表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン守りを初めて三年、異動を促されている。  作者: 未色
第一章 ダンジョン守りと異動案内
32/33

閑話 ダンジョン守りの一日(終)

 ヴェストが去った後、俺は呆けている二人を何とかたたき起こしてダンジョンの外へ出た。もうアイツの管理下からは抜けたせいなのか外との時間ずれはなくなっており二日ぶりの地上だった。

 その後すぐに二十五層へと戻って基点の石碑を壊すと一瞬の光の後に俺たちはまた『渋谷ダンジョン』で見たリミナルスペースのような場所に転移していた。

 驚いている二人にどんな場所なのかを説明し、他言しないように強くお願いして辺りに散らばっている高純度核石を入手してから検査所へと戻った。


 今回のダンジョンではあの巨大泥人形のようなモンスターは出現せずに、俺たちが外に出た後気が付くとダンジョンは綺麗に消え去ってしまっていた。必ずしもミィエヌエに『迷宮の心部』と言われていたようなモンスターは出現するわけではないのだろうか。


「——さて、お疲れさまでした。迷宮調査だけでなくまさかそのものを消去されるとは。流石は咲間さんですね」

「いえいえ、俺だけの手柄ではないので」


 検査所の現地職員に中での出来事などを伝えると、ニコニコした顔でそう言われてしまった。別に完全に俺一人で成し遂げたわけじゃないのでむず痒い。特に途中現れた巨大な樹木型モンスターは森さんの魔法がないと突破できなかったし。

 でもそんな謙遜も篠塚さんには鼻で笑われてしまった。


「はっ、よく言うぜ。俺たちが何にもできなかったヴェストとかいう天使? 男神?    を追っ払った上にダンジョン解体もしたのによ。なぁ?」

「ええ。途中のモンスターの事を考慮しても今回の手柄は明確に咲間さんのものですね。…意地悪な言い方にはなりますがあまり謙遜ばかりしていると嫌味にとられてしまいますよ?」

「うっ…そんなつもりは」


 森さんの冷ややかな視線を浴びながらさらに委縮してしまう。別に下心とかあったわけじゃないんだけどな…。


「‥‥‥それで、咲間さん。さきほど仰った冒険者へ戻るというお話は本当でしょうか?」


 縮こまっているとパソコンに表示されている神田さんにそう問われた。

 現地職員にその話を伝えたところ急いでリモート会議を行う形になったのだ。神田さんの背後には佐藤さんの姿も見える。


「はい、本当です。今日ヴェストと対峙しましてこのままゆるゆるとダンジョン守り業務を続けているだけではどうにもならないなぁ、という気持ちが固まりまして。篠塚さんにも歳食ったら冒険者になるのは無理だと言われていたのもあるので…」

「篠塚お前……。すみません、きつく言っておきますので。では今後は迷宮探査、解体を主軸として行っていただくという形で?」

「はい。解体を毎回行えるかはわかりませんができるだけそうしようと…。あ、でもそうすると産業的に大丈夫なんですか? 核石取れなくなっちゃいますよね?」


 もし仮にすべてのダンジョンを消去、そうでなくてもダンジョンの創造主なるものを討伐してしまえば核石を使えなくなってしまい産業が衰退してしまう可能性がある。それに冒険者という職もなくなってしまうので失業者があふれかえってしまう可能性もあるのだ。

 そんなことになってしまえば俺は当事者として世界中からのあらゆる恨みを買ってしまうのではないかと今さらながらに気が付いてしまった。


「咲間さんのご懸念はもちろん承知しています。ですがお話しいただいたダンジョン創造主なるものが人間を利用してダンジョンそのものを消去しようとしている以上結果は変わりません。創造主側のいいようにさせていては人間が受ける被害がさらに拡大してしまうでしょう。『渋谷ダンジョン』はたまたま全員生還したものの全世界的に『西部第一迷宮』のような事故が発生し冒険者だけでなく民間人まで被害を被る可能性がある以上それを阻止しなければなりません。世界中の人間の命とダンジョン産物での利益を天秤にかければそれは前者に傾きますから」

「なるほど。確かにヴェストやミィエヌエが言う創造主のプランだと世界が更地になってもおかしくないですからね…」


 迷宮庁側ももちろん俺の疑問については考えているようだが、どちらにせよ、という考えらしい。遅かれ早かれダンジョンを消滅させるのなら余計な被害が出ない方を採用するのは当然か。


