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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Silver Bullet

作者: 月見草

これはまだ、レミリアお嬢様が外の世界にいたころの話。

まだ幻想郷という存在を知らず、当時はイギリスのロンドンから北西のスノーズヒルにひっそりとした屋敷を構えていた。

住人はお嬢様と妹様、パチュリー様の3人。使用人は私と美鈴、それに妖精メイドが数人と小悪魔といった程度。

だが屋敷自体、今の紅魔館に比べれば小さかったから大した家事ではなかった。

美鈴は門番、というより力仕事担当で小麦などの食料品の運搬や屋敷の修繕が主だった。


その当時は、私は内心少し怯えていたかもしれない。主人が悪魔の吸血鬼、それだけでも大した秘密を抱えている。

この秘密が私を神経質にさせていたのかもしれない。私は極力屋敷の外から出ず、たまに訪れる郵便配達員にも気を配っていた。

なぜなら当時から、宗教の観点が少しずれ始めたからだ。若者を中心に広がり始めた悪魔信仰。この考えはキリスト教徒を大いに驚かせた。

本来忌み嫌うべき悪魔を信仰する考えは敬虔なクリスチャンにとって恐怖の対象であり、悪魔信仰の若者との間で大きな溝が出来ていた。

だからこそ、こんな地方では素性のわからぬ者は疑われる。私は普通であろうと努力した。

買い出しの際には変装して出かけた。この銀の髪は目立ちすぎる。

お嬢様は無論、誰にも姿は見せられない。

外に出るなどもっての他で、月のない新月に音も立てずに飛ぶのがお嬢様の唯一の外出だった。


だがお嬢様は悲観してはいなかった。「むしろこの方が趣はある。昔からずっと吸血鬼はこうだったじゃないか」

そう言い、スノーズヒルのラベンダー畑を眺めながらお茶を飲むのが日課だった。

「ねえ咲夜、いっそ悪魔宗教作っちゃおうか?」

ある日の夜、暖炉の前で退屈しのぎにそう言った。そんな気などさらさら無いくせに。

目立つのは好きだが人目につくのは嫌う。人の好奇心は底を知らないからだ。

今の情報網なら世界中にお嬢様の存在が知られるのに半日もかからないだろう。それは現代文明に触れていないお嬢様でもよく知っていた。

「そうしたらキリスト教徒と戦わねばなりませんね。食料とワインの備蓄をいたしましょうか?」

「う、じゃあいいわ。急ぎで作った年代物(ヴィンテージ)にも愛着はあるからね」

「かしこまりました」

少し渋った顔をするお嬢様に苦笑いを返す。この返しは予想していなかったらしい。

「ところで咲夜?」

「はい、何でしょうか」

「レコードの針がもうすぐ折れそうなの。買ってきてちょうだい」

「承知しました」

「お願いね。それにしても最近では、こんな小さな円盤で音楽が聴けるそうね?」

誰に言うでもなくそういい、ティーセットの皿を取ると不思議そうに問いかけた。

お嬢様にしてみれば信じられないことなのだろう。CDなる物は彼女の常識を変えた。

「そのようですね」

「人間というのもなかなかやるものね」

「では明朝出かけてまいります」

「任せたわ」


翌日、自室に戻るとメイド服を直し着替える。深緑のワンピースに、白のベスト。黒髪のカツラをかぶると、トレンチコートに身を包む。

腰まで伸びたロングのカツラをうっとおしく感じつつ、マフラーを巻いた。外は雪がちらついている。

いくらかのお金を財布に入れると、バス停まで歩きだした。下手に飛ぶことなど出来ない。

少々面倒だがやむを得ない。人のまばらなバスに乗ると、ただずっと広がるラベンダーを眺めていた。

ここからロンドン郊外まで出向く。レコードの針なんてものは今ではそうお目にかかれない。

そのせいだろうか、私は目立たぬよう気を払ったつもりだが、店主によく覚えられた。

お嬢様の注文はアンティークから珍品に至るまで、とにかく人の買い物とはずれている。

