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EP12 街を歩く

### EP12 街を歩く


朝日が窓から差し込み、柔らかな光が部屋を満たしていた。


目を覚ました俺は、軽く体を伸ばしながら昨夜の思考を整理する。


(とりあえず、今日から本格的に動き始めるか。)


身支度を整え、宿を出る。昨夜の整理のおかげで少し気持ちに余裕が生まれたのか、今まで気にも留めていなかった街の景色が視界に飛び込んでくる。


ルーデンベルグの街は活気に満ちていた。石畳の道の両側には商店が軒を連ね、果物や焼きたてのパンを売る露店からは香ばしい匂いが漂ってくる。朝の市場には人々の賑わう声が響き、行き交う馬車がリズミカルな車輪の音を奏でていた。


俺はふと足を止め、街の人々の様子を眺める。笑顔で談笑する者、仕事に精を出す者、幼い子供を連れて歩く母親。異世界の光景ではあるが、不思議と懐かしさを感じる。


(こうして見ると、ここは戦いとは無縁の穏やかな場所に見えるな。)


だが、それは表面的なものに過ぎない。冒険者ギルドには日々依頼が舞い込み、討伐を求められる魔物が確かに存在している。街の外には危険が溢れ、人々の安全は脆くも崩れ去る可能性がある。


(この世界のことをもっと知らなければならないな。)


ふと、自分がこの街の言葉を自然に理解していることに違和感を覚えた。記憶が曖昧なままなのに、会話の内容がすんなりと頭に入ってくる。普通なら、知らない言語に戸惑うはずだ。


(なぜ……俺は言葉に困らない?)


理由は分からないが、まるでこの世界の知識が元から自分の中にあったような感覚がする。それがどういうことなのか、考えなければならない。


街の構造や商人たちのやり取り、流通している物資。何気ない日常の中にも、この世界を知るための手がかりは溢れている。


俺は市場を抜け、少し街の奥へと歩みを進めた——。


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