失恋のリベンジは5年計画
後悔させてやるんだから!
ヒビ割れた心に誓ったのは
初恋が破れた日
「……本気か?」
平坦な声でそう聞いてきた あいつ
真ん丸に見開かれた両目 形の良い唇
あいつは どこか楽しそうにも見えた
「本気に決まってるでしょ!」
「いや落ち着け?」
「もう良いバカ! サイテー!」
あたしは捨てゼリフの後 勢いよく走り出した
遠く後ろから あたしを呼ぶ声が聞こえたけど
振り向かないで走った
でないと涙が見られてしまうから
あんな楽しそうな表情したやつに
あたしの悲しみなんて 見てほしくなかったのよ
家に帰って誓ったのは
あいつに後悔させるってこと
メイクを覚えて美人になって
エクササイズを日課にしてグラビア体型になって
馬鹿は嫌いだって言っていたから 勉強もしっかりやって
あいつのどストライクな女になって
同窓会か何かで再会してやるのよ
その時こそ
「もったいないことした!」
って後悔させてやるわ
エックスデーは五年後の今日!
その時あたしは二十歳だ──
* * *
五年後
あたしは同窓会を企画した
高校時代には勉強を頑張って良い大学に入った
大学一年にはデパートの売り場で
化粧のテクニックを教えてもらった
誓いの日からエクササイズは毎日欠かさない
結果
今日は注目を集めている
あたしはシャンパンをあおった
勢いつけないとリベンジなんてできないわ
すると背後から名前を呼ばれた
振り向いた先にいたのは あいつ
背が伸びたんだわ
昔可愛かったが今はオトナのイケメンになって
あたしだけ見て微笑んでる
見惚れかけたがリベンジのことを思い出し目元を鋭くした
「久しぶり覚えてる? 俺と同じ大学に入ったって?」
「頑張ったもの。好きな人と同じ大学に行きたくてね」
ふふん! これぞリベンジワード!
好きな人がいるのよ攻撃!
だが、あいつのメンタルは
あたしの予想をはるかに超えていた
「なんて健気な……ありがとな」
「はい?」
「俺 別に断るつもりはなかったんだぜ?
ただ、高校受験の前に本気かって思ってさ」
「──!!」
「今からでも遅くないだろ? 俺たち」
「馬鹿ね。ほんと馬鹿……あんたって
ううん 馬鹿はあたしだわ」
あたしは あの時はこいつに見せられなかった涙を
今日は見せて 笑った
リベンジよりもっといいこと
五年もかけてようやく見つけられたから




