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手作りの月見団子

 エプロンを付けた早苗(さなえ)は、桐生(きりゅう)家の台所で『月見団子』を作っている。去年は(この世界の)母上と二人がかりだったが、今年は早苗だけだ。ボウルの中の種を一握りずつ、手のひらで丸く成型して、蒸し器に並べていく。


 欲張って大きくしすぎても、みみっちく小さくしてもいけない。美しい正三角錐を作り上げるために、サイズは均等だ。


「合計で、何個作る?」

「んー。たくさん!」

「たくさん、とは……」


 ぼくはボウルをのぞき込む。完成までは、まだかかりそうだ。おなかは空いている。


「そりゃあ、アレだよ。お月見団子は、ピラミッドみたいに積み上げるじゃない? このピラミッドに必要な数が最低ライン」

「一番下の段を縦七個、横七個として、頂点までに必要な団子の数は?」


 数学の問題を出したら、早苗はしぶい顔をした。こういうときのために、学校で学んでいるのではないのか。現役高校生なら、答えられるだろう。


「余ったのは食べればいいんだからいーの!」

「答えは?」

「むー……」


 早苗の作業を止めてしまった。これでは完成までが遠くなる。ただでさえも、人手が減っているというのに。


「手伝うか」

「え、悟朗さんが?」

「たくさん作るんだろう? 早苗の作業を見ていたから、作り方はわかる」


 ぼくは腕まくりをして、手を洗った。ひとりより、ふたりだ。


「うまくできるかなー?」


 種をすくい取って、手のひらに乗せる。コロコロと転がして、丸くした。早苗が作った団子と比べると、一回り小さい。やり直しか。


「そうだ!」


 蒸し器から手のひらの上に戻した団子を見つめて、ひらめいた。小さな団子を、タマゴの形に成型する。とんがっている側をつまみあげ、反対側もつまみあげて、どちらも()()()にした。その耳の近くを、箸の先端でつつく。仕上げに、ひとつまみの種を人差し指と親指で丸くこねて、顔とは逆側にくっつけた。


「うさぎ」


 この世界の月には、うさぎが住んでいるらしい。……というのは冗談(月面着陸した宇宙飛行士がうさぎを見つけていたら、歴史に残っているだろう)で月の『模様』が『もちつきをしているうさぎ』に見えると言うし、月見団子にうさぎを添えてもいいだろう。


「いいじゃーん! かわいい!」

「うむ」

「悟朗さんって、手先が器用だよねー」

「早苗には負ける」


 団子の列の最後尾に、うさぎを並べた。ぼくが早苗ほど器用だったら、一回で同じ大きさの団子を作っていただろう。


「早苗も、作っちゃお!」


 早苗は楕円形を成型した。箸の先端で表面を削りながら、何かを描いている。


「これはなんでしょう?」

「?」

「ヒントは、横に歩く海の生き物」

「???」

「ジャンケンではチョキしか出せない」

「すまん、わからない」

「カニだよー! カニさんー!」


 イラストは苦手らしい。カニを描いたらしいが、どうにもカニには見えなかった。虫……?


「そうか?」

「悟朗さん、カニ食べたことなかったっけ。おいしいよ、カニ」


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