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建った、フラグが建った!

「それで、どうしてそんなにコソコソとしているのかしら」


「うっ…」



金牛宮。


抜き足差し足忍び足で周囲を気にしながらコソコソと柱に隠れつつ神殿の中を進んでいく小さな影に、豊穣の女神が声をかけた。


小さな影、女神ヘカテーは気まずそうな表情で声の主、友人である女神デメテルに振り向く。


相対するデメテルは、なんだかんだで自分の巫女が心配になってやってきただろうヘカテーに生暖かい視線を送る。



「堂々と会いに行けばいいじゃない。貴女の巫女でしょうに」


「こっちにも色々と事情があるのです」


「そんなの貴女の自業自得でしょ?」


「ふ、不可抗力だったんです!」



女神ヘカテー。


太陽神ヘリオスに対する月の側面を持ち、冥府においてはハーデス・ペルセポネに次ぐ地位を有し、魔術を司るギリシア神話においても特に優遇され、


さらに「死の女神」、「死者達の王女」、「無敵の女王」といった中二臭い異名を有し、メディアちゃんからは初見でエターナルフォースブリザード使いそうとまで評され、


これに加え新月・半月・満月の三相を体現するために、幼女、お姉さん、熟女の3つの変身形態を持つ超偉大な女神なのだ。



「今の今まであの子の前に姿見せずに見栄を張ってたの、貴女でしょうに」



生まれた時から既に明確な思考を有していただけでなく《おっぱい星人》だったメディア姫。


そんな彼女にちょっと興味を持ってしまい、彼女の興味を引くために、あろうことか女神ヘカテーは話の中で盛ったのだ。胸の大きさを。



【回想シーン】


「ヘカテーさまのおっぱいって大きいの?」と問う新生児


「もちろんです。なので信仰しなさい」と嘘をつく女神様


「おっぱい大きいヤッター。これは信仰せざるをえない」と信仰告白する新生児


【回想シーン終了】



「ま、まあ、ちょっとばかり変わった所もあるけれど、良い子じゃない。貴女の信仰も鰻登りでしょ? うらやましいわぁ。私なんか、ネームバリューはあっても信仰薄いから」


「何が羨ましいですか! あの子は歴代の私の巫女たちの中でも一番の問題児なんですよ。私が一体どれだけ苦労させられているか……。あの子はいつもいつも私の予想を斜め上に裏切っていくんです」



ヘカテーは思い出す。コルキスの王女メディアとの騒々しい日々を。ヘカテーはぐすりと涙ぐむ。


ある時はご飯が美味しくないと駄々をこねはじめ、妙な発酵食品を作っては大量の食中毒患者を量産し、


ある時は甘味が欲しいとか言い出して、大根を煮詰め始めたあげく、異臭騒ぎで街を騒がせたり、


漫画が読みたいとか喚き出して、職人に萌えキャラを描かせた挙句に、それが何故か国中で流行って痛彫刻がブームになったり。



「うう…、なんであんな子に育ったんでしょう? 私の育て方が間違っていたのでしょうか? 二言目にはおっぱい揉ませろとか、なんど匙を投げようかと…」


「あ、うん」


「知っていますか? あの子ったら、私の神殿の私の神像のおっぱいを…おっぱいを…あんなにはしたなく大きく造り直させて…。他の神官とか信じちゃってるんですよ!? このままじゃ私、オッパイお化けになっちゃうじゃないですか!」


