魔法が身近にある世界 後日談 ~魔法がともにある世界~
最近同じ夢をよく見る。
「それはきっと未来のアニーちゃんよ」
彼女はエリーちゃん。おとねちゃんと仲良しの子と聞かされ――あれ?
ぼくとも仲良しの子にお昼寝タイムの後に相談してみる。
「金髪で青い目のパーカーでジーンズ……お兄ちゃんぐらいなのかな」
「ケイお兄さんって今高校生だっけ?」
おとねちゃんとエリーちゃんの会話が弾む。
同じ年頃のはずなのにどうにもぼくは取り残されていた。
(なんかこう……自分がお兄ちゃんだった気がするんだよなあ)
そっと手を見る。おとねちゃんやエリーちゃんと同じ小さな手が瞳に映った。
「私とアニーちゃんはいつも一緒だよ。トイレぐらいかな別々は」
エリーちゃんと話すおとねちゃんの声に、この思いは掻き消える。
(うん。ほとんど一緒にいる。僕も寂しいし人見知りするし)
ある日、ケイお兄さんがエリーちゃんを連れて遊びに来た。
「夕方に迎えに来ますね」
お母さんにケイお兄さんは挨拶して、自転車にまたがる。
その姿をどこか懐かしく感じ、手を振って見送った。
「今日は何して遊ぶ?お着替え?お描き?おままごと?」
全部やろうということで一通り遊ぶ。
お人形さんとぬいぐるみさんを交えてごっこ遊びしているとチャイムが響く。
気がつくと夕方で、玄関にはミサキお姉ちゃんとケイお兄さんの姿があった。
「門の前で顔を合わせてね。待てばカイロの日和ありのケーキ買ってきたよ」
欲しがるエリーちゃんの頭をなで、後で買いに行こうとケイお兄さんは言う。
続けておとねちゃんとぼくの頭もなでる。くすぐったい思いに顔がにやけた。
からかい半分なのか、ミサキお姉ちゃんも頭を差し出す。
「えっ」
顔を少し赤らめて、ケイお兄さんがミサキお姉ちゃんの頭をなでる。
下を向いていたミサキお姉ちゃんの顔もまた、赤くなっていた。
お母さんが全魔連に出かけていくのをミサキお姉ちゃんと見送る。
「ご飯作るね。従姉だから味はお母さんと似ているはずよ」
エプロンをして鼻歌を口ずさむミサキおねえちゃんをぼくたちは手伝う。
食べた次はお風呂、タオルを巻いたミサキお姉ちゃんにドキドキする。
「次はアニーちゃんの番よ」
湯船から出てミサキお姉ちゃんがぼくの体を洗いだす。
おとねちゃんと同じく大量に発生した泡がぼくを包み込む。
「ケイさんって格好良い人ね」
その言葉になぜかぼくはショックを受ける。
「ひょっとして好きだった?アニーちゃんも」
「ぼくはミサキお姉ちゃんが……」
「アニーちゃんが男の子で年齢がケイさんと同じだったら惚れていたかもね」
魔法で大きくなるのも性別も変えるのも難しいと、ミサキお姉ちゃんは話す。
大きな魔法力と強く願いが必要と知り、ぼくの思いは泡へと消えた。
その泡もシャワーでぼくの体からきれいさっぱり流されていく。
「さっぱりしたね、アニーちゃん」
ドライヤーで髪を乾かしてもらったおとねちゃんがぼくに笑顔を向ける。
その笑顔にぼくの悩みは吹き飛ぶ。
(ありがとう、おとねちゃん)
おとねちゃんが一緒にいてくれたらどんなことも大丈夫と強く思えた。
(大きくなってアルバイトを初めても、おとねちゃんと一緒にいよう)
一人ぼっちにさせるものかと、強く心に誓う。
歯を一緒に磨く。一緒にベッドに入る。おとねちゃんは右、ぼくは左。
同時に向き合い、笑顔をこぼす。
「これからも一緒にいようね、アニーちゃん」
「うん。わたしたちずっと一緒だよ、おとねちゃん」
おとねちゃんと同じ言葉を使う。双子なのだしそろえようと思う。全部。
ミサキお姉ちゃんが本を読む優しい声に、わたしのまぶたは重くなっていく。
(おやすみなさい、お父さん)
写真に見守られ、わたしの意識は真っ暗な闇の世界へ落ちていった。
また夢を見た。
夢の中のわたしは長い金髪、丸みを帯びた体で手には杖を持っている。
隣には同じ長さの黒髪の女性がたたずむ。
「一緒に行こう」
そう語り掛けるおとねちゃんはわたしに手を差し出した。
「うん。一緒に」
私はおとねちゃんの手を取り繋いで、一緒に歩き出す。
おとねちゃんの反対側の手には、お父さんの刀が握られていた。




