4.レッスン①
「レッスンスタートだよ」
爽やかに何をこいつは言ってるんだろう!!!
「ふざけんなぁ!勝手にトントン話を進めないで!」
「トントン拍子に話が進むって事は、僕たちが相性がいいって証拠さ~。」
「何を言っても無駄ね、あんたとは」
「あんたじゃなくて、“龍平”。龍ちゃんとかでもいいよ。好きに呼んで」
「加島龍平。」
「フルネームは呼びづらくない?」
私はツンとそっぽを向く。
「まぁ徐々にね。さて始めようか。」
その笑みが嫌だ、嫌だ、嫌だ!!!
身の危険を感じて後ずさりしようとすると左手の自由がきかなくなった。
加島龍平に握られているからだ。
「ちょっ!離してよ!!!」
「まずは手を繋ぐ所から始めましょう」
そう言いながら手をしっかりと握る。
私は逃げ出そうとするけど、いつの間にか右手も握られて腰だけが後ろに下がるだけ。
「アハハ、本当に嫌なんだねぇ~。怖いよその目」
「そう思うなら離しなさいよっ!」
「じゃあステップを進めよう」
「ちょ!・・・やだ!」
口が動いたのか手が動いたのか、はたまた同時なのか私は手を引かれ体ごと加島龍平の胸に押さえつけられ、がっちりと腕で逃げられないように回されていた。
まぁ、所謂・・・抱きしめられている体制になっている。
「どんなに動いても無駄だよ?意外と僕は筋肉あるからね。こういう仕事柄、敵が多くてね。護身術を身につけてるんだよ。自分の身は自分で守らないと」
こっちが全力で抵抗しても平然と話を続けてくる。
こいつ口から産まれてきたんだ!!絶対に!!
「和音ちゃんは大丈夫、僕が守ってあげるから」
その言葉にはさすがに力が抜けた。
どうして出会って数時間のしかも女子高生にそんなことが言えるの?
仮にも加島龍平は若くしてお偉いさんにのし上がったサラブレットでしょう?
どうして私なの?
「やっとおとなしくなった。和音ちゃん着やせするタイプ?意外と胸あるね」
「!!変態!!!!」
「あ、また怒っちゃった?」
ケラケラと笑っているけど絶対に腕の力を緩めようとはしない。
確かに、筋肉はある・・・自分だって着やせするタイプじゃない。
「はぁー本当にかわいいね、和音ちゃん。」
言いながら私の頭に顎を乗せる、加島龍平。
「今日はここまでにしようと思ってたけど、ごめん。もう少しだけステップ進めていい?」
またまた早業で私の顎をぐいっと持ち上げる。
やばい、キスされる!!!
私の本能が察知する。
一生懸命下を向いて抵抗する。
さすがに私の顎の力の方が強いのかこの作戦は効いている様。
・・・・と思ったのは間違いでした。
「ねぇ、和音ちゃんさぁー・・・僕の事Мだと思ってるでしょ?睨まれて嬉しいとか言ってるもんねぇ~。でもね・・俺はねそうやって拒まれて嫌がられて睨まれる女ほど自分のものして腰砕けにしてやりたいって思う極端なSなんだよ。だからそうやって抵抗すればするほど俺は興奮するわけ」
今、“俺”って言った?
さっきまで、“僕”って言ってたよね?ね?!
「だから、その作戦は余計俺を燃え上がらせるだけだ」
そう言われた直後、私は畳の上にいた。
自然すぎて痛みはない。
ただ加島龍平の顔がすぐ近くまできていて、やっと理解する。
私、押し倒されてる。
今までにない力のある瞳に目が離せない。
チュッ
音が鳴りすぐに唇は離された。
触れたか触れないか・・・それが私のファーストキスだった。
「はい、今日はここまで。いきなりは和音ちゃんキツイでしょ?」
加島龍平は忌々しいほど満面の笑みで私を見降ろしている。
「すぐに襲ったりなんてバカなことしないよ。ゆっくり進んでいこうね。」
優しいことを言っているかもしれないが、それはあくまでも普通のカップルでだったら成立する優しさであり、私は全くもって嬉しくない。
「ゆっくりゆっくり僕の色に染め上げてどこにも行かないように鎖でつないであげるからね」
あくまでもご機嫌な様子の目の前の男。
「・・・・・絶対に嫌!!!」
私は思い切り睨んでそう叫んでやった。
男は相変わらずご機嫌で私を眺めていた。