 神田さん曰くダンジョンが出現して十年でエネルギー問題は解決してきているがそれに見合う代償も以前よりも跳ね上がっているし、ダンジョンのせいでこれ以上人間が大幅に減ってしまうのは見過ごせないという話が世界中でも起こっているらしかった。核石などを手放すことになるのは惜しいがダンジョン閉鎖の議論は各地で巻き起こっているらしいし、安全に閉鎖できるのならそっちの方がいいのだとか。


「遅かれ早かれ咲間さんの語ったダンジョン創造主の話は世間に出ると思います。ここまで世界に根付いてしまった以上反発が起こるのは当然だとは思いますが、こちらとしましてはしっかり咲間さんのことをお守りするようには致しますのでご安心ください。なにも咲間さんお一人にダンジョンを解体させるようにするとは考えていませんので、そこは焦らずにご自身のペースでも大丈夫です」

「あ、それならよかったです。意気込んでしまった手前申し訳ないのですが世界中全てのダンジョンをめぐるなんてそんなことできないと思っていたので…。もしかしたら俺みたいに、神側の精神感応が全く関係ないもっと強力な冒険者もいるかもしれないですしね」


 今回潜ったダンジョンと『渋谷ダンジョン』が特殊だっただけでどこかにはダンジョン創造主の息のかかっていない野良のダンジョンも存在しているかもしれない。そうじゃなくてもすべてのダンジョンで人を引き込んでいるわけではないっぽいので、そこではこれからも安全に資源を取り出すことができるだろう。


 どれほどかは分からないが、創造主は多くのダンジョンで人間をほとんど生贄にするような形を取ってダンジョン消去を望んでいるのだろう。だがダンジョンを消すのなら、ダンジョンが存在していなかった十年前に戻すくらいしてもらわなければこちらがあまりに割を食いすぎている。それが責任者の務めってもんだろう、誰もがそう思っているに違いない。


「では咲間さんが冒険者に戻ることは承知しました。お勤め先にこちらから直接そう言うこともできますが、いかがいたしますか? 一民間企業に干渉するのはあまりいい手だとは思えませんが、ことがことなので迅速な手続きを行う必要がありますからね」

「退職周りの事を色々やっていただけるってことですか…?」

「さすがに正式な退職手続き等々は咲間さん自身に行っていただくことにはなりますので、すぐに冒険者になっていただくようにするくらいはですけど」

「そ、そうですよね。でもありがたいです。お願いします。…あ、でも空いた『15ダンジョン』ダンジョン守り業務はどうしましょうか」

「そこは今、臨時で入っていただいている元『渋谷ダンジョン』のダンジョン守りの方が正式に引き継ぐ形になりますね」


 そうか、あの人もとはめっちゃ忙しい所にいたから大丈夫か。絶対的にこれまでよりも暇な勤務地だしあんまり引き継ぐこともなさそうだ。ただ、勤務地が田舎に決定しちゃうのは少し申し訳ないから良いサボり方くらいは教えて差し上げなければ。


 密かにあまりかかわりのないダンジョン守りを堕落の道に誘い込む意気込みをしていると神田さんが再び思いついたように喋り始めた。


「‥‥ところで、冒険者になる際は誰とパーティを組むおつもりですか? お話だとその剣では初見のモンスターを討伐しきれないとお聞きしていますが」

「それは、三ケ島さんにお願いします。そういう話を本人としましたので」

「なるほど、それはよかったです。……それとですね、先ほどそちらに持ち帰っていただいた高純度核石についてなのですが、これから正式な調査を行うのではっきりとしたことは言えませんが有用性が認められ次第の換金となると思います」

「あぁ、そのことですか。それはまあいつでもいいですよ。ほんとに高純度なのかもわかりませんし、実は使えないかもしれないですからね。ミィエヌエの言っていたことが本当かもわかりませんし」

「本当に決まっているでしょ!!」


 そんな感じに話は終わり、今日は検査所で寝泊まりをすることとなった。ただ、一応日程としてあと三日ほど暇になってしまったので明日俺は東北の土地を観光してそのまま帰ることにした。交通費とさらに別のホテルでの宿泊費まで出していただけるとのことなのでそれにありがたく乗らせてもらう形だ。


 東京に戻ったら、職場へのあいさつと業務の引継ぎ、さらには三ケ島さんとのお話があるので忙しくなることは確定しているので精一杯ゆっくりと満喫させてもらう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