「我が家のガラクタ」と言われた私は、ガラクタの声を聴けるようになり、国の救世主になる
「レシーナ、お前は我が家のガラクタだ!」
父からはしょっちゅうこう言われた。
父だけではない。私は末っ子で、母からも兄からも姉からも、みんなからバカにされてきた。
「これほど優れた主人と私から、なんであなたみたいなのが生まれてきたのかしら!」
「ルスト家の恥さらしが!」
「あんたと同じ血が流れてると思うとムシズが走るわ!」
言われてしまうのも無理はない。
兄や姉はみんな艶のある茶髪なのに、私の髪色は泥水のよう。瞳の色もくすんだ焦げ茶色で、体つきも貧相だ。
そしてなにより、私は魔道具を扱うのがあまりにも下手だった。
魔道具とは魔力石を組み込んだ道具のことで、人が魔力を注入することで石と反応が起こり、その性能を発揮する。今や生活になくてはならないものになっている。その種類は実に多種多様だ。
火をつけるライター、明かりを灯すランプ、素早く答えを出す計算機、ごみを吸い込む掃除機、食べ物の保存に役立つ冷蔵庫、タイヤのついた車……。自動で動く人形のようなオモチャもある。
ただし、魔道具の性能をどこまで引き出せるかは使い手の技量に左右される。
ライター一つとっても、使う人によっては小さな火しか出せず、魔力注入に長けた人であればかなり大きな炎も出せる。ランプや計算機も、その性能は大きく個人差が出る。
特に貴族の世界では、魔道具を上手に扱えることはステイタスになる。
ルスト家は伯爵家で、代々魔道具の扱いには長けた血筋なのだけど、私は例外ともいえるほどに魔道具の扱いが下手だった。
いくら練習しても上手くいかない。
こんな私は家族から愛想を尽かされる。
食事のランクは露骨に下げられ、新しい服も買ってもらえず、一般的に社交デビューの年齢になる14歳になっても、私はデビュタントの機会さえ与えられなかった。
父は汚らわしい物を見るような目で言う。
「お前のようなガラクタを社交界に出したら我が家の汚点になってしまうからな」
そう、私は一家のお荷物――ですらないガラクタ。
私はガラクタなんだ……。
***
こんな私にも一つだけ楽しみがあった。
それは一人で出かけること。
王国には魔道具の廃棄場がある。
魔道具は寿命が来たら当然使えなくなるんだけど、従来のごみ等と違って、焼却処分することができない。無理に焼こうとすると、魔力石から強力な毒素が出てしまうためだ。
だから使い古された魔道具はこうして国の定めた場所に廃棄するしかない。
廃棄された魔道具は山のように積み重なり、この光景を人々は『ガラクタ山』『魔道具の墓場』などと呼ぶ。
……だからかな。ここに来ると私はすごく落ち着くの。
「ふふっ、今日も来ちゃった」
もう誰にも使われないガラクタの山を見ていると心が安らぐ。
なぜなら私もガラクタだから。
私とこの魔道具たちは仲間なんだ。
そして、廃棄場に何度も足を運ぶうち、私には不思議な特技(?)が備わりつつあった。
私は廃棄された魔道具たちの声が聴こえるようになった。
どんな声かというと、例えば『ここに魔力を注入すればまだ使える』とか『ゆっくり魔力を注入すればもう少し動くことができる』みたいな声。
ある日、私は試しに声に従って、ある魔道具に魔力を注入してみた。
羽根が回転して、涼しい風を吹かせる装置だ。声の通りにすると、装置はひんやりした風を私に与えてくれた。
他にも色々な魔道具が私に声をかけてくれる。
きっとまだ使えるのに捨てられて、寂しくて悲しくて悔しくて、仕方ないのだろう。
だから私はなるべくこれらの声に応えてあげようと思った。
このガラクタの山で、魔道具たちで遊ぶのは、いつしか私の日課になった。
***
今日も朝から最悪だった。
父からは相変わらずのガラクタ呼ばわり。「お前の顔を見ると、お前のようなガラクタを生んだ自分が情けなくなる」とまで言われた。
涙をこらえ、私は辻馬車で廃棄場に向かう。
捨てられた魔道具の山を見るとやはり心が落ち着く。
さっそく私は魔道具たちの声を聴く。
その声に従って、さまざまな魔道具で遊ぶ。
「この兵隊のお人形は……この一点に魔力を注入すればいいのね」
兵隊さんが勇ましく歩く。こんなに元気に歩けるのに、捨てられちゃったのね。まるで私みたいだ。
私がこうして一人で遊んでいると、別の気配に気づいた。
(あら……?)
