序
ストームという大国の西南西に位置するコルチェという小さな村に、その日小さな命が誕生した。
その命は、少人数の手でこの世に生まれた。
村には魔物が現れ、人を襲う。魔物を倒すために村の人々は日々戦っている最中だった。そのためか、その命は、本当に少ない人の手でこの世に誕生したのだった。
魔物と戦いながらの生活でも家族から愛され、村人からも愛されて、小さな命は成長していった。
誕生してから数ヶ月と経ち、ハイハイができるようになった。
その命が誕生してから一年と経たないうちに、事件は起こった。
その子が大声で泣いた瞬間、近くにあったものが次々と破壊されていった。物が破壊されていくのは、泣いているときだけだった。泣き止めばそれは止まる。
両親や村人も始めは何かの奇怪現象かとも思ったが、原因がその子にあるとようやくわかるようになった。
しかし、それでだけではなかった。
農作業をしている人の服が破れたときのこと、それを母親に抱きかかえられていた園子が見た瞬間、一瞬にして服が元通りになった。
以前壊れたものも何もなかったかのように元に戻るのだ。
その奇怪現象も決まって、その子が笑っているときだった。
そして、その現象が起こってからを機に、更に魔物が増えるようになった。
そして、村の人々は気づいていた。その子の命に魔物と何かかかわりがあることを。魔物を倒しても、いずれはまた現れることも。
その防衛策として、その子の力を封印することを考えた。
村の人々で協力し、力の封印の情報をあつめ、必死で力を封印する。
そして、まだ小さな子どもを両親から離したのだった。どこか遠い地で、自分の力など知りもせず、幸せになってくれることを願って。