選ばれし人
教室につくと、すでに何人かが席についていた。
「後ろの席ゲット!」
美月が私によっしゃとぐっとサインを送る。
「ねえ、でも思うんだけどさ、大学で後ろの席って人気な感じするけどうちの大学に限ってはそうじゃなくない?だって常に空いているし」
美月それはね、
「おーす!」
「お、楓グッドタイミング!いきなりなんだけど、今日さ宿題あったの知ってる?私知らなくて……で楓に見せてほしいなって」
美月は少し上目遣いで楓を見る。
「はあ、お前さ、少しはスケジュール取れ!前もそうだっただろ?」
「ごめーん。よく忘れちゃうんだよね」
「仕方ねえな」
楓翔太はまんざらでもなさそうに美月の前に座り、美月に宿題のノートを見せる。
「七瀬さんを見習え!こんなに美人でしっかりしている人そうそういないから」
二人の視線が私の方へ注がれる。
「ふふ。そんなことないよ。私も沢山忘れちゃうことあるし」
「またまたー。ほらこういうところだよ。お前との違い」
「もう、否定しないでよ!本当にそう!自慢の友達です!」
可愛くウインクを美月は私へと向ける。
「話していないで早く写せ馬鹿者」
「今日の教授の口癖じゃん」
二人は仲良く笑いながら宿題をしあう。
ー美月、私は、やっぱりあなたがうらやましい。
楓翔太は背が高く、バスケットボールをやっていた関係もあり非常に背が高く、女子からもすごく人気がありそうな甘いルックスを持っている。
おまけに、ファッションセンスも抜群で理系ときている。
誰もが一度は好き!となりそうなものを兼ね備えている彼とまた同じような美月がそこに存在するだけでまるでそこだけドラマの撮影でもしているのかのようだ。
私は、そのドラマでもきっと同期A位の端役なんだろうなと思う。
ねえ、だから、だれも後ろへ座りたがらないんだよ美月。
私は役がもらえるだけでもありがたいと思うことにし先生が来るまで携帯をいじった。
まるでそこに存在していることを忘れるように。私は同期Aをしっかりこなすのだ。
ドラマでもそうだろう。一般で見たら可愛いとされる子でも、綺麗な花の前ではカスミがかかる。
私は、私は、……。
残念ながら、この気持ちを表すほどの語彙力も持っていない。
仕方がないから見たくもないインスタをさも忙しそうに覗くことにした。