EP3 対オーガ
### EP3 初めての戦場
目の前の巨大な異形が吠えた。
オーガ——その名を俺は知らない。だが、目の前の怪物が脅威であることは本能的に理解できた。
「こっちに来るぞ……!」
剣を握りしめ、息を整える。重みのある剣だが、今の俺にはそれを確かめている余裕はない。
オーガが大地を揺らしながら突進してくる。剛腕が振り下ろされ、土煙が舞い上がった。
「下がれ!」
叫びながら、俺は剣を振り上げる。咄嗟の判断だったが、腕が勝手に動く。
衝撃が走る。想像以上の重量に、足元が沈む。しかし、俺の体は耐え、剣が軋みながらもオーガの攻撃を受け止めた。
「ぐっ……!」
オーガの力は圧倒的だ。無理に拮抗すれば押しつぶされる。
瞬時に判断し、力を流すように剣を斜めにずらした。オーガの棍棒が滑るように逸れ、大地へと激突する。
「今だ!」
隙を突き、俺は剣を横薙ぎに振るった。刃がオーガの脇腹を裂き、黒い血が飛び散る。
オーガは怒りに満ちた咆哮を上げ、反撃に移ろうとする。その瞬間、背後から光が閃いた。
「《ファイアボルト!》」
少女の声と共に、炎の矢がオーガの肩を撃ち抜く。俺はその隙に距離を取った。
「援護する! 立て直して!」
リーダー格の少女が叫ぶ。その言葉に仲間たちも奮起し、態勢を整える。
だが、オーガはまだ倒れない。
「ちっ……しぶといな。」
オーガは傷つきながらも、再び棍棒を振り上げた。だが、俺は冷静だった。今度こそ、決める。
地面を蹴り、一気に懐へと飛び込む。
——右目に僅かな光がよぎる。
視界が変わった。
戦場がスローモーションになり、オーガの動きが手に取るようにわかる。
——これは……?
考えるより先に、剣が動いた。
オーガの喉元を貫いた。
黒い血が噴き出し、オーガが断末魔の咆哮を上げる。巨体が崩れ落ち、地面に激突した。
静寂。
俺は深く息を吐いた。
——戦い方を知っている。
だが、どうしてそれを覚えているのか、俺には分からなかった。