EP6 冒険者ギルド
街の喧騒を抜け、大通りの先に建つ一際大きな建物へとたどり着いた。
「ここが冒険者ギルドよ。」
リーナが指さす先にあるのは、頑丈な石造りの建物だった。入り口には大きな木製の扉があり、ひっきりなしに人が出入りしている。外壁には依頼掲示板らしきものが設置され、数人の冒険者がそれを覗き込んでいた。
中へ入ると、途端に活気に満ちた声が耳を打った。
「——おい、酒が足りねぇぞ!」
「ははは! それなら次の依頼で稼ぐしかねぇな!」
奥ではカウンターが設けられ、受付嬢らしき女性たちが対応している。周囲には装備を整えた冒険者たちが談笑しながら酒を飲み、依頼の相談をしていた。
「こっちよ。」
リーナに促され、俺はカウンターへ向かった。受付の女性がこちらを見て微笑む。
「ようこそ、ルーデンベルグ冒険者ギルドへ。ご用件は?」
「新規登録を頼む。」
俺がそう告げると、受付嬢は手際よく書類を用意し、ペンを差し出した。
「では、こちらにお名前をお願いします。」
俺はペンを握った。だが、一瞬迷う。
——俺の名前。
記憶は曖昧だ。だが、何か名乗る必要がある。
「……レイヴン、で頼む。」
ペンを走らせる。受付嬢は頷き、次の説明に移った。
「登録にあたり、基本的な質問をいくつかさせていただきます。戦闘経験は?」
「ある。」
「魔法の使用は?」
「……不明だ。」
「……不明?」
受付嬢が少し驚いたように首を傾げる。俺自身、魔法が使えるのかどうか分からない。だが、転生してから不可解な感覚を幾度か味わったのは事実だ。
「では、登録手続きを進めます。最後にギルドのルールを簡単に説明します。」
受付嬢が端的に説明を始める。
- 依頼の受注と報酬の受け取りはギルドを通して行う。
- ギルド内での私闘は禁止。
- ギルドへの重大な違反行為は、処罰の対象となる。
「以上が基本的なルールです。問題がなければ、このカードをどうぞ。」
受付嬢が手渡したのは、金属製の小さなプレート——冒険者カードだった。
「これで正式に冒険者として登録されました。今後のご活躍をお祈りします。」
こうして、俺はこの異世界で正式な冒険者となった。