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スキル『ダンジョンシェルター』  作者: わたがし名人


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第1話 スキル『ダンジョンシェルター』



「……ん、ここは」


 気が付くと洞窟のような場所にいた。


 何故こんな場所にいるのだろう?


 記憶を辿り、自身の身に起こったことを思い出す。


 確か長い連勤からの激務を終え、久々の休日だった。そうだ、買い物をするため街に出掛けていたのだった。


 そしたら突然、大地震が起こって地面に亀裂が走った。その亀裂は大きな穴となり周囲の物を飲み込んだ。その近くにいた自分は巻き込まれ、穴の中に落ちたのだった。



「あれ?天井がある。それに少し明るい。何でだ?」


 上から落ちてきたはずなのに頭上には天井がある。他にも不思議なことがあった。光の入らない洞窟の中なのに、周囲はほのかに明るいのだ。まるでゲームのダンジョンの中にいるようだ。


「もしかしてここはダンジョンなのか?」


 周囲には自分以外の人間はおらず、疑問に答えてくれる者はいない。このままじっとしていても仕方ない。行動を起こすことにした。



「ステータスオープン」


 自分の予想通りならこれで何かが起こるはずだ。


 お決まりの言葉を口にすると、目の前にステータス画面が現れた。早速、その画面を確認する。



____________


名前:ヒキタニ トオル

レベル:1

スキル:ダンジョンシェルター


____________


 表示されている情報は少ないが、このステータス画面が現れたことが重要なのだ。


 ステータスが表示できたということは、つまり世界がファンタジー化したということ。そしてそのファンタジーな力は自分にも適応されている。その力はどの程度のものなのかはわからないが、それでも何もないよりかはマシなはずだ。




 ひとまず身に起こった現状は大まかに確認できた。ここはダンジョンの中で、自分にはステータスとスキルが発現している。


 web小説でよくある現代ダンジョンのテンプレと同じ状況だ。


 しかし、まだ安心はできない。危険な状況には変わりないのだ。ここはダンジョンの中、モンスターがいつ現れてもおかしくない。それにここがダンジョンのどこなのかもわからない。


 入口に近いのか?それとも奥深くなのか?場合によってはこのままダンジョンから出られない可能性があるのだ。



 どうするべきか。闇雲に移動するのも危険だ。



 この状況を打開するべく、トオルはスキルに注目した。


 トオルの持つスキル『ダンジョンシェルター』


 聞いたこともないスキル名だ。説明などは何もない。スキルは使用しないと判明しないタイプなのだろうか?


 名前からしてまずダンジョンに関するスキルなのは予想できる。しかしシェルターとは一体……?


 各能力値のステータス表示もないし、なんて不親切なシステムなんだ。それでも何もないよりかはマシか。


 このまま何もせずにいても仕方ない。とりあえずスキルを使ってみることにした。



「ダンジョンシェルター」


 スキルの名前を読み上げる。


 すると、トオルの周囲の空間が歪みはじめる。


 周囲は先程までいた洞窟から殺風景な部屋へと変わっていた。


 広さはワンルーム位で、何もない打ち付けコンクリートの部屋だった。


 おそらくここがシェルターなのだろう。しかし普通のワンルームにしか見えない。まるで引越しの内覧に来た気分だ。そんな気分だからか一応、靴を脱いだ。

 まぁ、これからここに住むことを思うと汚したくない気持ちになったというのもある。


 早速部屋を確認する。備え付けのキッチンの他には風呂トイレが別で用意されていた。


 他の設備としてはキッチンに小さな冷蔵庫、メインの部屋には布団一式が用意されていた。キッチンの引き出しや冷蔵庫の中身はもちろん空っぽ。トイレにトイレットペーパーが設置されていたのはせめてもの恩情だろうか。

