、もっと仲良くなれるように頑張りますよ、ルナ」
「そのいきです、クイジさん」
ん?…そもそも、虹薬、どこにあるの?
「虹薬は、村に一つだけあって、世話になった人に渡すらしい。村の者、全員が賛成しないと貰えないそうだ」
へぇー…ん?何か覚えがあるのだけど…もしや…?
「虹薬の瓶のフタって、鳥の形ですか?もし、そうなら……」
「おう、よく知ってるな。フタは鳥の形だ。」
やだ、どうしよう。それ、持ってる。
村長のヤシさんに、貰ったあれかーーっ!!…確か。
『これは凄く特別で大切な物です。大切にあつかった方がいいと思われますぞ』
って、言ってた気がするーっ!!言う?どうする!?
「ルナ?…どうかしたか?」
どうかしてます!完全にどうかしてます!!
「驚かないでくださいね……?」
「?…ああ」
「虹薬、私持ってます」
「へぇー……は?…はあぁぁぁーーっ!!?」
「うるさい、静かにして」
「わ、悪い。ルナが持ってる?どういうことだ?」
「カムス村で“カフレギア”を倒したら、村の人達に感謝されて、宴して、旅に出ると言ったら、持ち物を準備してくれて、それで……」
「虹薬も入っていたと」
「手紙があって、こう、書いていました」
『ルナさんヘ
ルナさん、この手紙を読んでいるならば、きっと虹色ポーションも入っていたと思います。虹薬は村の宝。でも、村を救ってくださったルナさんに差し上げようと思います。村の者も全員賛成してくれましたし。とにかく、無事で…
村長ヤシより』
「お前、何気にすごいな…?」
「あはは……」
逃げたい…嫌な予感がする。
「ってことで、強制連行」
「はい、何で!!?」
「だって村に行って頼むの面倒だったんだよー。ま、とにかくラッキーだな。ついてこい、ルナ」
「いやっ!」
「いやだって?じゃあ虹薬をよこせ」
は?何いってんの?これは、村の宝。
やすやすと渡していいものじゃない!クイジさん…最低。
「クイジさん、村の宝は渡しません」
「村の宝?今はお前のだろう?お前が決めるんだよ。さぁ、どうするんだ?」
「答えはもう言っています!!渡しません!!」
「低脳が。とっとと渡せばいいんだよ!」
「低脳?……そう、そこまで言うなら…」
「渡すのか?遅い決断だな。」
「いいえ、死んでください…クイジさん。仲良くなれると思ったのに。この世界で初めて、仲良くなれると思ったのに……そんな人だったなんて」
「この世界?……まさか!異世界人!?」
私はナイフをクイジさんの首に向ける。
「はっ、早い!?」
「バイバイ、……クイジさん」
血飛沫があがる。
…あそこで道を間違えなければ。
もし、もう一度やり直せるのなら。
…クイジさんは、どうするだろうか。
…同じ道を通るだろうか。
…私は、私だったら。
…きっと同じ道を通るはずだ。
だって、私にはその道しかないのだから。
その頃、空に虹がかかっていた。