「え…、それ本当なの? オバサン気になる」


「うう、この前もお姉さん形態の胸の重さがさらにずっしりとなって…。肩がこるってレベルじゃないんですよ! 熟女形態はもうヒトには見せられない状態ですし…」



ギリシア世界の最新豆知識。『女神ヘカテーはとってもおっきい(どこがとか問うのは無粋です)』


風評被害…じゃなくて、新しい信仰の萌芽により女神ヘカテーの肩こりまったなし。



「もうそのまま幼女形態でずっと過ごせばいいんじゃない?」



そう、今の女神ヘカテー様のお姿は、紛う事なき幼女、頂の座って感じの美少女形態なのである。


ロリコンにも熟女スキーにも対応するヘカテー様は正に女神の鑑。



「うう、この姿のまま会いに行ったら絶対にがっかりされてしまいます…」


「じゃあ、おっぱい大きいので行けば?」


「そうしたらあの子、絶対に私の胸揉みしだくじゃないですか! 貞操の危機ですよ!」


「いいじゃない、減るものじゃなし」


「減りますよ! 私の精神力とか清純系アイドル的なイメージとかが!」


「(そんなイメージあったかしら?)」



ロバ足のアバズレ食人鬼とか女吸血鬼なんていう取り巻きに普段は囲まれてるこの女が清純派? などとは口が裂けても言わないデメテル様であった。



「あの子も変なところあるんですけど、それでも世のため人のためになる善行だってたくさんしてるんです」


「(なんで私この女の愚痴を聞かされてるんだろう?)」



完全にグチりモードに移行しようとするヘカテーさん。デメテルは相手にするのが面倒くさくなってきた。


なので、話題を少しでも変えようとするのだが、



「そ、それはそうと、最近、貴女の新しい巫女になった色黒の女の子、こっちでも噂になってるわよ。不思議だけど魅力的な歌を歌っているそうね」


「そ、そういう事もありましたかね…」



作った笑みで冷や汗をかき目を泳がせ始めるヘカテー。デメテルはこの話題も地雷かよと心の中でツッコミをいれる。



「……わ、私の周りでも流行ってるのよ」


「へ、へぇ~」



神界でも話題沸騰の大型アイドル誕生。


新しくヘカテーの神殿に連れてこられた少女は、その愛らしい姿と、異国の歌で多くのヘカテー信者や神々を虜にしたのだ。


ギリシア中にそのスバラシー歌が広まるのも時間の問題だろう。


しかし、ここで一つの疑問がギリシア世界の人々の間において湧き起こっていた。デメテルは地雷原を走り抜ける感覚でヘカテーに問う。



「ところでヘカテー。アマギってどこの峠なの?」


「あ、天城ですか? そそそそうですね、あれですあれ。確かインドに入るための峠だったかなー?」



特に理由のない改名がカイバル峠を襲う。







同刻。


無残に崩壊した霊峰の高原。


大量の土砂には無数の人間と骨の兵士が巻き込まれ、表面にはその四肢などがまばらに散見される。


そのような悲惨な光景を生み出してなお、闘争は止まず、戦士たちの雄叫びが響き続ける。


しかし、それもようやく静かになろうとしていた。


築かれた土塁や柵は踏み荒らされ、神聖なる地は血によって赤黒く染まり、一面に物言わぬ骸が散乱する中、荒々しい声が響くのは、その奥の一角においてのみ。


1人の兵士が10倍近い骨の兵に囲まれる中、鋼の如き肉体の勇者が豪奢な鎧のドレスで着飾る美しい女神に対峙していた。


女神はその槍の切っ先を勇者に向けて高らかに宣言する。



「絶対にヘラクレスなんかに負けない!」 +1


「いきなりえらいフラグ建てますね、あの守護女神」



とはいえ、相手はギリシアを代表する守護の女神。ヘラクレスさんもきっと苦戦するでしょう。


きっと、あの胸の鉄壁は飾りじゃありませんからね。



「誰の胸が洗濯板かっ!!」


「そんな貧相だなんて、私一言も行ってませんよ。いいじゃないですか、空気抵抗少なめで」



というか、ギリシア女神のぺったんこ双璧を為す女神様がこの場に会しているのだけど。


まあ、月の処女女神様はそういうの一切気にしてないかんじですがね。言葉の意味とか分かっていないみたいですし。


そんな風にアルテミス様に視線を送ると、憮然とした表情で返された。



「いや、分かっているぞ。おっぱいは大切だ」


「ほう」


「だが、片方だけで十分だ」


「やっぱり分かってませんね。アルテミス様脳筋可愛い」



子供を育てるための器官としてしか認識していない、出産の安全を司る女神様さすがです。


そうですよね。はさむためだとか、もむためだとか、しゃぶりつくためだとか、そんな風に認識していた私が穢れていました。


なので触らせてください。



「メディア姫もけっこうある?」


「イカロス、いいですか? 自分のモノはいくら揉んでも最終的には虚しくなるというものです。賢者タイムに入ってしまうので」


「賢者? 賢くなる?」


