EP5 初めての街
森を抜けると、開けた平原の向こうに街が見えた。
遠くにそびえる石造りの城壁。周囲を取り囲む畑や家々が、活気に満ちた暮らしの様子を伝えてくる。門には見張りの兵士が立ち、商人や旅人、そして冒険者たちが行き交っていた。
「ここが、ルーデンベルグよ。」
リーナが手を広げながら紹介する。
「そこそこ大きな街だけど、王都ほどじゃないわね。でも、冒険者ギルドもあるし、物資も豊富。あなたみたいな放浪者には悪くない場所よ。」
「放浪者……ね。」
否定できない。俺には帰るべき場所も、名乗るべき名前もないのだから。
街へ入る前に、門の前で衛兵による簡単な身分確認が行われた。
「身分証は?」
衛兵がリーナに尋ねると、彼女は腰から冒険者カードのようなものを取り出して見せる。
「私は冒険者ギルド所属のリーナ。この人たちもパーティーメンバーよ。」
衛兵は頷き、リーナたちを通す。だが、俺に視線が向けられた。
「お前は?」
「……持っていない。」
警戒するような視線が向けられる。だが、リーナがすかさず口を挟んだ。
「彼は私たちの命を助けてくれたの。ギルドに登録するつもりだから、問題ないでしょ?」
衛兵はしばらく俺を値踏みするように見ていたが、やがてため息をつきながら頷いた。
「ギルドで身分を登録するなら問題ない。だが、素性の知れない者が街で騒ぎを起こせば、容赦はしないぞ。」
「……わかった。」
こうして、俺は正式にこの街へと足を踏み入れた。
街中は賑やかだった。
石畳の道沿いには商店が立ち並び、行き交う人々の声が飛び交っている。露店では果物や焼きたてのパンが並び、旅人や冒険者が腰を下ろして食事を楽しんでいた。
「さて、まずはギルドへ行きましょう。」
リーナが歩きながらそう言う。
「お前たちは依頼を受けてたんじゃなかったのか?」
「ええ。でも、カインが怪我をしてるし、一度ギルドに戻って報告する必要があるわ。」
それもそうか。
それに、俺自身もギルドについて知る必要がある。今の俺にとって、情報を得られる場所は貴重だった。
「じゃあ、案内してくれ。」
俺はリーナたちと共に、異世界の冒険者ギルドへと向かうことになった——。