EP11 宿で
ギルドでの報告を終えた俺は、リーナたちと別れ、宿の一室へと向かった。
部屋は質素な作りだが、寝台と机、それに洗面台も備え付けられている。明かり取りの小さな窓から、夜の街の灯りがちらほらと見える。
俺はベッドの縁に腰を下ろし、ゆっくりと息を吐いた。
「……状況を整理しよう。」
まず、この世界に来た理由は分からない。記憶は曖昧で、断片的なものしか思い出せない。だが、戦闘時の身体の動きだけは、まるで昨日まで戦場にいたかのように馴染んでいた。
(俺は……何者なんだ?)
右目をそっと押さえる。あの戦いの最中、時間が引き延ばされたような感覚があった。まるで、敵の動きを先読みしていたかのような——。
「オーディンシステム……か。」
この言葉が頭に浮かぶが、意味は分からない。ただ、身体に染み付いた戦いの感覚と、記憶の欠落の間に何かしらの繋がりがあるのは間違いない。
「……まずは情報を集めるしかないか。」
見通しは立たないが、このまま何もせずにいても仕方がない。生活の糧を得るためにも、まずは冒険者として動くしかない。
この世界で何の手がかりもない俺が生きる手段は限られている。農業や商売の知識もないし、身分証や保証もない。だが、戦闘の勘だけはある。それならば、冒険者として稼ぐのが最も現実的な選択肢だろう。未知の世界で生きていくには、それが最も現実的な選択肢だった。
だが、一人で動くべきか、それともリーナたちと共に行動するべきか……。
彼らはなぜ俺を受け入れたのか? 俺がどこから来たのかも分からないのに、警戒する素振りもなく、当たり前のように接してくれる。
リーナは、困っている人間を放っておけない性格なのかもしれない。マルクスとエリオットも、俺に対する興味や期待があるのかもしれないが、彼らの本心はまだ分からない。ギルドの方針としても、冒険者の素質があれば受け入れる体制なのかもしれない。
信頼していいのか、それともまだ様子を見るべきなのか——。
見通しは立たないが、このまま何もせずにいても仕方がない。生活の糧を得るためにも、まずは冒険者として動くしかない。未知の世界で生きていくには、それが最も現実的な選択肢だった。
ギルドで依頼をこなしながら、この世界のことを知る。それと同時に、自分自身についても調べる。
俺は深く息を吸い込み、ベッドに横たわった。
——すべての答えは、きっとこの世界のどこかにある。