「悟りを開くことは出来るかもしれませんねぇ」



そういう流派ってあったような気がしますし。


それはともかく、戦争である。大勢はほぼ決したとはいえ、女神アテナが残っている以上、油断はできない。


なにしろ、武勇という一点において彼女を上回るのは主神ゼウスぐらい。肩を並べるといえばアポロンぐらいだろうか。


ヒロイン指数的にも圧倒的なパワー持ち。強い。絶対に強い。



「まあ、そういうわけでヘラクレスさん、後は頼みます」


「分かった、心の友よ」


「え、あ、ちょっと!? ちょっと待ちなさい!!」



というわけで、私たちは対峙する女神と大英雄を遠目に、迂回しながら山頂の方へと向かいます。


女神アテナちゃんがものすごい焦った顔でこっちに手を伸ばして制止しようとしてますが、まあ、待てと言われて待つ奴はいないので。



「ま、待ちなさい! 私を倒さずして処女宮を越えることは……って!? 嘘っ、結界が開いてる!? なんで? どうして!?」


「ふふふ、私の作戦勝ちですよ女神アテナ様」



私の言葉に女神アテナは驚愕し、周囲からは尊敬の視線が集まる。


しかし、あの幼女、どうやって海神ポセイドンに接触できたんでしょうね。


ポセイドンの下にリスポーンさせようと思ってたんですけど、失敗に終わったはずなんですよね。


意外にあの幼女、悪運がありましたね。今頃、お父さんに星座にしてもらっているのでしょうか?


なお、星座にしてもらうと自分の逸話が後世まで残るという特典が得られます。子孫に自慢できますね。


子孫たちが「ほらあの方角の空を見なさい、あの星座が私たちの祖先なんですよ」って偲んでくれます。


他に何か得なことないのかって? ……え、えっと、あとで調べて回答しますね!



「じゃあアテナちゃん、バッハハーイッ!」


「あ、そんな! 待ちなさい! いや、待ってっ! 待ってください! なんでもしますから!!」







「ぷーっくすくすっ、あははははっ、ねぇ、今のアテナの顔見たっ? 見たっ? 傑作だわっ!」


「ヘラ様相変わらず性格悪いね!」



飛び跳ねるキグルミの横、偉大なる神妃様は女神アテナを指さしてゲーラゲラと下衆い顔でお腹を抱えて笑う。


ポセイドンは嘆かわしそうに首を振り、ヘスティアは呆れ顔でため息をついた。



「どうしてこいつら、こんなに仲が悪いのやら」


「確執が深いですから。ステータスとかが絡むと女というのは性格が変わりますので」



女神ヘラと女神アテナの不仲はある意味において当然のものだ。


主神の正妃たる女神ヘラは女神たちにおいて最高位であるはずだが、しかし彼女の生んだ子供たちはあまりパッとしない。


そして女神アテナはヘラが生んだ娘ではないものの、主神ゼウスの子の中では最も活躍するスーパーエリートなのだ。


夫の子ではあるが、自分の生んだ子ではなく、しかも超出来が良くて、夫はその子を猫可愛がり。そして自分の子は超不出来である。


火曜サスペンスとか始まりそう。



「信仰心が薄れていくのぅ。ところで父上、なんでワシ、こんなおっきな矢にくくり付けられておるのじゃ?」



長さ2m以上はあるだろう巨大な矢に縄でくくり付けられているペリアスは、半ば諦め顔でコメントする。


いや、まあ、前回の展開からして概ねのところ予想はできるのだが、ペリアスは問わずにはいられない。


矢は飛ばすモノである。


そんなペリアスの疑問に紐…《かまど》の女神であるヘスティアが慈悲深い表情で答えた。



「喜びなさいペリアス。貴女は天上にて地の人々を見守り、遠い将来に渡って語り継がれる不滅の存在となるのです」


「そんな大層なものはいらんのじゃぁぁぁぁ!!」



お聞きください、この喜びの声を。 ※個人の感想です。


ポセイドンは応用に頷き、巨大な弓を手に取った。ヘスティアはハンカチで目元の涙をぬぐう。



「では、逝ってみようか我が子よ」


「いぃぃやぁぁじゃぁぁぁぁ!!!」



それはともかく、先ほどまで散々笑い転げていた女神ヘラが服装を正して山頂の方角に視線を送る。



「もうそろそろよ」


「ほう、そうか。山頂までの道は開かれているから、当然ではあるが」



ヘラの言葉に、ポセイドンは弓を置いて真面目な顔で応える。


そもそも既にオリュンポス十二神のうち、ゼウスを除く番外を含めた全てがもはや彼女らを妨げないのだから当然ではあった。


そしてポセイドンが道を開いてしまった以上、結界の基点となる神殿に立ち寄る必要すらなく、彼女らは天秤宮から双魚宮まで一直線に進んでいった。


ヘラはそれを特に表情なく見送るが、ヘスティアはそんな彼女に問う。



「それで、神妃である貴女はどう考えるのです?」


「どうもこうもないわ。あの方が敗れるのなら、それも運命なのでしょう。そも、いかに人間どもに望まれたあり方とはいえ、あの放蕩が目に余るもの。多少痛い目を見るのも良い薬になるわ」


