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祈憚  作者: 和鏥
鬼門
1/33

はじまり



   この話を提供してくださったM氏に。

 私の連絡先は、どの媒体でも変更しておりません。

 念のため、ここに記載します。

 はじまり


 1


  私は、(しき)() (かおる)といった名で小説を書いている。

 怪談を題材にする為、私の周りにはそういった類に強い人たちが自ずと集まっている。


「薫ちゃんに見て欲しい物があるんだけど、いいかな」

 そう言ってくださったのは、とある雑誌編集者M氏である。

「俺も怪談話を書いていた時期があってね」

 書くのはもう止めたけれど、と照れ臭そうに言うM氏は短期間ではあったが自身の雑誌にホラーを題材とする文章を投稿していた。

 たしかその雑誌は読者からの心霊体験を常に募集しており、最後のページには必ず

 ”心霊体験がありましたらぜひ教えてください。”

 そういった文章と共にフリーのメールアドレスを記載していたと思う。

「懸賞を出しても、出さなくても、そういった話を送ってくれる人は多い。その内の一つに興味深い話があって、君に見て貰いたくて」

 仕事で忙しかったが、それでも良いと答えたのは、M氏には一度お世話になった事があるからだ。それに彼は何事にも慎重だ。

 きっと、私に教えてくれるこの話もそれなりに調べてから言ってくれているのだろう。

 今の時代、通話をしながらでもファイルを作成し、送ることは簡単だ。彼はすぐ私宛にファイルを送ってくれた。

 そのファイルの他にまるであらすじのような文章がコピーペーストされている。

『M先生の記事を拝見しました。とても興味深く、俺もそれに似た体験をしたので送らせて頂きます』

「始まりは、こんな感じだった。たしか……、そう。その時、俺は夢を題材にした怪談小説を書いていたんだ。だからコレを送ったんだと思う」

 通話越しで何かをめくる音を出しながらM氏は言う。おそらく自分が書いた記事を実際に今読み直しているのだろう。

「インターネットで有名になった。猿夢って知ってるだろう?」

 ファイルを開きながら「はい、知ってます」と私は答える。

 猿夢。

 出典はインターネット。オカルト掲示板で出た話だ。

 電車内のアナウンス通りに乗客が無惨に殺されていく。投稿主はなんとか目覚めるも――……。たしかそんな内容だった気がする。

「それを機に夢も考え方によっては怪談になるんじゃないかって思い直した人がいるらしい。予知夢、死んだ祖母祖父が警告をしてくれる夢を見た、だなんて報告はこの他にもちょくちょくきていた。だが、この情報をくれた人……。君が見たのはちょっと質が違う。これは彼の夢日記のようなもので、君に送る許可は得ている」

 私は珈琲を片手にファイルを開く。


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