アホの子とは私のことです
「アホコン編」遂に突入!!
東堂優一、十五歳、七月十七日生まれ。大好きなものは女の子。(実は中学の頃まではボケキャラだった)黒髪、特にイケメンでもなければ超能力や特殊能力があるわけじゃない。
主人公にしては何一つ目立つものが無いと言うふざけた設定で生きているわけだが、ここでは俺のほうが常識人だったりする。
プロローグ回を今まで見てもらった方々は知っているかもしれないが、俺はただ今停学気分を満喫中だ。
で、俺は世界で一番辛い唐辛子―通称キャロライナ・リーパー入りのクッキーを食べて病院に運ばれた馬鹿二人(おっさんと佐奈)を見舞いに来たのだった―――。
「うっほおおーー、たっけええーーー」
で俺たちは山梨県の………何病院だか忘れたが、とってもでっけー病院に来ていた。
俺と幸は、そろってそれを見上げていた。
「うっははー、てっぺんが見えないね」
「ああ、どこもかしくもただ高くしていればいいとか思ってんのかね?」
「お兄ちゃん汗だらだらだけど大丈夫?」
東堂優一――――嫌いなもの、高いとこ。
「だ、大丈夫だよ。いくらなんでもあんな高いとこにあいつらがいるわけねえしな」
「夢和人生さんと、斉藤佐奈さんですか?…………三百三十八階です」
東堂優一――――嫌いなもの、高いとこ。
「三百三十八階です」
嫌いなもの、高いとこ。
「三百三十八階です」
……………
「帰る」
俺は受付の美人なお姉さんの言葉を聞いて息が止まった。
「ちょっとお兄ちゃん?今来たばかりだよ?まだ見舞いも何もしてないよ?」
「妹よ俺のライフはもうゼロなんだわ今朝から胸糞悪かったんだ。きっと腹でも下したんだよ俺今すぐ帰らないと死んじまうわ」
「お兄ちゃん、ここの内科三百三十三階だって」
「やっぱり帰るしかないな。そもそもあいつらに見舞いなんて必要なかったんだよこんなとこに来る必要なんて無かったんだよ!!」
「お兄ちゃんここの内科の予約とって来たよ」
「必要ねえよ!!俺の体なんてピンピンしてるよ?今すぐそんな予約取り消して来い!!」
「じゃあ行こう!」
「ふははははは、人がゴミのようだ!」
妹が天に向っていくエスカレーターの中で高らかな声をあげていた。
「幸、テレビの見すぎだぞ?コンチクショウ」
「ねえ見てよお兄ちゃん、地上が本当にちっちゃいよ?そんなほうにいないでさあ」
「………妹よ俺が高いとこ苦手だと知ってるよな?何?いじめ?お兄ちゃんのこと嫌いにでもなったのか?コンチクショウ」
「お兄ちゃんを嫌いになんてなるわけないでしょ?好きな人はいじめたくなるもんなんだよ?」
「ははは………じゃ嫌いになってくれていいから下ろしてくれない?」
「うん、嫌いになったらね」
「………ははは、そうか。じゃあもう少し俺は土を踏むことはできないわけか。………なあ、幸よお。いつになったらつくんだ?もう嫌だよ。何でこんなエレベーターだけで十分も二十分も時間使うんだよどんなエレベーターだよ」
「まあ、世界で三番目の高ーい建物だからね」
嘗て世界で一番高いとされていた東京スカイツリーは、もう昔の話。この病院の全長は七百八十メートル。第二位の建物は東京都にある、武蔵野塔。全長八百メートル。第一位はこれまた東京都にある、東京コスモタワー。全長千三百七十メートル。
「………で、幸。後どれくらいでつくんだ?」
「うーーん、後五分かな?」
「はあああーーーーーっ、やってらんねえよ。つうかなんで世界で三番目の建物が山梨にあんだよ?東京何やってんだよ?」
「東京だって、いろんな建物とかガンガン建ちすぎて腰抜かしちゃったんでしょ?」
…………
「なあ、妹よ。そんなかわいい顔してんのになんでそんな下品な言葉が出てくんの?俺、そんな言葉教えたっけ?」
「毎日夜言ってるじゃん。ベットギシギシしながら」
「言ってないよね!?そんなこと言ってないよね!!やめようかそういうの。俺はやってないからね!?違うからね!!??」
「そして、そんなことがあった次の日は決まってゴミ箱に――――」
「すいませんもうやめてくださいお願いします」
俺はエレベーターの中で妹に土下座していた。
「で、これはどういうことなんだ?」
俺と幸はおっさんと佐奈のいる病室の前で立ち止まっていた。
いや、あっけにとられていたと言った方が良いかもしれない。
病室がとてもとても………エキサイテングナコトニナッテイタ。
「あ、優一助けて!」
俺たちが病室に入るなり、佐奈が泣きついてきた。
「トセおじさんが………トセおじさんが」
佐奈が涙を浮かべながら指した指の先には――――
「がっはっははははは。看護師の皆さん、一緒にパラダイスしましょう!!」
「「「きゃややああああ!!!!」」」
おっさんがパンツ一丁ほぼ真っ裸でパラダイスしていた。
「あんたらホント困りますよ!入院中ぐらい大人しくしてなさい!」
俺たちは全員お医者様からお叱りを受けた。
………なんで俺まで?
