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6.教室

教室に入ると私はいきなり囲まれる。


「ちょっと、ちょっとーー!!何あれ、どうしたの?」

「今まであんなお手伝いさんとかいたっけ?」

「ね、ね、何かあったの?!」


仲の良い友人たちが押し掛ける。

さすがにあの登校は目立つよね・・・。


「まぁ色々ありまして」

「何?何?ってかめっちゃ機嫌わるそーな顔・・・ただでさえ気が強いのに余計に怖いよ」

「まぁ色々ありまして」

「ねぇ、本当にどうしたの?」


段々心配そうな目で私を見つめてくれる。

言ってもいいものか、いや・・・まだ早いような・・・


「引っ越ししただけ。」

「あのでかい家はどーすんの?」

「さあ?親の考えてることは分からないよ」


興味のないように私は語り続ける。


「たった1日で引っ越しなんて・・金持ちはさすがねぇ」

「・・・・そーでもないよ・・・」


昨日の出来事を思い出すのはまだ辛すぎる。

お父さん、お母さん・・・・。









**********







「ほらほら、お迎えじゃないの~?」

「うーわ・・・本当だ。」

「お嬢様お気をつけて~」

「ちょっとやめてよ。」


この状況だからこそ冗談と受け取れない。

私は肩を落として車へと向かった。




「おかえりなさいませ。どうぞ」

「どうも」


千景さんが笑顔で私を出迎える。


「龍平様、今日はきっと早くおかえりになるでしょうね。楽しみですね」

「私は全然楽しみじゃない」

「まぁそうおっしゃらずに。龍平様はお仕事優先の方です。そのお方が仕事を早く終わらすとまで言い切ったんですよ?もう屋敷中大騒ぎでした。」

「へぇ~」


私は興味がない素振りをしてスモークのかかった窓から風景を眺めていた。

・・・・・そんなに仕事中心の男なのに・・・か・・。


「朝もあんなにラブコールしていらっしゃって・・・。幸せ者ですね」


いや、それには激しく否定します。

私は不幸です!!!


「龍平様はお仕事柄大体は部下か取引先の中ばかりでいらっしゃいますから対等に話される和音様が貴重な存在です。」


千景さんはさっきまでのテンションとは打って変わって声のトーンを低くして話し始めた。


「あんな嬉しそうに話される姿・・・本当に久しぶりにご覧になれました」

「そーなんだ・・・」

「強引な方ですが、絶対に和音様を悲しませるような事はしないと思いますよ」

「・・・・・十分悲しんでるけど?」

「アハハハ。大丈夫ですよ」




・・・・あいつのこと少なからず心配した自分が嫌だ。








***********



「たっだいま!和音ちゃん」


昨日自分の部屋だと言われた部屋で何をしていいか分からずとりあえずテレビを見ていると、ノックもせず引き戸が開かれた。

不幸の音と共に。


「・・・・・・」

「心底嫌そうな目だね。その目が好きなんだ。」


!!!!!

“好き”という言葉に異常に反応してしまう。


「顔赤いよー?はい、ただいまのチュー」

「嫌だ!」


私は手加減もなく加島龍平の胸板を押しのけた。


「つれないなぁーお姫様。まぁご飯食べてからのお楽しみにとっておこうか」

「え・・・?」

「今日のレッスンもお楽しみにね♪」

「い・や・だぁぁぁぁ!!!」


彼は満面の笑みで引き戸の方へ足を運ぶ。


「ご飯出来てるらしいからおいで」


この広い屋敷で1人でどこかに行けるわけもなく・・・・

その言葉に不覚ながらもついていくしかなかった。



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