レコード、ガス灯、アンティーク家具や食器、柱時計や18世紀の珍しい置物など様々だ。

どうもお嬢様は18世紀から19世紀に思い出がたくさんあるらしい。

だから今でもロウソクや暖炉を中心とした火に頼っている。

「相変わらずだけど、大丈夫なのかしら?」

開店休業、そんな言葉がよく似合う。レコードや蓄音機を扱う珍しい店。

私はいつも次来るときは潰れてしまうのではないかと不安になる。扉を開けると、黒縁の眼鏡をかけた店主が出迎えた。

気取らない紳士、それが最もしっくりくるだろうか。器具の手入れを止めると私に向かい合う。

「どうもお久しぶりです。フローレンスさん」

「あら、覚えてくださったのですか」

「覚えていますとも。あなたのようなレディは特にね」

「光栄ですわ」

「レコードの針、ですか?」

「ええ、お願いします」

ニーナ・フローレンス。私はそう名乗っていた。

咲夜、つまりFlowering Night(フラワリング・ナイト)をもじった偽名だ。

こうやって私は秘密を保持してきた。この生活もいい加減慣れた。

肌が白いせいかフローレンスと名乗っても特に問題はなかったらしい。

「ご主人様は相当、音楽がお好きのようですね。ここでレコードプレーヤーを買って頂いてもう3年でしょうか?」

「ええ。昔の知り合いを思い出すとかで。毎日聞いております」

「左様ですか。さぞ、いい思い出なんでしょうねえ」

良い思い出なのだろうか?時々、賛美歌を聞いては空を見上げることがある。

昔戦った宗教家との思い出なのだろうか?これは私でも想像しがたい。

「お待たせしました。何かありましたらお申し付けください。修理いたします」

「あら、ご丁寧にありがとうございます」

「とはいえ、修理はまだ先の様ですけどね」

「どうしてそう思うのです?」

「修理が多いならば、店はもっと繁盛していますよ」

「ふふっ、そのようですわね。ここのレコードは簡単に壊れませんから」


買い物を済ませると、付近を散策する。ここに来ることも頻繁ではない。

珍品を求めて歩く。また、アンティークでも見て回ろうか?

ここから少し離れた所に、食器を作るアトリエを構えた芸術家がいる。名は知られていないが私は彼の作品を気に入っていた。

町から離れ、林に囲まれた田園を歩く。畑には今は何も植えられてはいない。それが寂しげな空気を一層重くする。

霧が出そうだ。アトリエへ急ごう。その時だった。

がくり、と崩れ落ちた。路上に突っ伏し倒れこんだ。何が起きたかわからない。

「っ、つああ!」

叫び声をあげると同時にダァン、と甲高い音がこだました。反射的に時を止める!

「咲夜の世界(ザ・ワールド)!」

全ての物体の動きが止まる。痛む右足は撃ち抜かれていた。

このままではまずい、近くの古びたポンプ小屋へ片足だけで歩み寄った。

石造りの小屋に身を隠すと同時に時が動き出す。力をあまり込めずに止めたからだろうか、40秒弱の停止だった。

「っく、ううう」

低く唸りながら、止血を行う。とりあえずマフラーで血管を縛った。

幸いにも骨が砕かれたわけではなさそうだ。血が止まったことを確認すると、呼吸を整える。

(今のは…狙撃!?)

突然のことに気が動転しそうだ。私は確かに秘密を守ってきた。

私は何度か、街で男性から声をかけられた事がある。無論すべて断ったし、屋敷の事は誰も知らない。

正体を隠し、帰る際には尾行に細心の注意を払った。夜道で男が付きまとっても能力で上手くかわしてきた。

ならば何故?尽きぬ疑問が浮かんでくる。相手は?何人だ?

小屋の小さな明かりとりの窓から肩をのぞかせてみる。

その数秒後、ガラスは無残に砕け散り、コートの肩が撃ち抜かれた。

「間違いない、私を狙っている!」

コートの穴を確認すると、再び羽織る。

コートを脱いで窓からわずかに見えるようにしてみたが、まさかこうも正確に撃ってくるとは思わなかった。

ピー、ピーッ!

