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7.レッスン②


「お風呂はこちらになります」


私の腹は正直でこの状態でも食欲だけはあって、出されるおいしい晩御飯をたらふくたいらげてしまった。

加島龍平は大笑いしていたっけ・・・ムカつく。


「和音様?」

「あ、ごめんなさい!ここがお風呂ね。」

「はい、お着替え等は下着などもございますのでこちらにお運びしませんでした。場所は分かりましたか?」

「んー・・・なんとなく。」

「ではお部屋からまたご案内いたしますね」

「ありがたいです!!」


私は部屋に戻り着替えを持って千景さんと共に風呂場へともう1度向かった。

うん、なんとなく覚えたぞ。

お風呂ぐらいちゃんと覚えないとね・・・!


「では何かありましたらすぐにお呼びください。ただちに駆けつけます。」

「ありがとうね、千景さん」


本当にいい人だなぁ・・・

私はしみじみ思いながらこのだだっぴろい風呂に体を温めた。


家のお風呂より大きい・・・すごーい。

本当にお金持ちっていうのはこういう家でしょ。

まるでお姫様になったような気分になる。



“お姫様”



あいつがたまに私をそう呼ぶのを思い出して、その考えを強制的にシャットダウンした。



あぁ・・・どうしよ・・レッスンって・・・・

今日は何されんの?

もう嫌だ、心臓がもう持たないよ。



ふぅー・・・・あれ・・なんだかボーっとしてきた・・

やばっ、のぼせちゃうよ!でなくちゃ!




急いでお風呂からあがってドライヤーで髪を乾かしていく。

うー・・・なんかボーっとするぅー。

ちょっとのぼせちゃったかな。


少し千鳥足になりながら、私は風呂場を後にした。






***********







「あれ?」



ここどこだ?!


千景さんにいつも来てもらうのも悪いし、もう自分の部屋まで覚えたはずだったのに・・・

のぼせた原因もあったのか知らない部屋の前に来てしまった。


「どーしよー・・・」


仕方ないけど今から千景さんを呼ぶしか選択はないな・・・。

と思った瞬間、後ろからあの声が


「おっと和音ちゃん?お迎え来たの?それとも僕の部屋でレッスンがいい?」


加島龍平!!!


「ち、ちがうよ!えっと、えっとねぇ」

「ふーん。お風呂から出て、少しのぼせちゃって部屋への帰り方が分からなくなって千景さんを呼ぼうとしていたって所かな?」

「!!!!!」

「図星だね。」


顔から湯気が出るかと思うぐらい私は熱かった。

何で私の行動がこの人は分かるの?!

監視カメラでもついてんの、この家!


「監視カメラは言っておくけどついてないよ。僕の勘だよ。」

「何で私の心の声が聞こえるの?!」

「顔に書いてあるんだもん。かわいいなぁ、和音ちゃんは。」


そう言いながら私をそのまま抱き寄せる。

抵抗したいけどのぼせているからか、力が上手く入らない。


「この部屋に来たのは偶然だろうけどね。その偶然は必然となるんだよ。この部屋は僕の部屋。覚えておいてね。」


いえ、絶対忘れます。


「とりあえずレッスンスタート」

「ちょっ・・・!」


昨日とは違い強引に私の唇を奪う。

廊下なのに!誰が来るか分かんないのに!!!


「ん・・・・ふぁ」


角度を変えて何度も何度も唇が重なる。

のぼせているのも重なって私は息ができなくなり立つことも難しくなってきた。


「お・・・っと。大丈夫?本当にのぼせてんのね。ごめんね。まずは水分補給が先だったね」


私の変化にどうしてそんなに気付くんだろう。

キスをされた衝撃よりもそちらの方が気にかかった。


「その目はどういう意味の目?」

「疑ってる目」

「口は相変わらず減らないね」


あんたに言われたくない。

そう言おうと思ったが、私の体が宙に浮き加島龍平の腕によって抱きあげられたので何も言い返せなかった。

抵抗しようと思ったが体力はもう残っていない様だ。

加島龍平は自分の部屋らしき引き戸を開けてその部屋へと足を入れた。



畳の懐かしいにおいが広がる。

部屋にはソファーと大きな机がまず目について、その奥の部屋には布団が敷いてあった。

身の危険はもちろん感じている。

警報が鳴っている。

でも何故か昨日よりは小さくなっている気がする・・・。


ソファーの上に下ろされ、加島龍平は傍にあった冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを私に差し出した。


