1.不幸の足音
私の名前は、桐沢 和音。
高校2年生の17歳。
至って普通の女子高生。
周りから言わせれば、普通ではないらしい。
家はこの辺随一のお金持ちらしく、まぁ確かに昔から不自由など感じたことない。
むしろ何が自由で自由じゃないのかが区別がつかない。
だからと言って親のこねを使って今まで何かやってきたわけでもないし、自分は自分と割り切っていた。
気が強い性格は誰に似たのか分からないけど、ちょっとしたいじめやら嫌がらせなんて自分でどうにかできる。
そんな普通の幸せな女子高生の私。
・・・・だったはずなの。
今は胸を張って言えるわ。
これが不自由というもので、
これが不幸だっていうことなのね。
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今日もいつもと変わらない何ら変わらない日常。
ただ一つ違ったのは、家の前に知らない車がたくさん並んでいたこと。
私の勘が警報を鳴らす。
危険
危険
危険
危険
危険
危険
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足がすくむ。
きっと家の門をくぐってしまったら私はもう普段の日常に戻れない気がする。
ううん、“気がする”ではない。
確信だ。
逃げてしまえばいい。
でもどこへ?
私は足を門へと運び見慣れたドアノブを汗ばんだ手で引いた。