「それにしては、メディア姫に執着が過ぎているような気もしますが」


「そ、それは、エロースの金の矢が…」


「確かにそれはあるでしょうが、それとて運命でしょうに。愛の神の矢というものは、そういうモノと理解されているはずです」



ヘラの取り繕うような言い訳に、ヘスティアは笑みを浮かべて応える。



「まあ、既婚者である貴女が同性にそういう感情を抱いてしまうのは、家庭の守護を司る私の立場としては反対を表明しなければなりませんが」


「……」


「恋も知らずに無理やりに娶られ、結婚を司る女神という枠に嵌められた妹に対してという私の立場からすれば、その先が気になるわけでして」


「それただの興味本位じゃないのっ!?」



超楽しそうなヘスティアにヘラはムッとした。


確かにこの処女女神は永遠の貞節を誓ったわけだが、他人のコイバナ、しかも当事者的には厄介なのに外野からチャチャ入れるのは大好物だったりする。


ホモとコイバナが嫌いな女子はいません(偏見に満ちた発言)。


そんなヘスティアに対して女神ヘラは踵を返して背を向け、そして部屋の外に向けて歩き出す。



「おや、どこへ?」


「近くで見てくるわ」



女神ヘラはそう言い残した。







「どうだ、もしこの我の嫁になるなら、世界の半分をお前にやろう」


→はい

 いいえ


「やべっ、ノリで『はい』って答えそうになりました」



唐突な罠である。卑怯極まりない。様式美すぎて一瞬血迷いかけました。


さて、やってきましたオリュンポスの頂上。


ギリシア神話体系の主神たるゼウスが座す、縞瑪瑙づくりの、人造のモノとはとても思えぬ冒涜的なまでに巨大な、ドーリア式の大神殿。


ここはレン高原の北の果てですか? 中央アジアの高原モンゴルじゃないんですよ、ここ、バルカン半島ですよ分かってるんですか? 作品間違っていませんか?


それはともかく、目の前には豊かな白い髭と髪をもつ立派な体躯をした老人。ステレオタイプな神様像。


初対面の焦げ茶色の髪の美少年はどうした? これ詐欺じゃないですかね?


