ピエールロチ、 「お菊さん」 岩波文庫 試論
ピエールロチ、 「お菊さん」、といって、いったいなんにんの人が知っているだろうか?
フランスの今は忘れ去られた小説家・海軍士官だった、ピエールロチ、
芥川龍之介の短編小説「舞踏会」に登場する外人士官といえば知っている人は「ああ、あの人。」というかもしれないが。
明治に日本に訪れたロチはその印象を素材に、「お菊さん」という日本女性との恋物語を創作した。
原題は」マダム・クリザンテーム」である。
今これを読むと、
現代日本人にとっては、まるで異国の物語としか思えないほど、隔絶してしまった、ところの、
明治の日本がある。
ロチ描くところの明治の日本はまるで、別世界、異国、異次元である。まるでナルニア国のように別世界である。
なお、ロチには、
他に「お菊さん」の後日談とも言うべき、「お梅さんの三度目の春」
そして日本印象記である「秋の日本」がある。
この「秋の日本」も、まるで異界の報告書みたいに現代の私たちには異質である。
今の我々にとっては、明治時代とはもう、ナルニア国みたいに別世界・遠い世界なんだなあ。
そういう意味ではこれらの明治日本を素材とした3部作はまさに幻想小説・別世界通信でもある。