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捨てられた悪役令嬢ですが、美貌の王弟殿下から溺愛されています・完結  作者: まほりろ・ネトコン12W受賞・GOマンガ原作者大賞入賞


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68話「好きな人はどんな姿になってもわかる」王弟視点




――王弟・ラファエル視点――


昨日、部下からアリーゼ嬢を見失ったと報告を受けた時、僕は心臓が止まるかと思った。


公爵令嬢であるアリーゼ嬢を狙う輩は多い。


このタイミングで彼女がいなくなったとなると、イリナ王女が犯人の可能性が高い。


イリナ王女の部屋に兵士を引き連れて乗り込んで、締め上げてやりたかった!


現状、イリナ王女は何かをしたという証拠がないので、それは難しかった。


相手は一国の王女で、王妃殿下の姪だ。証拠もないのに手荒な真似はできない。


下手をすれば国際問題になる。


サルガル王国を敵に回してもいいから、イリナ王女を締め上げ、アリーゼ嬢の居場所を吐かせたい、という思いがふつふつと込み上げてきた。


部屋で報告を待つことなどできず、僕は部屋を飛び出していた。


僕は王宮を駆け回り、アリーゼ嬢の姿を探した。


部下に捜索を任せ、僕は目立った行動をしない方がいい。


失踪したことが公になれば、貴族の令嬢としては致命的だ。


無事に保護されたとしても、傷物として扱われてしまう。


それは分かっている。


だが、じっとしてはいられなかった。


今は、アリーゼ嬢を見つけ出し、保護することが大事だ!


彼女さえ見つけ出せれば、その後のことはどうとでもなる!


日が暮れかけた頃、離宮の近くの森で足に怪我をした猫を見つけた。


その猫は疲れ切って、怯え、震えていた。


その猫を一目見たとき、懐かしい感じがした。


僕にはなぜだか、その猫がアリーゼ嬢に思えた。


根拠はない。強いて言うなら愛の力だ。


そんなはずはないと否定したが、どうしてもアリーゼ嬢の顔が消えなかった。


その猫は、アリーゼ嬢と同じ銀色の髪にセルリアンブルーの瞳をしていた。


そして、僕がアリーゼ嬢にあげた紫のリボンを首に付けていた。


猫が僕を見つめる瞳は、アリーゼ嬢によく似ていた。


この猫は、アリーゼ嬢に深い関わりがあるに違いない。


そう確信した僕は、猫を保護することにした。


猫を追い回していた兵士を一喝し、馬鹿げた捜索をやめさせた。


他国の王女付きの侍女に買収され、訓練をサボり猫を追いかけ回すなど、碌な奴らではない。


猫の捜索に加担した兵士には、後で重い罰を下すつもりだ。


それよりも、今は猫の保護が優先だ。  

猫は足から血を流していた。急いで手当てをしなくてはならない。


猫は兵士に追い回されていた。


僕が「おいで」と言っても、逃げてしまう可能性があった。


しかし、猫は自ら茂みから出てきた。


猫に信頼されていたことがわかり、嬉しかった。


僕は猫を抱き上げると、安心したのか気を失ってしまった。


僕は猫を部屋に連れて帰り、傷の手当てをした。


幸い、猫の怪我は大したことはなかった。


傷口を洗い、破片を取り出し、消毒をして、包帯を巻いて、しばらく安静にしていれば治るだろう。


猫はベッドの上ですやすやと寝息を立てていた。


こんなに愛らしい猫を、疲れるまで追い詰めた人間に対して、怒りが湧いてきた。


猫を追いかけた兵士には重い罰を下す。


兵士に猫の捜索を命じたイリナ王女付きの侍女にも、イリナ王女にも、償いはさせるつもりだ。


だが、今は猫が目を覚ますことの方が大切だ。


僕が保護した時、安心したのか気を失ってしまったのだ。


猫は、それからずっと目を覚まさない。


僕は、猫を膝の上に乗せて見守ることにした。


どれくらい時間が経過しただろう?


窓の外を見ると、真っ暗になっていた。


猫は目を覚まし、辺りを確認していた。


猫を抱き上げると、アリーゼ嬢が愛用している香水の匂いがした。


アリーゼ嬢の香水の香りが移るくらいだ。もしかしたら、アリーゼ嬢が飼っていた猫かもしれない。


猫は人間の言葉がわかるみたいだった。


猫は机の上に飛び乗ると、本を爪でカリカリと引っかいた。


イタズラをしているわけではなさそうだ。


本を開いて本の上に置くと、前足を文字の上に乗せ「にゃー」と鳴いた。


猫は、何度も同じことを繰り返している。


とても賢い猫だと思っていたが……文字が読めるのだろうか?


猫が示したのは「薬、お茶、変化、追っ手、怪我」の文字だった。


それだけでは何が言いたいのかわからない。


もっと直接、言葉のやり取りが出来ればいいのに……!


僕は、イエスとノーと書いた紙と、アルファベットのAからZまで書いた紙を用意した。


猫が文字を読めるという前提で用意したものだ。


普通の猫が文字を読めるとは思えない。


だが、この猫は普通の猫ではなさそうだ。


僕は、猫に前足で文字を示すように指示した。


猫は、自分の名前がアリーゼだと教えてくれた。


信じられないことに、保護した猫は本当にアリーゼ嬢だった……!


僕はアリーゼ嬢が見つかったことに安堵し、同時に彼女をこんな姿にした犯人に強い怒りを覚えた。


猫の姿にされ、怪我までして、大勢の兵士に追いかけられ、きっとすごく怖かったはずだ。


あのとき、僕がアリーゼ嬢を保護していなかったらどうなっていたことか……。


想像するのも恐ろしい。


それから、アリーゼ嬢はいろんなことを教えてくれた。


王妃殿下付きの侍女に、王妃殿下とのお茶会があると言われ、彼女について行ったこと。


王妃殿下付きの侍女が、離宮にアリーゼ嬢を連れて行ったこと。


お茶会の場所には王妃殿下はいなく、代わりにイリナ王女がいたこと。


王妃殿下付きの侍女はいつの間にかいなくなっていたこと。


イリナ王女に、マナー教室の講師を辞め、サルガルの第二王子と結婚するように言われたこと。


アリーゼ嬢が要求を断ると、イリナ王女にお茶を飲むことを強要されたこと。


サルガル王国のマナーだと言われ、お茶を飲むのを拒否できなかったこと。


お茶は変な味がしたが吐き出すことはできず、気がついたら猫の姿に変わっていたこと。


イリナ王女は、猫になったアリーゼ嬢を地下室に閉じ込めようとしたこと。


身の危険を感じたアリーゼ嬢が、イリナ王女の頬を引っ掻き、窓ガラスを破って逃走したこと。


いつの間にか捜索に兵士が加わっていたこと。


森の中を逃げ回っている間に、力尽きしげみの影で休んでいたこと。


その時僕に出会って、保護され、現在に至る。


彼女の話を聞いて、僕の背中を汗が流れた。


僕が保護しなかったら、アリーゼ嬢は今頃どうなっていたことか……!


考えるだけで恐ろしい。


それと同時に、アリーゼ嬢をこんな目に合わせたイリナ王女に、強い怒りが湧いた。


僕は、イリナ王女を絶対に許さない。


今すぐ彼女の部屋に乗り込んで、剣の錆にしてやりたい!


しかし、イリナ王女にはまだ聞きたいことがある。


解毒剤についてだ。


それを確認するまでは彼女を泳がせておこう。


解毒剤が確保できたら、イリナ王女は用済みだ。


その時は、徹底的に断罪しよう。 




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