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ダンジョン守りを初めて三年、異動を促されている。  作者: 未色
第一章 ダンジョン守りと異動案内
26/31

第26話 ダンジョン守りの遠征調査①

 初めて降り立った東北の地は思っていた以上に寒かった。東京も夏は過ぎ去り涼しくなってきたがここは最早肌寒いの域だ。


「うぉ、寒いな。コート持ってきててよかったぁ」

「あら? 私の着るものは?」

「ないけど。別に寒くても平気じゃない? 元女神なんだし」


 今日は荷物をこの地域にある検査所に置いたらすぐにダンジョンへと潜るらしい。一緒に来た篠塚さんと森さんと共に現地の迷宮庁職員が運転する車へと乗り込み、一旦は検査所へと向かった。

 途中まで何が不満なのか、ミィエヌエがキーキーうるさかった。


 車を走らせること約三十分、ようやく目的の検査所についた。東京にあるものと比べ背の低い建物だが、土地の値段が東京に比べ安い分横に広い造りをしていた。

 ここは宿泊所も兼任しているそうでこちらにいる間はここに泊まることになるのだそう。


 さっそく荷物を預けて家に置きっぱなしにしていたドリスを呼び出す。流石に新幹線乗れないからね。


「置いていって悪かったな。拗ねないでくれよ?」

「あれ、咲間さん。その剣ってそんなグリップみたいなもの着けてましたっけ?」


 さっそく森さんが柄に巻き付けてある黒紐の事を指さして問うてきた。流石に最初に鑑定した人だけあってよく覚えているな。


「あ~、なんか『15ダンジョン』で拾いまして。そして不思議なことに巻き付いちゃいまして」

「へぇ...なにか変わることはあるんですか?」

「いえ、それが今のところ何も。カイロみたいにちょっと暖かいくらいでしょうか」


 そういうと少し興味を持ったようにジロジロ見てきたが、特に鑑定することもないかという風に顔を逸らしてしまった。ごめんね、有力な情報じゃなくて。


 再び車に乗り込みそこからさらに十分ほどかけて目的のダンジョンへと到着した。森の入り口辺りに洞窟のような、あきらかに異質な様相をしているダンジョン入り口だった。


「さて、ここが目的のダンジョンだ。咲間、この時点で感じることは?」

「ん~、いえ特にはないですね。ドリスとミィエヌエは何か感じるか?」

「私の方は今の段階では何とも。ドリスちゃんもなにも言わないわね」

「…」

 

 ミィエヌエは元女神的な感覚で何か感じ取っているかと思ったがそんなことないらしかった。ドリスは新しい場所なのにうんともすんとも言わずに押し黙ったままだ。


「そうか。ま、今なんかわかってもしゃあないわな。さっそく入るか」


 その一言で俺たち三人はダンジョン内へと足を進めた。ここのダンジョン守りは退避しているのか事務所的な所には誰もおらず、一時閉鎖中の看板が置いてあった。


 中に一歩入ると外よりも寒く、自然と柄を握りしめる力が強くなった。…よかった黒紐が暖かくて。

 そのままダンジョン内を進み、序盤のモンスターは篠塚さんが一瞬で倒していく。

 そして、ある程度進むと目の前には上り階段が現れた。


「あれ、このダンジョンは上に伸びている形なんですか?」

「あぁ。上に五十階層だ。上に五十階分昇るのはなかなか骨が折れるからあんまり人が寄り付かねぇんだと」

「うへぇ、俺そんなに足腰強くないですよ?」

「だから森を連れてきたんだ。頼むぞ」

「はいはい」


 篠塚さんの雑な頼みをさもいつものやり取りのように森さんは持っていた杖を振った。その瞬間光の粒子みたいなものが一瞬散り、足が軽くなった。


「おぉ、これが魔法...助かります!」

「お安い御用ですよこのくらい。でもずっと持続するわけじゃないから効果切れたと思ったらその都度言ってください」

「はい、ありがとうございます!」


 二階層もこれまでと同じペースで昇り、適度に休憩をはさみながら十階層までたどり着いた。

 この辺になってくるとある程度モンスターが強くなってきたので俺と森さんも攻撃に加わり始めた。俺の場合はドリスの指示を聞くしかできないため倒し切れていないモンスターを二人に任せることになるので少々申し訳なかった。


 また、十階層を越えるとどのモンスターも『15ダンジョン』では見かけないものばかりとなってきており巨大なカマキリ型のモンスターや雲のような実態があるのかないのか分からないモンスターまで現れた。しかし、流石A級冒険者と言ったところか二人はそれらに全く臆することはなくほとんど瞬殺のような形で討伐していった。


「雲みたいなモンスターが落とすこれ、なんなんですか? 粉?」

「あ~、それな。回復薬とかいろんな薬の原料になるらしいから拾っておいた方がいいぞ。供給が少ないから結構いい価値が付くみたいだぞ」

「へぇ~。あ、確かに全部の雲が落とすわけじゃないんですね。てっきり雲だから綿菓子みたいに砂糖でも落としたのかと思っちゃいました」

「‥‥‥咲間さんってよくも悪くも緊張感がないですよね。だてに三年間ほとんど毎日ダンジョンに関わり続けてきただけはありますね」

「ほ、褒められているんですかね? ありがとうございます…?」


 階層が上がるにつれて見慣れないモンスターが増えていくので新しい発見がありそのたびにワクワクしてしまう。一応調査という目的のために来ているんだから気を引き締めなくちゃいけないんだけど、どうしても好奇心が勝ってしまうな。