「!?」

突然の電子音にたじろぐ。それは桶の中から響いていた。

注意深く覗き込むと、黒いものが目にとまった。緑色のランプが光っている。

ボタンは二つだけ。アンテナが伸ばしてある。トランシーバー、というものだろうか。話に聞いたことがある。

罠かと一瞬考えるも、とりあえずランプが光っているボタンを押してみた。

「…ピー、ザザッ。あー、もしもし。ニーナ・フローレンス。いや、十六夜咲夜?」

「なっ!」

「ふふ、まあそう驚かないでくれよ」

「あなた何者!?」

「誰でもいいさ。そう虚勢をはるなよ。肩と足を撃たれたのだろう?」

まずい、こいつは正体を知っている!私の本名は誰にも言ってない。知るはずがないのだ。

過去の足跡は全部消した。ましてや、生まれ故郷から遠く離れたこのイギリスの片田舎に縁も何もあるわけがない。

変声機か何かを使っているのだろうか。男とも女とも、老いているか若いかもわからない。無機質な声で奴は語り始めた。

「しかし驚いたよ。まさか本当に時を止めてしまうとは」

「そうでしょうね」

「おや、驚かないのかい?」

「名前を知っているくらいですもの。能力がばれていてもおかしくない。それに、だからこそ狙撃したんでしょう?」

「流石だな。悪魔に仕えるだけはあるよ。時を止める、そんなあんたと真っ向からぶつかるのはごめんだね」

「…何が目的なの?」

「案内してもらおうか?あんたの主人に」

「わざわざ晩餐になりに行くのかしら?」

「ふふ、それもいいかもな。それでどうする?要求をのんでおとなしく案内すれば治療してやる。止血したとはいえ、そのままでは失血死するぞ?」

「断る。大人しく待ってなさい。串刺しにしてあげるわ」

乱暴に受信を切ると、用心して窓のあったところから外を見る。狙撃者は田園周囲を囲む林の中だ。

林からここまでは近くても約150m。正確にコートを撃った事からスコープ付きのライフルと考えるべきだろう。

ライフルの弾は秒速約900~1000mだそうだから、撃って着弾まで0.15秒といった所。

(絶望的な数字ね)

また計算する。私は飛ぶ速度はそんなに速くない。

全速力で時速40km強だから、秒速11.1mほどだ。14秒近く時間がかかる。その間にナイフを投げても無駄だろう。

時を止めてもナイフが届く射程距離が伸びるわけではないのだ。物を飛ばすために必要な力は、止まった世界でも変わらない。

ナイフの射程距離は5mといったところだろうか。どちらにせよ林の中に入り込む以外方法はなさそうだ。

時を止めている間に林の中に入る。というのもいいが、時間停止を読まれている以上林の中に爆薬が仕込まれていてもおかしくない。

私はあえて姿をさらし、撃たせることで人数と位置を探ることにした。狙撃者のいる地点に罠はないはずだ。

次に自分の持ち物を再確認する。レコードの針、バッグにはナイフが20本。懐中時計に財布、ハンカチ、カイロ、香水といった物。

(やはりナイフで勝負する以外なさそうね)

呼吸を整え、精神を集中させる。手にはナイフが3本。両手で6本。

敵は何人でどこにいるかわからない。だが何にせよここにいるのは危険だ。犯人は綿密に調べ上げ、戦いやすいここを選んだ。

周囲には助けてくれる人はいない。身を隠す建物も無いし、あっても木でできた物置程度だ。ライフルを防ぐ盾にはならない。

もしかしたら今いるここにも罠がある可能性がある。ならば行動は早い方がいい。


「咲夜の世界」

時を止め、扉を蹴破る。開けた瞬間を狙撃されるかもしれないからだ。蹴破ると同時に飛ぶと、時を再始動させる。

心の中で数を数える。奴らが私を照準にとらえるまでに何秒かかるだろうか?3秒数える。何もない。

また時を止める。周りを見渡すが、林のどこからも発砲の光は見えない。飛んでいた地点から横にスライドし、飛んでいく。

(引きつけて撃つつもりか?)

また再始動。動きはない。少し長く5秒数える。何もない。

(いける!こいつら私を捉えきれていない!)

林までは残り50m。とりあえず私は最初に発砲された際の弾道をたどることにした。

ライフルを持って遠くまで移動するのは難しいだろう。移動したとしてもこの雪だ。足跡などの証拠はあるはずだ。

(?)

何かが光った。目の前で。点の光じゃない。長く細い、線状の光。

「うっ!?」

ワイヤーを張ってある!こんな上空の一面に!この行動も読まれていた、まずい!

全速力で飛んでいるのに、急に止まれるわけがない。手足が切れる!

ナイフをしまうと丸くなり、背中からワイヤーに突っ込んでコートで受けた。その瞬間!