 エアコンはないが部屋の温度は過ごしやすい温度だ。


 不思議なことにこのシェルターには水道ガス電気は通っているようで、備え付けの設備は全て問題なく使えた。



 部屋の確認が一通り済んだところで改めてスキルの欄を確認してみると、説明が新たに追加されていた。


____________


スキル:ダンジョンシェルター


・シェルター内にいる限り、内外からの攻撃を一切受けることはない。ただしシェルターから出るとその効果は消失する。


・一度シェルターの外に出てしまうとシェルターが消失する。シェルターの再設置可能までに一日のクールタイムが必要となる。


・一日一回支給品が配給される。


・ダンジョン内にシェルターを設置し続けることで一定のポイントを得ることができる。ポイントは一覧にあるアイテムと交換可能。


・スキルレベルが上がることで新たな機能が解放される。


____________



 一通り目を通してみた。どうやら生存に特化したタイプのスキルらしい。戦うことはできないがそれは些細なことだ。


 ひとまずこの中にいれば生き残ることはできそうだ。


 とりあえず身の安全は確保できた。


 グー


 ホッとしたらお腹が鳴った。


 そういえば昼食はまだだった。ところでどれくらい時間が経っているのだろう。スマホを取り出す。確か街にいた時は昼前だった。スマホを見ると時間は午後5時。5時間近くも気を失っていたみたいだ。


 それまでモンスターに襲われることなく無傷でいられたことはラッキーだった。


 電波は予想通り圏外で外の状況は一切わからない。現状スマホは時計代わりにしかならない。それでもここではありがたい。この閉鎖空間で過ごすうえで時間が確認できるのは非常に助かる。


 ちなみに所持品はスマホと充電器のみ。トオルはカバンを持たない主義で支払いは全てキャッシュレスだ。念のため充電器だけは持ち歩いていて助かった。


 何故かシェルターにはコンセントがある。もちろん充電可能だ。どんな原理かわからないが電池を気にすることなくスマホを使えるのはありがたい。

 確かオフラインで遊べるゲームが入っていたはずだ。仮にすっどこの中にいても退屈で死にたくなるようなことはなくなった。



 と、スマホのことに夢中になっていてすっかり食事のことを忘れていた。早速支給品をもらうことにしよう。


 スキル欄にある支給品の項目をタップする。すると頭の中にアナウンスが流れる。


『本日の支給品を配給します』


 アナウンスと共に、トオルの目の前に小さなビニール袋が現れた。


 ビニール袋の中にはおにぎり1個とペットボトル1本が入っていた。おにぎりはコンビニと同じような包装がしてあり、ペットボトルはラベル無しの透明な水が入っている。


 早速おにぎりを食べてみる。おにぎりは具無し海苔無しで味付けは塩のみのシンプルなもの。あっという間に完食する。ペットボトルの中身は水だった。これも一気に飲み干す。


 満腹には程遠いが、ダンジョンの中という環境で安全に食事できるだけでも十分恵まれているだろう。


 後先考えずに完食してしまったが、スキルの説明を信じれば支給品は毎日配給されるとのこと。少なくとも飢え死にすることはないはずだ。

 他にもポイントを貯めるとアイテムと交換できるらしい。今はポイントがゼロだからか何も見えないが、おそらく食料もあるに違いないだろう。


 ふと考えてみたらキッチンから水が出る。仮に支給品が途絶えても飲み物の心配はない。となるとペットボトルの水は何のために?謎だ。



 食事を終えたら眠くなってきた。


 シャワーを浴びたい気分だったがタオルがないので諦めることにした。


 こうなる前に買い物が済んでいたら何かしら使えるものがあったかもしれないが、こればっかりは仕方ない。こうして安全に過ごせるだけでも良しとしよう。


 少し早いが今日はもう寝る。これ以上のことは何もできないだろうし。今考えても無駄だ。


 先のことは明日考えよう。もしかしたら何か変化があるかもしれない。



 そうしてトオルはふかふかの布団に入ると、すぐに眠りについた。



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