9.痴話喧嘩?
それから私たちは話を続けた。
ほとんどがあいつが話してばかりだったけれども。
時間も過ぎ時計が11時を差した時、部屋まで送ってくれた。
私はどこかであいつを疑う気持ちもあるのは確かなことで・・・
その気持ちが薄れていくのが嫌だ。
だって今までの日常はもう帰ってこない。
あいつが私の家族を調べなければ、幸せが続いていたのに。
やっぱり私は不幸なんだと1人になった部屋で私は思った。
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「おはようございます、和音様」
「あ、おはよう」
「起きていらっしゃったのですね」
「まぁねー」
あまり眠れなかったのが正解。
「お支度終わりましたらお声をおかけください。今日こそはと龍平様がご朝食をお待ちになっておりますよ」
千景さんは本当に幸せそうに私を促した。
うん、私は不幸なんだけどね。
支度を終わらせると食卓へと案内される。
広いテーブルに龍平はすでに座っていて満面の笑みで出迎えた。
「おはよう、和音ちゃん」
「おはようございます」
「その仏頂面を見ると元気が出てくるよ」
「・・・・・やっぱりMじゃん」
「だからその顔を快楽におぼらせてみたいって思う、Sなんだよ」
朝から何サラッととんでもない発言してるんだ、変態男!
「仲がよろしいですね。龍平様がそんなに嬉しそうにしているの久方ぶりに見た気がします」
いつも嬉しそうにしている奴しか見たことがないし、シリアスモードの奴も見てみたいもんだ。
「和音ちゃんの前だとついね。あ、和音ちゃん今晩の夕飯は先に食べちゃっていいから。少し遅くなるかもしれないから。だけどちゃんと会いに行くからね」
「いいよ、来なくて、うん本当に!」
「遠慮しなくていいんだよ?僕が仕事で疲れてるのに・・・とかそういうのは大丈夫だから★和音ちゃんは別腹だし」
「“別腹”の使い方間違ってると思うし、別にそんな気なんて使ってない。本音です」
「僕の心をえぐるスペシャリストだね」
「そんな風には一切見えないけどね」
昨日の会話のおかげか、少しは言いたいことを言えるようになってきていた。
千景さんはそんな様子を見てくすくすと笑っていたのだった。
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その夜。
奴は本当に仕事があるのか私は千景さんと何人かの使用人とご飯を食べた。
本当は、ご一緒は出来ません!と断られたけど1人の食事なんて今まで経験したことがなくて不安でどうしてもとお願いをしたのだけれど・・・。
あぁ・・・本当にあの日々は戻ってはこないんだよね。
心のどこかで期待してしまう。
これが全部夢で、目が覚めたらお母さんと一緒にご飯を食べて幸せな一日が始まって・・・
ここ数日では朝起きるたびにあいつと言い合いしたり反論したり・・・・
騒がしい一日が始まって・・・
住み初めて3日。
いつになったら慣れるのだろうかー・・・。
時計を見ると11時半。
もうさすがに来ないだろうと私は布団に入り込むと
「ただいま!」
足音すらなく引き戸が開かれた。
まだスーツ姿の龍平が息を切らしていた。
「・・・・うそ」
「約束は守るよ。ごめんね遅くなって」
「いや、別に待ってないって」
「そんなぁー強がらなくてもいいんだよ?」
「決して強がりなどはありませんが」
そう言って私は布団を頭までかぶった。
「まぁそう言わずに。」
奴は布団をめくり上げ、私の上にまたがった。
ま・・・まずい・・・
「レッスンスタートだね」
彼は満面の笑みでスーツを脱いでネクタイを緩めた。