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アリスをめぐるミステリー  作者: 大和麻也
文化祭特別号(文化祭当日編)
56/58

8-4 謎説きのプロローグ

「岩出」

 文化祭の閉幕一時間前。新聞部の最後のシフト、おれは安斉先輩と並んで受付に座っていた。文芸部部長兼新聞部副部長からの呼びかけに、おれはあえて返答せず、彼女の顔を覗き込んで無言で続きを問うた。

「シフト表を作ったのは岩出だったよね?」

「はい、そうですよ」

「わざとでしょ?」

 質問者もまたポーカーフェイスを貫く。目の奥から睨まれているかのようだ。はじめて出会ったときの「畏れ」の感覚はしばらく感じられていなかったが、いまそれを思い出した。

 しかし、先に目を逸らしたのは彼女のほうだった。

「ああ、岩出と向かい合うと疲れる」

 それはひどい物言いだと笑うと、前髪を整えながら彼女のほうも破顔した。

「だって、じっと目を見て逸らさないから」

 怜悧な印象のある彼女だが、笑ってみせるとどちらかといえば子どもっぽい。おれが彼女のそういう姿を見るときというのは、おおよそにして自分の性向をからかわれるとき。ただ、いままでは水橋などに同調してくすくすと肩を上下させるくらいだったのに、眼前の彼女に繕った部分はないように思えた。

 要するに真面目すぎるんだよ、とこのときも安斉先輩はおれの性格を冷やかした。

「おれが安斉先輩のいうように真面目すぎるとして、それがどうおかしいんですか?」

 少しばかり反撃すると、彼女はじっとドアのほうをまっすぐに見つめる。

「友達に似てるからかな?」

「それだって、笑うことじゃないのに」

「面白いほど似てるってこと」

「それって……共通の知り合いですよね?」

「……わかってんじゃん」

 もう一度彼女の顔を覗き込むが、笑顔は引っ込み、先ほどのポーカーフェイスに戻っていた。ちらりと瞳がおれを捉え、窘める。居住まいを正し、隣の先輩にならって出入り口を見つめた。

 終了時刻が近いため、もう来客は少ない。

 終わりが近づく時間は、かえって始まりが近づく時間に似ている。

 おれにとってはその類似した高まりがいっそう強く感じられた。

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