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ダンジョン守りを初めて三年、異動を促されている。  作者: 未色
第二章 ダンジョン守りと再挑戦
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第33話 素材買取

 三ケ島明。現在は特殊な事情により迷宮庁お抱えのA級冒険者であるがその詳しい生い立ちは本人を含め誰もよくわかっていない。唯一分かっているのは過去起きた『西部第一迷宮』による大災害のただ一人の生き残りということのみ。

 本人に微かに残っている記憶は両親に手を引かれそのダンジョン付近へと立ち寄った際にたまたま被害に巻き込まれて死亡してしまったことだけだ。今では両親がどんな人であってどんな名前だったかもわかっておらず、それにより「三ケ島明」という名前も仮称となっている。


 当時の三ケ島明が再び目を開けたのは国立迷宮総合検査所内のベッドの上であった。周囲にいた人間は目を開けたことに驚いており、本人も自分の体の変わりように当時は戸惑いしかなかった。

 その特異性によりあれよあれよという間に所内で研究がすすめられ、本人の強い希望もあってか冒険者になることになった。全ては自分の過去をすべて奪ったダンジョンに復讐するため。


 しかし『西部第一迷宮』そのもの自体はもう残っていない。だから全国のダンジョンを巡り何かしらの情報を集めるために数年の歳月がかけられて調整がなされた。しかし初陣となった『東部第十五迷宮』では異常発生した騎士型のモンスターに敗れてしまう。

 ただ、幸福なことにすべてのダンジョンを消し去ることのできる力を偶然手に入れた男、咲間康太に出会うことができた。


 両者は動機こそ違うものの、迷宮創造主の計画を打破する、その目的のために動き始めた。



*   *   *


「では、すみませんが先のダンジョンで獲得した核石および素材の方を出していただけますか?」


 俺と三ケ島さんが正式にパーティとなったのち、場所を変えて神田さんにそう促されたためミィエヌエの亜空間からダンジョンで取得した高純度核石と素材を取り出すことになった。 


 現地の検査所で鑑定をしてもらってもよかったのだが、俺が首都圏に住んでいるから何か分かった時に駆けつけやすいのとこっちの方が優秀な鑑定士が多いという理由でここまで持ってきていた。


 取り出した素材を箱型の荷車に乗せているが改めて見ると結構な量がある。途中のモンスターが落とした革や牙、爪など、そしてあの純白の騎士が極稀に落とした鉄塊を積み上げると荷車二台分になった。

 ちなみに森さんは自分が余裕をもって持てる分だけでいいと言っていたので大部分が俺の取り分ということになった。


「普段見かけることのない素材がこんなにも…。あのダンジョンはさぞ強力なモンスターが湧いていたのですね。本当に消し去ってくれて感謝しかありません」

「確かに、本当に弱小ダンジョンかが疑わしいモンスターばかりでしたね…。篠塚さんが苦戦するくらいには」


 素材を眺めながらその場にいた迷宮庁職員さんが喉を鳴らしながら驚いていた。

 『15ダンジョン』ではまず回収されない素材ばかりあるので俺も身じろぎしてしまうほどだ。これでより強力な武器や防具が作れるとなれば冒険者だけでなく様々な人を安心させることができるだろう。


 なかでもケルベロスが落とした爪や牙はその場にあった検査用の鉄を紙みたいにいとも容易く切断していたので相当な切れ味の武器になるだろう。さらには雲のようなモンスターが落とした粉は貴重な薬になる原料なので特にありがたいらしかった。

 それはそこまで大量というわけでもないのに大層感謝されて若干恥ずかしかった。


「これだけでも五百万円はくだらないでしょうね。今はまだ詳しいことは分かりませんが、特に有用性が認められるものが混じっていた場合は七百万円くらいは行くのではないでしょうか」

「え、そんなに…」

「もちろんです。さらにはこの金額に高純度核石の値段も乗ってきます。これなら冒険者を始めるのに不足はないですね」


 職員はさも当然のように言っているが、不足どころか有り余ってしまうくらいだ。今のところ防具の類に関しては特に何も考えていないため使いどころが悩ましいのだ。すぐに使う方法としては引っ越し資金に使うくらいしか思い浮かばないので、冒険者とはそんなにお金がいるものなのかと恐怖を覚えるくらいだった。


