9話 罪の意識
「よしっ。さっそく新メンバーが入ったところで、試合の話だ」
全員ご飯を食べ終わったころ、恭介がそんなことを言い出す。
「試合?」
「ああ。就活で行った場所でな、結構強そうなチームとの試合を申し込んできた」
「ほほう。いまだに就職が決まっていないというのに就活しないで試合の申し込みか。余裕だな。恭介氏」
「偶然見つけてな。『俺たちが甲子園に出たら100対0で1回コールド勝ちできるぜ』って挑発してきた」
「無茶を言いますね。恭介さん」
「俺はできると思ったから言っただけだぜ」
「心配するな西園。俺の筋肉があればそれぐらいできるぜ」
「心配なんてしてないよ。真人君」
「ちなみに、1学期に行われたVSキャプテンチームの時、井ノ原さんが、一番三振率が多いです」
「き、気のせいだろ」
「ついでに言うと、エラー率も一番高いです」
「お、俺の筋肉にボールがついていけなかったんだ」
「真人少年。物のせいにするとは。かっこ悪いぞ」
「はっきり言って井ノ原さんは役立たずです。筋肉の無駄遣いですね」
「う、うわぁぁぁぁぁぁ」
また真人が倒れた。
「ねぇ。恭介」
「ん? どうした? 理樹」
「あのさ。あの世界での記憶。戻せない?」
「……なぜだ?」
「………。あの世界のことは断片的に少しだけ思い出したけど……。美鳥のこともあるし全部思い出したいんだけど」
「……すまないな。理樹。一度消えてしまった記憶は戻すことはできない」
「そっか……」
「すまないな。俺も戻してやりたいんだが……」
「恭介が気にすることじゃないって」
「いいや。俺は罪を償うためにお前たちの助けになりたいんだ。記憶を戻してほしいと言われれば本当はしなければならないんだ」
「罪って……。鈴の?」
「そうだ」
「あ、あれは鈴のためにやったことなんでしょ?」
「だが、失敗した。鈴に余計恐怖心を与えてしまった……」
恭介は横にいる鈴の頭に手を置く。
「すまないな。鈴」
「………」
鈴は振り払うこともせず無言で恭介を見る。
「俺には一生かけてでも罪を償うぐらいしかできない……」
「恭介氏。あまり自分を追い込むな。今回の試合、まさかあの世界で自分は本当に理樹君たちの力になったのか。それを確認したいからじゃないのか?」
「否定はしない」
「ふむ……。恭介氏。少しいいかな?」
「どうした?」
来ヶ谷が席を立ち、恭介に来るように言う。そして2人とも食堂から出て行った。