私は美しい……よね?
_この子は、目は大きいけど、口元が残念。この子は、整っているように一見見えるけど、加工詐欺。背景がゆがんでいるっつーの。この子は、……いうまでもなく痩せろ。
いつからだろう。私は人の顔見て勝手に評価をつけ、完璧な顔を探すようになったのは。
インスタグラムで女友達(ただ、バイトで一緒だっただけ)の別の友人らと遊んだらしき集合写真をつまみに私は昼ご飯を食べていた。
自分の机の上には、鏡とメイク用品とコンビニで買ったうどんがつつましく置いてある。
その子のきらきらした写真を見るとより一層自分がみじめに感じた。
……私は徐に鏡を開いた。
「私は可愛い。私は可愛い。」
呪文を繰り返すようにそうつぶやきながら、鏡に映った私の姿を確認する。
あの子たちよりはイケているよね。
自信のチャームポイントである鼻を何度もさする。
「……さあ、メイクして大学行こ」
私にとって唯一この瞬間だけが私の幸せな瞬間だった。
私は自分のメイクボックスを持ってくると、自分の大好きなブランドで埋め尽くされた沢山のコスメをジーっと見つめる。
どれもキラキラして私の生活が一瞬で御姫様のような世界へ降り立ったような気分になる。
うーん、よし、今日はこれにしよう。
少しピンクがかった花の模様のチーク、唇がプルプルになる韓国のリップ、はかなげな印象の薄いココアブラウンのアイシャドウ。
全てが私をワクワクさせる。
誰のためでもない。私のために。
私はメイクをするのだ。
髪もきれいにまこうと思ったが如何せん時間がない。
「ストレートにしとこ」
全ての準備が完了すると私は、先ほどの不安な自分にわざと笑顔を張り付けた。
「今日もがんばろ!」
そう。鏡に映った私はあのキラキラ女子と同じように美しく感じた。
私は私ではあるが私ではないのだ。
ー大丈夫。間違っていない。
ピンクの長いコートを手にとり、私は家の鍵を閉めた。