自己嫌悪
「ねえ、夏樹も今大学にいるらしいよ。後で合流して三人でスタバ行こ!」
授業が終わった後、連絡をもらったのか、携帯をこちらへ向けながらイエーイとでも効果音が付いているかごとく無邪気に微笑む。
「うん。行こう」
「そう来ると思った!よし夏樹にも言っとくね」
一瞬、lineで送るなら個人では無くグループで送らないかなと一瞬不安がよぎったが、それは夏樹のインスタの写真を見て少し収まった。
「ねえ、美月から連絡した?」
「うん、インスタの写真大学の近くだったから」
わざわざ確認してやっと安心する。
なんて小さな女なんだろうと思うが、仲間外れにされているのではないのかと不安が一度起きると収まることはない。
こんな私が心底嫌いでゾゾッと嫌悪感が走る。
「そういえば、聞いて、楓が今度合コンしないかだって。ねえ行きたい?」
「え、私?私は……」
正直、美月がいたら私はまた同期A役の台本を受け取ったのと同じことになる。
それでも。私はこの関係性から逃れることが出来ないのだった。
二人で大学を歩くだけで、こんなにも注目される。
羨望、羨望、羨望、嫉妬、嫉妬、嫉妬……。
美月はこの視線をどう思っているのだろうか。当たり前すぎて何も気が付かないのだろうか。
私は、自分の多少の優越感を捨てられないが故結局ドラマから降りられないのだ。
脚本は最後まで演じなければならない。
その時ティロンとお互いの携帯の音が鳴った。
「あ、もう、夏樹ついているみたい。急ごう!」
私の服の袖を少しちょんちょんと触ると、まるで高校生の様に少し小走りを始めた。
「ちょっと、待って」
私は、美月についていくのに精いっぱいだった。
まるで、この関係性を表しているようだ。
それでも、私は、自分をやめることはできずこの性格も変えることが出来ず、ただそこで立ち止まっているしかないのだ。