「はい、どうぞ」

「・・・・・ありがとう」

「お礼言ってくれたの初めてだね」


そんな爽やかな少年みたいな笑顔だって初めて見たよ。

ううん、昨日知り合ったばかりだもの・・・初めてが多いに決まってるのに何を言ってるんだろ。


私は遠慮なく水を飲んでいく。

少しずつ体が冷やされ先ほどよりはずっと体力が回復したようだ。


「顔も赤くなくなってきたね。大丈夫?」

「・・・うん」


加島龍平は私の隣に腰掛ける。


「もっと水いる?」

「今のところは大丈夫」

「そう?」


私が持っていたペットボトルを奪い、躊躇することなく口をつけて水を口に含んでいる。

間接キスじゃん・・・

先ほど直接唇を合わせたばかりなのだけども・・・。

って!!ん?!


私の目の前が奴の顔になって唇が奪われていた。

そして奴の口に含まれていた水が私の口に注がれる。


「ん・・・」


ゴクッと喉が鳴る。

水を飲み干したかと思ったら加島龍平の舌が私の舌に絡みつく。

だんだん深くなる行為に頭がボーっとする。

あれ?もうのぼせてるわけじゃないのに・・・・息が苦しい。


「はぁ・・・・ん・・・」


息継ぎもろくにできないまま行為は続行される。

私の舌、歯を吸いつくように激しく、時折躊躇するように口内で動き回る。

これがキスなの・・・?


「ん・・ん・・」

「その目は?どういう目なの?」


やっと唇が離れて彼は挑発するように私を見ていた。


「・・・あんたなんて大嫌い」

「ほう。面白いね」


間違ってはいないはず・・・今、奴の目が光った気がした。

私の肩を掴み、ソファーに押しつけられる。

その上に奴が覆いかぶさった。


「和音が悪いんだよ?俺を挑発するから。」



!!!!!

この口調の加島龍平はまずい!



「レッスン続行」


言いながらまた私の唇を奪っていく。

怖いのに、怖いはずなのに・・・心のどこかでこの感触がこの行為が気持ち良くなっている自分がいた。

そんな自分が嫌で嫌で仕方ない。

流されていく自分が嫌で仕方ない。

自分で選んだ道だけど、嫌なものは嫌!!!



さっきの目はそういう意味だ、馬鹿野郎。



唇が首に降りてきた。


「ちょ・・・やっ・・」

「お風呂上がりで良いにおい~」


鼻の先や、唇が首筋に当たる。

先ほどよりも体が熱くなるのが分かる。


「やだ・・・・加島・・・龍平・・・やだ・・」

「この場合でもフルネームかよ。さすがだねぇ」


首筋から唇へと戻る。

今度は躊躇なんてない激しいキスの嵐。



「ん・・あ・・・んんっ」



「龍平って呼んで」



「や・・・んっ」



「呼んでくれたら今日のレッスン終了」



こいつは絶対に嘘はつかない。

裏を返せば、そうしなければ終わらないってこと。




「りゅ・・・・へ・・」



「ん?」



「・・・ちょっ・・」



「何?」



私は力を込めて胸板を押す。



「キ・・・キスしながらじゃ呼べないでしょ・・・」

「あぁ、確かにね」

「・・・・・・」

「和音?」

「・・・・・・・龍平」



こんな満面の笑み、ずるい・・・。




彼は・・・龍平は私に1度だけキスをして力いっぱい私を抱きしめた。



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