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ダンジョン守りを初めて三年、異動を促されている。  作者: 未色
第一章 ダンジョン守りと異動案内
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第17話 ダンジョン守りの冒険④

 女神の首を切り落とすのと同時に残っていた二匹の天使たちも同時に消滅した。天使が綺麗に消滅したので女神も瞬時に消滅するのかと思われたがこちらはモンスターと同様の消滅の仕方をするようだ。


「咲間さん! やりましたね! まさかお一人で倒し切ってしまうとは」

「こう言っては失礼かもですが、僕も加勢しようと思ってたのに...」

「いえ、俺もまさかここまできれいに勝てるとは思いもしませんでした」


 地面に転がった女神モンスターの残骸を未だ警戒を解かずに俺たちは勝利を分かち合った。


 女神が登場した時の威圧感が常に脳裏にあったので俺自身まさかこんなにあっさり勝てるとは思っていなかったし時間稼ぎにしかならないと思っていた。しかし、ドリスの手助けといつも『15ダンジョン』でモンスターを狩りまくっていた経験が生きて無傷で倒すことができた。


「ありがとな、ドリス」

「…」


 隣のドリスの方を向くと、やはり倒れている女神の残骸に向かい指をさしていた。すぐに消滅しなかったからもしかして、と思っていたがコイツも剣と一緒に溶けて再出現するらしい。

 知性が高かった相手だけあって今回はおずおずと言った感じで胴体の横に剣を置くと、これまた瞬時に一緒に溶けてなくなり剣だけ再出現した。


「この一連の動作、毎回やるけど何なの。いい加減教えてくれませんかねぇ、さっきあんなに喋ってたじゃん」

「咲間さん、それさっきもずっとやってましたけどなにしてるんですか?」

「いやぁ、それが俺にもさっぱり。ドリスに聞いても答えてくれなくて…」


 沖田さんも俺の動作を疑問に思い続けていたようで、ようやく聞いてきた。とはいえ俺自身がちんぷんかんぷんなのでこれまた何もお答えできない。

…疑うような目を向けられてるけど、本当だからね?


「…なんで首だけ残っているんでしょうか」

「あ、そういえばたしかに」


 女神モンスターの胴体は消えたのに、なぜだか切り離した頭の部分だけが残っていることを斎藤さんが指摘してきた。生首だけが落ちている絵面がひどすぎるので早く消えてなくなってほしい。


 そう思っていると、その辺に散らばっていた女神の羽根が一斉に急に動きだして生首へと集まっていく。俺たちが呆気にとられていると弓使いさんが瞬時に弓を構える。


「油断するなお前たち! そいつまだなにしてくるかわかんねぇぞ!」


 三人とも肩を震わしてその生首へと向かい、武器を構える。何が起きるかわからないため固唾を飲んでいると、羽根が集まりきった生首は煙を上げてその中で何かが立ち上がった。


 もしかして復活したのか?! と一同思っていると煙の中から何やらかわいらしい声が。


「まて! 馬鹿人間ども!!」

「…なに?」

「私にはもう戦う力は残っていない! 武器を下ろせ!」


 その煙の中から、二頭身のマスコット大になった先ほどの女神が現れた。気のせいかもしれないが、顔も若干デフォルメされている気がする。


「ほんとになに…?」

「ま、まぁ驚くのも無理はないわ。私自身も驚いているわ」

「やっぱり生きていやがったか! やれ!」


 弓使いさんが先陣を切り、矢を放とうとした。


 しかし、その瞬間隣から再び「ちがう」との声が。


「待ってください!」


 慌ててその武器を下げるようにお願いし、何とか矛を収めてもらう。

 冒険者の危機察知を信じた方がいいのは重々承知しているが、あれだけ簡単に女神を倒すことができたドリスの言った方を信じたほうがいいのはここまでの生活をしてきて身に染みている。


「なんだ、取り逃がすのか?」

「いえ、そうではなく。ドリスが…」

「ドリス? なんだそれ、お前さんがさっきから変な場所に向かって話しかけてるやつか?」

「はい...後々説明はしますが、今はちょっと」

「…そういうんなら、お前さんが後始末はつけろよ。俺はいったん残りのまだ呆けてるやつらを叩き起こしてくる」


 そういい弓使いさんは背を向けて他の冒険者の方へ。

 あ、あの人の名前聞いとけばよかったな。


「よくやった、ドリスとその使い手。褒美をやろう」

「いや、あの。そんなことは今どうでもいいから。なんでそんな姿に…?」

「そうか。これに関しては私も分からん。そこのドリスに体が吸い込まれて意識が落ちる寸前、気付いたらこうなっていたのよ。こんな姿じゃあなたたちの事を殺すこともできないわ。どうしてくれるの?」


 すさまじいほどの逆恨みだった。迷い込んだ冒険者を片っ端から放心状態にして百人以上を行方不明者扱いさせたやつの言葉には到底思えない。

 隣の沖田さんと斎藤さんも、ヤッちゃう? みたいな顔をしている。そりゃそうなるわな。


「どうもこうも、あんたがあの人たちをあの状態にしたのが悪いだろ。神は祈らされるもんじゃねぇの。そんなのも知らねぇのか…まて、今お前ドリスに吸い込まれるって言ったか?」

「ええ、言ったわ。それが何か? …あ、もしかしてその反応、何も知らないわけ」

「逆に何を知っているんだお前は。というかドリス、今までモンスター吸収してきたってこと?」

「…」

「いや、答えろよ…答えてくれよ。なんか急に怖くなってきた。やっぱ呪物じゃねえかこれ」

「うふっ...あっはっは! 滑稽ね。これだから人間って...。まぁ、とはいえそれが魔物どもを呑み込んでいることしか私も知らないわ。それが何の目的があってそんなことをしているのかは知らない。というか、ドリスちゃんってそんな恰好だったのね」