「うあああ!」

体がしびれる。電流を流してある!ふらつき、動きが止まる。即座に時を止めて動く。止まってはだめだ、狙われる。

止められる時間が短い。停止と再始動で力を急に使いすぎた。少し左に避けるのが精一杯だ。

ダァン!ダァン!

再始動した瞬間、薄暗い林の中に2つの光を見た。弾はさっきまでの位置を正確に射抜いた。

2人!私の正面と、右方向。痛手を負ったが確かにわかった。木々よりも高く飛び、ワイヤーのない上空から林の中に突入する。

林の中では狙撃はほぼ無理だ。私の位置は捉え切れない。

爆薬を使おうにも、私の位置を捉えなければ意味がないし、林全てを覆う爆弾など実質無理だ。

先ほどのような罠を警戒し、ここからは慎重に間合いを詰める。時間停止はとっておきの手だ。

移動には使えない。負傷と電撃、頻繁な時間停止で体力を消耗した。

位置を確認し、停止して襲撃する。短銃なり持たれていたら厄介だ。

(見つけた)

まずは一人、防寒着にゴーグルといった重装備だ。

時間を止めると痛む体に鞭打って間合いを詰める。ついに捉えた。射程距離に。

ずらり、とナイフを投げる。飛んだナイフは目の前で停止した。そして時は動き出す。

「っ!」

叫ぶことなく息絶えた。知った奴かもしれないと思い顔を確認するも、初めて見た奴だ。

もう一人だ。もう一人を捕らえ洗いざらい吐かせなければならない。

ナイフを回収するとすぐに方向転換。逃げだす前に決着をつける。冬の寒さが傷に染みて痛みがより増していく。

ダァン、ダァン!

2発の銃声がこだました。怯えることはない。弾はここまで届いていない。

乱射しているのだ。木々に邪魔されている。それとも助けを求めて合図しているのか?

無駄だ。林の中で銃声がしても、普通は狩猟だと考えるだろう。

距離を詰めていく。罠はない。ここまで準備する時間はなかったようだ。

(ついに見つけた。もう一人!)

奴までは約30mまで詰めた。時間停止はあと2回といった所。もう一人はどんな奴なのか?

奴も防寒着にゴーグルを付けていて、どんな奴か見当がつかない。

「咲夜の世界」

また止める。今度は捕獲だ。手に持ったライフルを蹴飛ばすと、両手両足にナイフを投げる。背後に立つと時間が動き出した。

「っ、うわ!」

突然の襲撃と痛みに叫び出す。低い。どうやら男だ。それも若い。

「動かないでちょうだい」

首元にナイフを突きつける。私もそろそろ限界だ。すばやく全てを聞き出さなければいけない。

「ぐうっ!」

「あなた何者?吐いてもらうわよ」

「はぁー、はぁー」

「早く!」

ナイフを首元に軽く刺すと、帽子とゴーグルをはずす。やはり男だ。

「名前は?」

「…あんた警察か?」

「何でもいいわ。答えなさい」

木に男を叩きつけると、男に向かい合う。

「どうしたの?神へのお祈り?」

「いや…あんたが祈れ!」

次の瞬間、強烈な光が辺りを包んだ!

「うあっ!」

うかつだった。閃光弾を周辺の木に仕込んでいた。奴が目をつぶっていることで気づくべきだった。

雪の反射も相まって、一時的だが完璧に視力を奪われた。痛みでその場に座り込む。

彼のいた地点にナイフを投げる。声はない。ここで逃してはまずい。

「C・リコシェ!」

本数が少ないがやむをえない。魔力を込めた高速のナイフ。ここにすべてを費やす。

「…ふふ、あはははは!」

笑い声が響いた。目の痛さも相まって頭に響く。近い、射程圏にいたはずだ。確かに刺したはずなのに。

「流石に時を操っても、現代文明には勝てないようだな」

「防弾、ジャケット…」

「その通り。聞き出そうと思って顔に投げなかったのが失敗だったな」

「くう…」

「させるか!」

胸倉をつかまれると放り投げられた。痛い、もう立てない。

「ナイフはあんたに持たせたくないからな」

(咲夜の世界)

「っ…無駄だ!時を止めてそこらを探したようだが、結局ナイフの位置はわからなかったようだな!諦めて吐け、おまえの主人はどこにいる!」

「…」

「答えろ!血を吸う男爵はどこにいるんだ!」

「ええ、教えて、あげるわ。もう時間がないからね」

「ようし、どこにいる?」

「私の時間停止は、何もこの世界全てではない」

「何?」

「例えばナイフを投げ、ナイフだけ時間を停止させて宙に浮かせることもできるわ」

「…だから何だってんだ?ナイフがなければ意味がないだろ!」

「ねえ知ってる?止まった世界では反応は起きないのよ?」

「つまんない悪あがきはよせ!」

「そうかしら?ほら…そして時は動き出す」

ダァン!