男の人がいた。
丹念に磨き上げたようなさらさらの金髪と、深い森林のような緑の瞳、丈の長いコートを着た男性だった。
長身で、立ち姿にも気品があり、なんとも絵になる。
何をしているのだろう……?
このガラクタの山を苦々しい顔で見つめて、歩き回っている。時にはため息もついている。何か思い悩んでいるような顔つきだ。
すると、目が合った。こっちに向かって歩いてきた。どうしよう。今更逃げるわけにもいかないし、私は応対する覚悟を決めた。
「君は?」
「私は……レシーナと申します」
外で男性と話すなんてめったにないことだから緊張してしまう。
「あ、あなたは?」
かろうじて聞き返せた。
「これは失礼。僕はヒューデル・ヴェルトゥールという。どうぞよろしく」
「こちらこそ……」
名前の響きからして、高貴な人だと分かる。私も安物のドレスの裾をつまんで、出来損ないのカーテシーのような一礼をする。
「ところで、君のようなお嬢さんがこんなところで何を?」
「ええっと……この廃棄場が好きなので、ここにいました」
こう答える他ない。きっと「変な奴に話しかけてしまった」とでも思っているだろう。
「あなたはどうしてここにいらっしゃるの?」
「僕は王国の環境管理官を務めていてね。この廃棄された魔道具をどうにかできないか常々悩んでいるんだ」
環境保護のお仕事の人だったか。だとしたら、このガラクタ山なんて最もどうにかしなきゃならない問題よね。残念だけど力になれそうにない。
「なぜ、みんな魔道具をこうして捨ててしまうのでしょうね」
「それは仕方ないよ。魔道具は魔力石を使い手の魔力で刺激して動かすわけだけど、魔力石のエネルギーを全て使い切るのは不可能とされている。例えば、新品の魔道具に10のエネルギーを持った魔力石が組み込まれていたとして、その残量が1か2になると、魔道具は動かなくなってしまう」
ヒューデル様のレクチャーは丁寧で分かりやすかった。
「魔力石にエネルギーが残った状態で魔道具を焼却処分しようとすると、毒素が生じる。だからそのまま廃棄するしかないわけだけど、これも緩やかに土壌を汚染することが明らかになっている。あくまで先延ばしに過ぎない」
魔力石は天然資源だけど、一度魔道具に使用すると、どうしても毒素が生じてしまうという。この廃棄場も将来的には人も立ち入れないほど汚染されるとのこと。
聞けば聞くほど、魔道具なんて使わない方がいいのでは、と思えてしまう。
そんな私の思考を、ヒューデル様は先回りする。
「だが、今更魔道具を使用しない生活を送るなんて不可能だ。たとえ僕が訴えても、民の大半が反対するだろう。これからは環境のために木と木をこすり合わせて火を起こす生活に戻ろう、と言うようなものだからね」
魔道具が環境によくないと分かっていても、その便利さを捨てることはできないということか。
ヒューデル様が魔道具を一つ拾う。小型のライターだ。
「このライターの魔力石にはまだ魔力が残ってるけど、僕が魔力を注入したところで、もう火がつくことはない」
この時、私の耳にライターの声が聴こえた。
「できますよ」
「え?」
「そのライターを最後まで使い切ること、できますよ」
ヒューデル様は目を見開く。
「どうやって? 今も僕は魔力を注入してるけど、小さな火さえつかない」
「貸してみてください」
私はライターを借りると――
「こうです」
私はライターのある一点に魔力を注入してみせた。
すると、火がついた。弱々しいけど、この魔道具にはまだ力が残っている。
普通の魔道具を使うのは苦手だけど、ここに捨てられたガラクタ魔道具を使うのは得意なのだ。
「な、なに……!?」ヒューデル様は驚いている。
「このまま火を灯していけば……あ、消えた」
ライターを完全に使い切ることができた。魔力石にはこれっぽっちも魔力は残っていないはず。
役目を果たしたライターは、光の粒子となって消えていく。見慣れた光景だ。