 やはり聞きたいことは山ほど出てくるが、こいついまドリスが見えてるみたいな言い方してなかったか? もしかして俺以外に見えるやつがいるのか。


「おい、もしかして、ここにいるドリスの事見えてるのか? いや、というか最初っからドリスって呼んでたよな…? もしかしてその時から見えて?」

「最初、というのが初めて相対した時ならノーよ。その剣がドリス、ということは知っていたけれどまさかそんなフードを深く被った子供なんてね。…あぁ、呑み込まれたから見えるようになったのかしらね」

「…ってことは俺も?」

「…チガウ」

「違うらしいわね。よかったじゃない。まぁ、そんなことはどうでもいいわ。あぁ、それで、あなたたちどうやって外に出る気かしら?」


 確かに。そう言われて皆あたりを見回すが先ほどこの女神が出したゲートはとっくに消えていた。


「お前、もしかして最初から帰す気なんてなかったのか?」

「…そう、と言いたいけれどこの場所にとどまり続けられるのは厄介よ。特にドリスちゃんはね。そう睨まなくても帰してあげるわ、全員ね」

「なんか、やけに往生際がいいな」

「これ以上みっともない醜態をさらすのはうんざりなのよ、言わせないで。でも、条件があるわ」


 このマスコット、この期に及んで条件とか言い出しやがった。どっからどう見ても条件切りだせる姿と状況じゃないだろ。

 隣ではやはり二人が、ヤッちゃう? みたいな顔をして武器を握りしめている。なんでそんなに血の気多いの? あなたたち。


 少し離れたところでは続々と冒険者たちが起き上がっている。どれくらいあの状態だったかは分からないけれど、早急に返してあげないとまずい気がする。腰が痛そうな人がいたり、お腹を押さえている人がいたり。それぞれ何かしらの症状が出ているみたいなので、俺が決めないといけないのか。


「…ドリス、どう思う」


 決めるに決めきれないのでここでもやはり、ドリスに頼ることに。喋りはしないが俺よりはいい決断をしてくれるだろう。


「…ン」

「いい、のか。条件飲んでも」

「ほら、ドリスちゃんもいいって言ってるじゃない。条件は一つよ。あなた、私を連れて行きなさい。そうしたら皆綺麗な状態で戻してあげる」

「…連れてって、お前は何をする気だ?」

「別に、特に考えてないわよ。ただこんな空間よりも外の方がいいと思っているだけ。どうせ、帰るためのゲート開いたら戦える力なんてなくなるわ」

「あ、意外と場所に愛情ない系女神…じゃなくて外に?!」

「さ、咲間さん、やめときましょう! 叩いてゲートだけ出させましょう!」

「そうです! 半殺しくらいにすれば出すでしょ!」

「…あなたたち、人間として恥ずかしくないかしら?」


 女神の出してきた条件には驚いたが、そのあとの二人の言動の方がやばくてドン引きしてしまった。女神もドン引きしているし心なしかドリスも引いているように感じる。

 もしかして、冒険者って俺が思っている以上にやばい人たちの集まりなのか? 


「お~い、話まとまったのか~?」


 どうしようかと逡巡していると弓使いさんから掛け声がかかった。どうやら大半の冒険者が目覚めてたようだ。しかし何人かは目が覚めていないらしく担がれていた。


「どうするのかしら、悪い条件じゃないはずよ。今ならこんなに美しい私が付いてくるわ。一体一石何鳥になるのかしらね」

「いちいち鼻につくな、こいつ…。さっき言ったこと本当だろうな。外で何もしないか?」

「えぇ、もちろん。というかできないわ。自分でいうのもおかしいけれど、神に誓ったっていいわ」

「自称神に言われちゃあわけないわ...分かった、連れていく。ただし少しでも変な動きしたら容赦なく殺すからな」

「本気ですか?! こんな危険なヤツ外に出すなんて、迷宮庁、いや世界からなんて言われるか」

「ごもっともだと思います...でも皆さんが安全に変える手段がない以上こうするしかないです…」


 ここで悩み続けていてもこれ以上の策はないだろう。

 二人は講義しているが一ダンジョン守りとしても、冒険者の皆さんを安全に外に出せるならそうするしかない。

 もうドリスという厄ネタを抱えている以上、どうにでもなれ根性だ。


 女神は俺の言葉に頷き、俺の頭の上に座す。重さをほとんど感じないのが幸いだった。

 そのまま女神は何でもない様に光り輝くゲートを作り出し、まずは俺がくぐる。


 するとそこは俺たちが最初に転移した、リミナルスペースのような空間だった。


「…おい、場所がちがうじゃねぇか」

「ちょっとした意地悪よ。他の人間どもは地上に帰っているから安心しなさい。その石ころ、あなたたち人間は必要なんでしょう? 拾っていきなさいな。散らばっているな、とは前々から思っていたのよ」

「この場所も管理下なのか…?」

「まぁ、人間どもを誘い出すには持ってこいでしょ? でももう必要ないわ。あとここからの帰り道ならドリスちゃんももうわかるでしょ」

「なら、さっきみたいにゲート出して帰してくれよ」


 何が意地悪だ。他の人よりもひと手間増えたじゃねえか。しかもこんな量の核石一人じゃ持ちきれねぇし。今日持ってきてんのエコバッグとトートバッグしかないんだぞこっちは。


「言ったじゃない、もうあのゲート出すしか力残ってないって。もう無理よ、金輪際使えないわ」

「…もうホントにマスコットじゃねえか」


 めんどくさい女神の意地悪によってせっせと核石をカバンいっぱいに詰めて、子供に帰り道を案内してもらう二十五歳男の姿がそこにはあった。


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