ショタ×美少女(もちろん私の事である)ならまだ需要はあった。だが、ジジイ美少女(もちろん私の事である)とか凌辱系エロ漫画ぐらいにしか需要ねぇですよ。



「というわけで、断固拒否します」


「ふむ、理由を話せ」


「自分の胸に手を当てて考えてください。貴方に関わって不幸になった女がどれほど存在するかを」


「いや、それ、我のせいじゃないんだが」


「公然と浮気するなら嫁の手綱ぐらい握ってからにしろよクズ……、と私の知人であるペリアスが御身をそう評しておりましたので」



後ろのギャラリー達の「うわぁ、こいつ最悪だ」的な視線を感じつつ、しばしのトーキンタイム。


さっさと殴り合えって? いいえ、私、専守防衛主義者なので。出会い頭に殴り合いとか、そういう野蛮なのはしないので。



「貴様は本当におもしろいな」


「いえいえ、私のような平凡な田舎娘になんかにかまけずに、もっと名家のお嬢さんとか誑かしたらどうでしょう?」


「どこが平凡な田舎娘か。正式な女神でもなしに、この我を前に平然とそのような口を利く女など、我は今まで一度も見たことはない」


「は? 何言ってるんです?」



すると、ゼウスは余裕満々な笑みを浮かべて視線を私の背後に送る。私もまた振り向くと、そこには神の畏怖に恐れをなすダイダロス親子とアタランテがあった。


これこそ人間と神の違い、圧倒的な神威。本来なら目に入れる事すら死に直結する圧倒的な存在規模。


彼の手加減無しでは、その光輝の前に霊魂もろとも焼き尽くされるだろう。


なお、アルテミス様はペロペロキャンディ舐めてる。



「あの処女女神のせいでシリアス成分が台無しですよ」


「我が娘ながら、苦手だ」


「あ、いつもあんなノリなんですか? あのヒト」


「うむ。アポロンが優秀なので、放置しておるがな。彼奴は彼奴でアルテミスがおらんと仕事せんし」


「ガチのシスコンですか…。いや、貴方が言える事じゃないでしょうが」



何しろこの主神の妃は、彼の実の妹である女神ヘラである。しかも、ゼウスの結婚相手としては3人目で、しかも2番目の妻である女神テミスが健在であるにも関わらず。


正妻がいるのに妹にプロポーズとか、古代ギリシアの性の乱れは極まっていますね。シスコンってレベルじゃなくて、ただのヤリチンだろコイツ。



「我の甲斐性に感服したようだな」


「してないしてない。というか、私、浮気とか不倫とかそういうのお断りですので」



やんわりとお断り根拠を置いておく。お互いに逃げ道って必要だと思うのです。


だが、主神ゼウスは不敵に笑い、そして言い放つ。



「ほう、お前もまた我に一夫一婦を求めるか」


「え、いや、そうじゃなく……」


「あいつもそうだったな…」



話がおかしな方向に転がり出す雰囲気に私は焦る。アカン、こいつにこれ以上喋らせたら、私の死亡フラグが確固たるモノになってしまう!


頑張れ私。負けるな私。これ以上コイツに口を開かせるな! 命を燃やせぇぇぇぇ!!!



「いいだろう、ヘラとの離婚を考えてやっても良いぞ」


「え…?」


「!?」



マモレナカッタ


背後に、息を飲んで信じられないモノを見るかのような、傷ついたような表情のピンク髪の女を見た。





女神ヘラは急ぎオリュンポスの頂上を目指した。どのような結果であれ、自分の立場に大きな影響がもたらされるだろうから。


そして同時に嫌な予感がする。


彼女はその役割が定められてから、何も考えずただその役割を果たしてきた。


彼女は結婚を司る女神であり、最高神の妃である。よって、彼女は己の義務を果たすべく、彼女の夫を愛した。


多少行き過ぎた所もあったが、彼女の貞淑は疑いようもなく、彼女の愛は最高神に捧げられ続けてきた。


だというのに、今さらこの胸に宿るモヤモヤとした表現しえないものは何なのか。そして、この不安はいったい?


彼女は駆け抜ける。もうすぐ彼女の夫のいる場所、そして、彼女の心を乱す魔女がいる場所だ。


そして、



「いいだろう、ヘラとの離婚を考えてやっても良いぞ」



彼女は信じられない言葉を最愛の夫の口から聞いた。頭の中が真っ白になる。


今までの自分の献身や努力、その全てが否定されたような、彼女はそんな思いに襲われ、まるで足下が崩れるような感覚を覚えた。


何、不思議な事ではない。


そもそもそれは、彼女自身が為したことだろう。前妻であった掟の女神を主神の妃の座から追い落とす原因を作ったのは一体誰なのか。


なら、それが自分の身に降りかからないと、いったい誰が証明できるだろう。


しかし、次の瞬間、もう一つの声がそんな思考を引き裂いた。



「その口を閉じろぉぉぉぉっ!!!」



女神ヘラは銀髪の乙女が、おそらくは自分の座を追うだろうはずの女が、怒りに満ちた表情で、最高神の顔面を、最高神の口にした暴言もろ共に殴りつけるという、信じられない光景を目撃した。


彼女の心臓が大きく弾んだ。



<女神ヘラ様視点>

ぜうす「ぐへへ、俺のモノになるなら古いの(ヘラ)と別れてやってもいいんだぜ」

めでぃあ「その口閉じろクズがぁぁ! よくも超絶美人で気立ての良いパーフェクトレディーのヘラを傷つけたなぁぁ!! テメェは絶対に許さねぇ!!」

へら「トゥンク」



ゼウスのクズっぷりがヤバイ。

でも、テミスの件については擁護のしようがないんですよね…。

若くてかわいいお嫁さん(実妹)が欲しいから、今の嫁さん(瑕疵があるわけじゃない)と離婚することにしましたとかもう…。



前後のお話の整合がおかしくなってきましたね。遅筆にはありがちな事です。ギリシア編終わったら一度見直しですね。

特にヘラについてはもう少し記述を直したいです。

いやー、あれです。

なんか実兄(ゼウス)にレイプされかけて、なんとか逃げ切ってるけど、そろそろヤバいとか、

「私の体が欲しいなら、今の奥さんと別れてよね(どうせ出来ねぇだろ?)」ってゼウスに言ったら、ゼウスがガチでテミスと離婚して後に引けなくなったとか、

自分もいつか同じように捨てられる可能性があるなんていう歪みとか、

正妻である自分とゼウスの間の子供は出来損ないばかりなのに、ゼウスと他の女神との子供はみんな優秀だとか、

これは歪むwww

という、ヒロイン力強化でもしよーかと。まあ、いつになるか分からないんですがね。


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