ヒューデル様を見ると、全身が小刻みに震えている。どうしたんだろう。そんなに寒いのだろうか。
「すまない。もしよければもう一度やってもらってもいいかい?」
「いいですよ」
今度は近くにあった計算機を手に取り、使い切り、光の粒子にする。
ヒューデル様は声を震わせる。
「レシーナ。君は……何者だ? 出身は?」
そういえばフルネームで名乗っていなかった。
「レシーナ。レシーナ・ルストと申します」
「ルスト? ……ああ、伯爵家の! 夜会で子女を見かけたこともあるが、君のことは知らなかったな……」
「なにしろ社交デビューしてませんから……」
「……? 君はそこまで幼くは見えないが……どういうことだい?」
「ええと……」
あまりにみじめなので、あまり話したくはなかったけど、咄嗟にそれらしい嘘も思いつかず、私はありのままを打ち明けてしまった。
家ではガラクタ扱いで、社交デビューも許されず、唯一の趣味といえば魔道具廃棄場で遊ぶことだと。
「そうか……」
ヒューデル様は考え込むような仕草になる。
「すまない。気の利いた言葉の一つでもかけてあげたいと思ったが、なかなか思い浮かばなくて……」
「い、いえっ! 励まされたくて話したわけじゃありませんから!」
励まそうとしてくれただけで嬉しい。
この方はとても生真面目な人なんだろうな、と分かった。
「ただし、これだけは断言できる。君は決してガラクタなんかじゃない」
「……ッ!」
一瞬、私の胸が大きく跳ねた。
「それどころか、もしかしたら君は国の救世主になるかもしれない」
「あ、ありがとうございます……!」
私のどのあたりに救世主要素があったのか分からないが、つい嬉しくなってしまう。
「そんな状況では家にも帰りたくないだろう。よかったら、王都にある僕の家に来ないか?」
ヒューデル様は王城で環境管理官として働いているので、王都に自宅を持っているとのこと。
「え、でも……」
「君の家族は君を必要としていないんだろう? だけど僕は必要としている。ぜひ来て欲しい」
手を差し伸べられた。
いくら手を伸ばしても、誰からも相手にされなかった私に、初めて向こうから――
「はい……!」
私はその手を取った。とてもしなやかで温かい手だった……。
***
「娘をヴェルトゥール家で雇いたい? かまいませんぞ!」
ヒューデル様は私をヴェルトゥール家の下女として雇いたいという申し出をした。
父はあっさり許してくれた。それどころか、公爵家だったヴェルトゥール家に媚びるような姿勢を見せる。
その顔からは娘を手放す惜しさのようなものは一切感じられず、「これでようやくガラクタを処分できる」という晴れやかさで満ち溢れていた。
王都にあるヒューデル様の邸宅は素晴らしかった。
すでにご両親からは独立しており、使用人を雇い、一人前の貴族として生活している。
ヒューデル様は私を下女どころか“客人”としてもてなしてくれた。
美味しく栄養バランスの取れた食事、体どころか心まで温まるような紅茶、私専用の部屋まで用意してくれた。しばらくは家に慣れるためくつろいで欲しい、とまでおっしゃってくれた。
だけど、私にはおもてなしよりも求めているものがあった。
「ヒューデル様、私が国の救世主になるということであれば、すぐにでもその件についてやり取りをしたいのですが……」
「……いいのかい? もう少し時間が経ってからでもかまわないのに」
「ええ……私、ウズウズしてるんです。生まれて初めて自分が必要とされて、今すぐにでも働きたいんです」
私自身、こんな感覚は初めてだった。
「どうやら僕は君を見くびっていた部分があったようだ。すぐにでも始めよう」
邸内の小さな部屋に案内される。
テーブルの上にいくつかの魔道具が置いてある。
「これらは全て動かなくなった魔道具だ。普通なら、もう廃棄場に処分するしかない。これらを使い切れるかい?」
「やってみます」
私が耳を澄ますと、すぐに彼らの声が聴こえた。聴こえてしまえばあとは容易い。