銃声がまた響いた。男の後方、弾は男の脳天を捉えていた。

「…硝煙の匂いで気づかなかったようね。背後を取った時、私は目印に木に香水をまいたの。時間を停止した際にそこに戻った。狙ったの。時を止めて引き金を引き、あらかじめ頭の高さを撃ち抜くようにワイヤーでくくりつけた拳銃でね。仲間が持っていた拳銃とあまりのワイヤー。武器はきちんとあったのよ」

とはいえ、こちらも深手を負った。衣服を脱がし、探るも身分を明かすものは何もない。

(とにかく、屋敷へ…)

身分証明をするものがないのは咲夜も同じだ。治療は高額の金を医師に渡すか、魔法を用いるパチュリーに頼むしかない。

空はもう暗くなり始めた。夜はこれからすぐだ。まずい、もう眠い。

「いました!咲夜さん!」

「咲夜!」

駆け寄る二人の声。ああ、ようやくか美鈴。力が抜けた。

「これは…」

「医者を早く!」


頭が、重い…

赤、赤、赤が見える。私は?

「気がついた?」

「お嬢様?」

「もう大丈夫よ。ずいぶん重症ね。しばらく休んでいなさい」

「あとでパチュリー様にお礼を言わないといけませんね」

「いえ、町の医者に診せたわ」

「え!?じゃあ私…」

「そう、バレちゃった。銀の髪」

「…申し訳」

「大丈夫ですよ」

「へ?」

いきなり割って入った美鈴が笑う。

「最近じゃ髪の色を脱色させる技術があるそうですね。咲夜さんもそういう人だと医者には言っておきましたよ」

「それ、本当にごまかせている?」

「はは…どうだか」

「でも、これじゃあお引越しかしら?」

「申し訳ありません」

「いいのよ。でもどうやって咲夜の正体をつかんだのかしら?目的はおそらく私の力を少しでも手に入れようとしたんだろうけど…」

「犯人が死んだんじゃわかりませんよね」

「あてならありますよ」

「え?」

私の言葉に二人が驚く。

「犯人は私の正体は知っていたけど位置までは知らなかった。つまり犯人は盗聴器で会話を聞いていた」

「じゃあもしかして、あのレコード…」

「違うわ。レコードは何年も前に買った。でも犯人は主人が男だと勘違いしていた」

「じゃあここ最近買ったもの?」

「そうなります。そしてそんな盗聴器が仕掛けられるスペースがあるとすれば…」

「柱時計!」

「そうです」

「でもなんで、盗聴器と一緒に発信機も付けなかったんでしょうか?」

「おそらくバッテリーのせいね。コードがいらない柱時計じゃバッテリーに限界がある」

「でもなんでそんなことを…」

「私たちが柱時計を買ったのはただの偶然。狙ってやったとは思えない。おそらく無差別に仕掛けたんでしょうね」

「よし、いくわよ美鈴。その主人締め上げてやるわ」

「はい!」

後日、店主が全てを自白した。好奇心が相まって無差別に仕掛けた盗聴器で、とんでもないネタを仕入れた彼はカルト好きな友人にこのことを打ち明けてしまったらしい。

その後、店主がどうなったか?さあ、私は考えたくもないわね。



どうもお久しぶりです。狙撃ものが書きたくてやっちゃいました。

ネタは前からあったけど書けなくて。難しかったです。上手く締められなかった点が大きいですね。

うん、何だろう。時を止めたかった!DIOと咲夜が好きなんですよ。「そして時は動き出す」言わせたかったです。

感想、批評お待ちしています。読了ありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[一言] お久しぶりの短編ですね、どうも香崎です。 狙撃、銀の弾丸、東方、と聞いて、銀のナイフを銀の弾丸に見立てたのかと思ってたら、標的は咲夜さんでしたと。なるほどこういうのもアリだなー、とか考えまし…
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