EP14 鍛冶屋のガルシス
店主は短剣を示しながら、どこか誇らしげな表情で言った。
「俺の名はガルシス。この店の主人であり、鍛冶師だ。」
ガルシスは逞しい腕を組みながら、店内に並ぶ武器を見渡す。
「この街で鍛冶をやってもう二十年になる。市販品だけでなく、オーダーメイドの武器も手掛けている。お前さんみたいに自分に合った一振りを求める奴も多いからな。」
俺は再び短剣を手に取り、その刃を眺める。軽く振ると、手に馴染む感覚がある。
「これに決めるか。」
「いい判断だ。」
ガルシスは満足げに頷き、カウンターへと短剣を置く。
「両方合わせて……そうだな、銀貨八枚だ。」
「銀貨八枚か……」
俺はポーチを取り出し、中を確認する。昨日の依頼報酬が銀貨三枚だったことを考えると、そこそこの出費だ。
だが、リーナから支度金として銀貨十枚を借りていたため、当面の生活費には余裕がある。とはいえ、無駄遣いは避けなければならない。
「そういえば、オーダーメイドの武器も作れると言っていたな?」
「おう。鍛冶師の腕次第で、特注品は大きく変わる。素材や細工にこだわれば、既製品とは比べ物にならんぞ。」
俺は興味を持ちつつも、慎重に尋ねる。
「オーダーメイドの短剣を作るとしたら、どれくらいの値段になる?」
ガルシスは顎に手を当て、少し考えた後に答えた。
「最低でも金貨五枚。素材次第では十枚を超えることもある。」
「……今の俺にはとても手が届かないな。」
銀貨と金貨の価値の違いを考えると、オーダーメイドの武器がどれほど高価なものかがよく分かる。俺が昨日の依頼を十回以上こなしても、最低限のオーダーすらできない計算だ。
「ま、今すぐは難しいかもしれんが、いずれは自分専用の一振りを持つのも悪くないぞ。」
ガルシスの言葉に、俺は軽く頷いた。
「まずは、この短剣を使いこなしてからだな。」
銀貨八枚を支払い、新たな武器を手に入れた俺は、しっかりと短剣を腰に収める。
「これからも世話になるかもしれないな、ガルシス。」
「いつでも来な。いい仕事をしてやるさ。」
こうして、俺はこの世界での初めての武器を手に入れた。