私はいつもやるように、テーブルの魔道具を使い切る。
すると、中には――
「ん、これは……? 新しい魔力石!?」
使い切った後、新たな魔力石を生み出す道具もあった。
私からすると、やはりよく見る光景だけど。
「たまにあるんですよ。使い切った魔道具が、新たな原動力となる魔力石を生み出すことが」
ヒューデル様は再生された魔力石をまじまじと眺める。
「しかも極上だ……。従来の魔力石よりも、濃密な魔力に満ちている……。毒素を出している様子もない……」
「ええ、私はそれを“アタリ石”と呼んでいました」
「君の力には、魔道具を完全に処理できるだけじゃなく、新たな魔力石を生み出せる可能性もあるなんて……」
魔力石自体は決して珍しいものではないが、質にはバラツキがあり、ここまでの物は本当に稀だという。
ヒューデル様は私に振り返る。
「君は間違いなく国の救世主だ!」
すぐさまヒューデル様は、ヴェルトゥール家の息がかかっている名うての術者たちを呼んだ。いずれも国有数の使い手で、エリートと呼んでいい人たちだ。
「彼女はレシーナ。魔道具を最後まで使い切り、完全に処理することができる」
ヒューデル様の紹介を聞いた術者たちは、半信半疑といった表情で私を見る。
ところが、私が実演すると――
「なんと……!」
「使い切るとああなるのか!」
「いったいどうやったんだ!?」
私は術者たちに魔道具の声を聴くコツを教えた。
だけどいくら教えても、彼らは声そのものを聴くことはできなかった。
「やはりこの才能はレシーナだけに与えられたものらしいね……」
しかし、術者の方々もさすがはエリート。
私のように声を聴くことはできないが、魔道具を使い切るツボのようなものを少しずつ理解していく。
ヒューデル様もまた、同じようにコツを掴んでいく。
「よし、使い切れた……!」
「しかもアタリ石が出ましたよ!」
「うん、これは再利用できるね」
私だけが持っている感覚に過ぎなかった「魔道具処理術」が明確な技術として確立されていく。
そして、ヒューデル様は魔道具処理を本格的に事業として立ち上げた。
よそでは処理できない魔道具を引き取り、ヴェルトゥール家の術者らで処理し、“アタリ石”が出れば再利用する。
国中の人間が魔道具の処理をどうするか持て余している状況だったので、この事業は一大ビジネスとなり、巨万の富を生んだ。
私はヒューデル様とワインで乾杯する。
「まさか、これほどの商売になってしまうとはね……正直驚いたよ」
「私も驚きです」
そもそもの目的が環境保護なので、ヒューデル様はなるべく良心的な価格を設定したのだが、それでも面白いように儲けられる。
「しかし、これで王国の環境はずいぶん改善されるだろう。君はやはり救世主だったんだよ」
「ありがとうございます」
グラスの端を唇に運ぶ。
ヒューデル様と飲むワインは格別の味だった。
***
そんなある日、両親と兄姉たちが、私を訪ねてきた。
「レシーナ、久しぶりだな」
「お父様……」
突然の訪問に私もうろたえてしまう。
彼らの用件は――
「ルスト家に戻ってきてくれ」
「え……」
「聞いたぞ、お前は廃棄された魔道具の声を聴くことができると。お前の才能は我々の才能でもある。今、お前が進めている魔道具廃棄ビジネス、我々とやろうじゃないか!」
ようするに、ガラクタだと思っていた私が金の卵を産む鶏だと知ったから、呼び戻しに来たということね。
せっかくヒューデル様と新しい人生を歩んでいたのに、すっかり水をさされてしまった。
だけど、虐げられていたとはいえ肉親は肉親――きっぱり拒絶する勇気も出ない。
その時だった。
「あなた方はレシーナのご家族ですね」
ヒューデル様が私を守るように割り込んできた。
公爵家の人間が持つ高貴さに、父らは圧倒されている。
「レシーナを取り戻しにきたのですね」
「そ、そうだ! そのガ……レシーナは我々のものだ! 今すぐ返してもらおう!」