で、俺たちは見舞いついでにおっさんの顔面を一発分殴って停学二日目の午前が終了した。
俺たちは退院した二人と一緒に帰路についていた。
「ほー痛え。まったく優一氏は加減を知らんのか?」
おっさんは真っ赤に晴らした頬をさすりながら言う。
「おっさんの裸を見せられた俺たちに身になってみろよ」
「そんなことより腹減ったな」
「退院して開口一番というわけでもないが、まあ図体のでかいおっさんの言いそうなこった」
「お兄ちゃん、私蕎麦食べたい」
「よし、今日はおっさんのおごりだから、ちゃんと礼言うんだぞ?」
「待たんかい。何で俺がおごることになってんのか、教えてもらおうか!?」
「ありがとうございますおじさん」
「幸氏、礼はそこにいる兄に言ってやるといい」
「ありがとうございます。トセおじさん」
「佐奈氏!?」
「おい、うっせーよおっさん。もう決まったんだ。ハラくくれコンチキショウ」
「んじゃあここにするか」
で、俺たちは帰路にあった適当な蕎麦屋さんに入ったわけだが………
「いらっしゃい…………ま………」
俺たちを出迎えた店員は、あの金髪ツインテールの女の子だった。
「え、ええええ!?何で君が……?」
俺は何がなんだか分らなくなり女の子を指差したまま硬直した。
「………き」
そして、その女の子が上げた声は――――
「きゃあああああああ!!!」
耳が張り裂けそうなほどでかい悲鳴だった。
「嫌ですから、俺らストーカーじゃないですってマジですって」
その悲鳴が上がってから数分後。俺たちは店長から訝しげな視線を受けていた。
「本当にストーカーじゃないんだろうね!?」
さっきから何回も違うといってもまったく聞く耳を持たない。この店長の頭の中はどうなってんのか、見てみたいもんだ。
「さっきからずっと違うって言ってるでしょ!?何で信じてくんないんすか?あれですか?最近全然抜いてなくてイライラでもたまってんのか?あでも、その場合たまってんのはべつのも―――んぼぉ!?」
店長は俺の台詞が言い終わる前に俺の玉を終わらせてきやがった!?
「優一氏、最近ちとおかしいぞ?キャラがぜんぜん安定してない。お前はずっとつっ込みキャラだぞ?いかなる過去を持ち合わせていようが、つっ込みからは逃れられんぞ?」
「うっせぇ。ずっとつっ込みばっかで最近いらいらしてんだよ!ボケも少しはやんないとバランス悪いだろうが!!」
「君たち。本当にストーカーじゃないんだろうね?」
「さっきからそう言ってるって何回言わすんだこのジジィ!!」
「だってあれってあんたらの事だろ?」
『先日起こった春多喜学園の――――』
「その通りです、すみませんでした!!」
結局その場は佐奈が仲介をとってくれるという形で決着した。
「さっきは、その、すみませんでした」
席に案内された俺たちは、金髪ツインテールに頭を下げられていた。
「いや、その、この間は俺のほうもすまなかったな」
「ふん。今のはあなたに言ったわけじゃないですら」
俺が謝ると、女の子はそっぽ向いてしまった。嫌われたものだ。当たり前だがな。
それにしても、これが世にいうツンデレという奴だろうか。まあ俺の場合はツンしかないか。
「あなたのことなんてぜんぜん気にしてなんて無いわけじゃないんだから」
…………これが世に言う…………何だろ?デレか?デレなのか?
「あのー」
俺は更なる説明を求めるが―――
「ひっ、気安く話しかけないでください」
想像以上の拒絶っぷりだった。
………おやおや、この子は何が言いたいのかわからないんですけど。
俺以外の奴らもこいつが何をしたいのか分らなくなっている様子。
「うーん、っあ、ねえねえちょっといいですか?」
すると幸が何かに思い至ったように声を上げる。
「は、はいどうぞ」
そしてこの女の子は俺の妹には普通に接していた。
「ツンデレっていうのは、言いたいことと真反対のことを言うことじゃないですよ?」
「そ、そうなんですか!?」
どうやら図星らしかった。
何だ真反対のことを言ってたのか。それが分って少しぐさっと来たのもあったが、まあいい。
「というか何でツンデレ?」
佐奈も当然疑問に思うところだろう
「私のクラスの女子に相談したらその………ツン、何とかみたいなことをするといいよと言われたので」
ほうほう、それは愉快なお友達だな。きっと君のことを面白可愛いおもちゃと思っているに違いない。ぜひとも今度会ってみたいものだ。
「ええと、私達の方こそごめんなさい………えっと」
佐奈も謝るが、何て呼べばいいか分らずに言葉に詰まる。
「あ、私、ほのこといいます。気安くほのこって呼んでください。そこの変態以外は」
みんなには極上の笑みを浮かべ、俺には絶対零度の視線を向けてくる。
「はいはい変態で悪うございました。それで、俺は何て呼べばいいんだ」
「ふん、あなたもほのこと呼んでください」
「あっそ」
ほのこって呼ばなきゃいいのね。
俺は胸につけられてるプレートに目を向ける。
えーっと名字はっと………。そのプレートにはこうかかれていた。
《阿 ほのこ》
……………この名前をつけた親の顔が見てみたいもんだ。
そこまで思ってから、俺の視線が胸元にいってると思ったほのこが胸を隠す。
「何で胸を見てんですか?変態さん?」
「いや何、お前の名字が何なのか知りたくてな、これからよろしく阿さぶべらぁ」
こいつの名字を呼ぼうとしたらお盆でぶったたかれた。
「だから、私のことはほのこって呼んでっていったじゃないですか!!!」
分りづら!!
………忘れてはいけない。俺と関係を持った奴は、リア充でなければ変わり者しかいないことを。
まだしばらく続きます