 ドリスの方も初めて切るモンスターこそ指定箇所がバラバラだったが、一度倒してしまえばそれ以降同じモンスターには同じ個所への攻撃を指定してきた。まぁ、モンスターを吸収するためにそのたび足を止めてしまうので申し訳なかったけど。


 そんな感じで安定した戦力でサクサクと二十五階層までやってきた。まだ、あと半分も昇らないといけないのか…。

 そこで徐に篠塚さんが足を止めた。


「前回俺が撤退したのはこの先の階層だ。モンスターどもの種類としては今まで出てきたモノもいるが、なんせ俺の先手必勝の攻撃が通じづらくなってくる。気を引き締めろよ」

「はい……いっつ」


 咲間さんの忠告を心に刻み前を向こうと思っていた矢先、ずっと頭上にいたミィエヌエに髪を引っ張られた。

 いきなり出鼻くじかれたんだけど、なに。


「な、なにすんだよいきなり」

「ねぇ、あれ見て」


 いやに真剣な声に少々驚いたが、ミィエヌエが指定した方向を三人で向いた。


 俺はそれを目にした瞬間、急激に背筋が冷たくなるのを感じた。何かは分からないが、というか悪いものではないはずなのに本能的に恐怖を感じてしまう。

 そこには、たまに道にあるような小さな丸みを帯びた石碑のようなものが祀られるようにしておいてあった。なんでこんなところに石碑が。

 


「うわ、よく見つけたなお前。誰かが安全祈願に置いていったのか? いやでもこんなとこまでわざわざ持ってこないよな誰も。篠塚さん何か心当たりは?」

「…いや、ねぇ。前来た時は、見つけられなかったのか、なかったのか」


 皆で改めてその石碑に近づいて見ると、何やら文字が書かれてあった。そこには漢字のようだけど漢字じゃない、無理やり漢字同士をくっつけたような文字が彫られてあった。まるでAIで出力されたような文字だ。


「うわ、気持ち悪いですねなんか。幽霊とかとはまた別種の異様さというか」

「はい、私も思いました。まさかダンジョン内でこんなものが生成されているなんて」

「…でも石、だよな。適当に壊すわけにもいかねぇしとりあえず放っておいて後で報告だけするか」


 俺と森さんはその場をさっさと離れたい一心ですぐにその石碑のようなものから目を逸らした。ただ、なんとなく頭上のミィエヌエの重心がその石碑の方向へと残り続けているような気がする。


「どうした、ミィエヌエ。なにか分かるのか」

「‥‥‥いえ。もう少しで何か思い出せそうな気がするのだけど。ま、今考えても仕方ないわ」

「…? まぁ、なんかわかったら言ってくれ」


 石碑の場所を離れ、二十五層中心部まで進む。そして二十五層初のモンスターである牛の頭に人間の体を持つ牛人種(ミノタウロス)が現れた。

 その体はどこで着けたのかは分からないが大小さまざまな傷ができており歴戦の戦士のような風格を醸し出している。そしてその体は筋骨隆々なので威圧感がすごい。


「——ブゥゥモォオオ!!」


 牛人種(ミノタウロス)がこちらを威嚇するように吠えた。

 その瞬間には篠塚さんが急加速してそちらに迫っていく。一瞬の衝撃音と火花を走らせて両者が再び距離をとった。……肉と鎧がぶつかって火花ってどういうこと?


「いやぁ、かってぇな。まさかこの階層ですでに俺についてこれるのが現れるとは思ってなかった。そんなのんびりしてる暇ねぇぞ多分。咲間、あわせろよ」

「は、はい!」


 森さんに先ほどよりも少し効果が高い補助魔法をかけてもらい、篠塚さんが飛び出していった後を追う。そして両者が打ち合い牛人種(ミノタウロス)がよろけた瞬間に剣を構えた。


「…クビ」

「——っ! おらっ!」


 体勢が崩れた牛人種(ミノタウロス)は満足に防御をとることができずに易々とドリスの刃を首元に許してしまう。そしてそのままなんの抵抗もないままに牛の頭と人間の胴体が切り離された。


 その断面から血とも油ともとれるほぼ黒に近い粘性の高い液体を吹き上げながら牛人種(ミノタウロス)は膝を着いた。


 それがかかるのが嫌で咄嗟に身を引き、何とか液体を全身にかぶるのを回避した。靴にちょっとかかったけど。


「ふぅ、お疲れ。まさか一撃で切り捨てるとはな」

「はい、お疲れさまでした。俺もまさか初撃で首を狙うように言われるって思ってなくてビックリしました」

 

 その言葉に合わせドリスを見るとやはり牛人種(ミノタウロス)の方を指さしていた。

 その指示に従い特に何も言わず、死体の付近でなるべく液体がない場所へと剣を突きさすと、地面に広がっていた液体共々一瞬で地面に沈んでいき、再び剣だけが出現した。


「完全勝利ですね。核石も落ちていますし。あ、これでおそらく牛人種(ミノタウロス)は今のやり方で一撃で倒せますよ」


 核石を拾い上げつつ、なんでもないように言うと、森さんと顔が見えないはずの篠塚さんは若干引いているように感じた。


「ど、どうかされましたか…?」

「いや、なんというか。割と強者倒したはずなのにあっさりしすぎだなぁというか」

「あぁ。咲間、モンスターよりモンスターに見えるぞ」


 あれ?! 二人に貢献できるように頑張っているはずなんだけどな!?

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