「ガ……」というのが何を言いかけたのか、すぐに分かった。私の心に黒いものが湧く。
「できません」
ヒューデル様はきっぱり言った。
「散々にレシーナを虐げてきたあなた方に、レシーナを連れ戻す資格などありません」
「ふざけるな! 我々はレシーナの家族だ! 資格はある!」
ついに父が憤慨する。が、ヒューデル様は冷ややかな目で応じる。
「では……せめて謝ってもらいましょうか。レシーナに」
「な、なんだと……!?」
「『今まで辛い目にあわせて申し訳ありませんでした。どうか我々の元に戻ってきてください』と、彼女に深く頭を下げてください」
家族は私を一瞥し、全員が顔をしかめる。
「で、できるかぁ! そんなこと! なんで私がこんな奴に頭を下げねばならん!」
父は怒りの形相で私に人差し指を突きつける。
その指を、ヒューデル様が掴んだ。
「うっ!?」
「聞け」
「ううっ……!」
恐ろしく冷たい声だった。そのまま指をへし折らんばかりの迫力だ。
「さっきあなたは何を言いかけた? いいか、あなた方にレシーナの家族である資格などひとかけらもない。ただ血が繋がっているだけの――“他人”だ。もしまだレシーナを家族扱いしようというのなら、この僕が……いやヴェルトゥール家が家名をかけて相手をしよう」
父も他の家族もすっかり怯え切っている。ヒューデル様が手を離す。
「お帰りいただこう。これ以上ここに居座るというのなら、不法侵入者が現れたとして護衛部隊を呼ぶことになる」
父たちは青ざめ、すごすごと引き返していく。
「……お前のようなガラクタなどいるか! こちらはこちらでやるまでだ!」
こんな捨て台詞を残して。
最後までガラクタ呼ばわりか……。心の中でため息をつく。
すると、ヒューデル様が私の肩に手を回してくれた。
「気にするな、レシーナ。あんなのはどこかの他人の戯言だ」
「はい、気にしません。だって私にはヒューデル様がいますから!」
――目が合った。
ヒューデル様の緑色の瞳が頬を染める私を映す。
私は何の役にも立たないガラクタのはずだった。
なのに、いつしかガラクタのはずの私は、一人の男性と出会い、力を見出され、恋をしていた。
すると――
「レシーナ……」
「は、はいっ!」
ヒューデル様が私を見つめる。
私の全身を包み込むような、温かい眼差しが向けられる。
「僕に資格をくれないか。君の家族になる資格を」
この言葉に、私はうなずく。
「……はい! よろしくお願いします!」
ガラクタと言われ続けた私は、ガラクタの声を聴き、国の救世主となった。
そして今また、最も愛する人と結ばれることができた。
***
ルスト家の人々についての悲報が入ってきたのは、それからまもなくのことだった。
目撃者によると、父たちは魔道具の廃棄場に突然やってきて、
『あのガラクタにできて、我々にできぬはずがない!』
こう豪語して、魔道具の山を乱暴に漁り始めたという。きっと私のように声を聴こうとしたのだろう。
だけど――
『うおおっ……!? ガラクタどもが……!? た、助けっ……!』
突如、山が崩れ、全員生き埋めになってしまった。救出作業もなされたが、とても間に合わなかったという。
散々ガラクタをバカにしていた彼らは、もしかしたら捨てられた魔道具たちの怒りに触れてしまったのかもしれない。あるいは、魔道具たちが唯一声を聴ける私のために怒ってくれたのかもしれない。
その後、ルスト家の領地はヴェルトゥール家から代官を送り、管理することとなった。
私は公爵家夫人になってからも、廃棄された魔道具の処理事業に尽力した。
ヴェルトゥール家はますます富み、王国からは魔道具の山が消え、環境は整い、景観は見違えるほど美しくなった。
ついには王宮で陛下にお呼ばれして、直々に「救世主」として認められ、メダルを賜った。
そんな私のそばにはいつも愛する夫――ヒューデル様がいてくれる。
私はもう、ガラクタなどとは呼ばれはしない。
おわり
お読み下さいましてありがとうございました。