 モンスターが落とした素材を出し終わるといよいよ高純度核石を出す番だ。

 こちらは小さいものもあるので荷車一台分だったが、そのさまを見てみると圧巻されてしまう。

 しかし、途中回収した普通の核石と見比べてみると高純度の物の方が若干色がくすんで見えるのが少し疑問だった。


「こっちの方がなんていうか汚い色しているんですね」

「本当ですね。‥‥‥高純度なんでそれだけ中身が詰まっているってことなんですかね。普通の方は上澄みだから透き通って見えるだけ、とか」

「なるほど、確かに」


 やっとの思いですべての素材と核石を出し終わった後、食堂でご飯を食べることになった。

 意外とメニューは豪華で、中には誰がその値段の物を頼むのかと思うような高価なものもあったがなんでも好きなものを食べてもいいと言われたので、ミィエヌエに言われるがままその高価な食事をした。

 サーロインステーキ御膳なんて名前の食堂に似合わないものなので厨房の人も、まさか頼まれると思っていなかったらしくひどく驚いていた。

‥‥‥すみませんね、うちの元女神が。


 ちなみに味は俺からしたら非常においしかったが、ミィエヌエ的にはまぁまぁとのこと。せっかく一番高いの奢ってもらったのに。


*   *   *


「——素材の買取価格が出ました。…八百五十万円です」

「はい…??」


 ご飯を食べた後再び会議室に戻るとそう宣告された。

 あまりの金額に呆けることしかできなかったが、あたりにいる人の反応を見る限りさして莫大な金額ではないらしかった。話によるとSS級の冒険者が取ってくる素材は一つで五百万円を超えるものもあるのだとか。


 上澄みの冒険者ってどんだけ稼いでんだ…?


「高純度核石、ならびに普通の核石の査定はもうしばらくお待ちください。それぞれ比較検討を進めていますので」

「はい、それはもう…」


 一気に八百万もの大金を得てしまうと、後に控えている核石の値段が怖くて何も言う気になれなくなってしまった。思わず雲隠れしないと狙われるのではないかという思いも沸いてしまうほどには…。


「では、今日一日ありがとうございました。もしどこかしらのダンジョンに今後異変が現れた際にはご連絡しても大丈夫ですか?」

「はい。三ケ島さんも大丈夫ですか?」

「もちろん大丈夫です」


 神田さん曰く流石にすぐどこかのダンジョンに潜るというわけではなかったので俺は検査所を後にした。三ケ島さんはここに住んでいるので入り口まで会話しながら送ってくれた。


*   *   *


 駅についてから帰りの電車を待っているときにとある広告が目に入った。


「…あ~引っ越しかぁ。せっかくまとまった金が入ったわけだし明日にでも不動産屋行ってみるか。今のとこじゃここまでアクセス悪いしな」

「あら、別の場所に住むのかしら。私は広い部屋がいいわもちろん」

「なんでお前に個別の部屋が与えられると思ってるんだ。俺に寝室があるのはいいけどお前はリビングででも寝ろよ」

「…誰のおかげであの大量の素材を持ち帰られたと思っているのかしら?」

「‥‥‥やっぱ時代は一人一部屋だよな」


 ミィエヌエがこういうところだけ目ざといのは何なんだ全く。


 心の中でため息を吐きつつ到着した電車に乗り込もうとすると、下りてくる乗客の中に一際目を引く紫色の髪の人がいた。それもほとんど原色に近い真紫だ。


 都会には珍しい髪色の人がいるんだなぁ、とか田舎者心を全開にしているとその人が俺の横を通り過ぎる際に何かを言ったのに気が付いた。


「へぇ、珍しい種族を‥‥‥」

「…え?」


 その、明らかに俺に向けて言われた言葉に驚きつつその人が歩いたほうに目を向けるともうその人は人混みに紛れてしまっていて探すことは叶わなかった。絶対に頭上のミィエヌエに向かって言ったと思われるが何が言いたかったのだろうか。


「なに、どうしたのよ、早く乗りなさい」

「え、でも今」

「…?」


 ミィエヌエには聞こえていなかったのか、何をしているのかとつつかれてしまった。

 俺にだけ何かを伝えたかったのか、と釈然としない気持ちのまま俺は電車に乗り込んだ。

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