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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

飽きたら終いのおれさまの異世界生活

また始まった。ブレドラ。

017 「君ごとティアーズ/エヴァンタシアの風」外伝。

 好奇心と張り合うといつも痛い目に遭う、飽きたら終いのおれさまの異世界生活



 ◇


 

 つい先日のことだ。


 くよくよしたってしょうがない。

 めそめそしたって始まらない。


 どうやら俺さまは、死んでしまったようだ。

 死んだ理由は、まったく記憶にございません。

 登場したばかりで何ですが、俺さまは、もう死んでいる!



 「そ、そんな目で見るんじゃなーい!」


 はっ! 何故か、誰かに失望感まる出しの冷ややかな目で見られた……

 そんな気がしたんだ。


 許せ! どうか許してくれ。

 登場したばかりで、すでに死んでしまった無能な俺さまを。

 

 さぞかし、失望した事だろう?

 君のその気持は、良く分かる。分かるんだよー。


 俺さまだって、死にたくて死んだわけじゃないさ。

 はっ! そうなのか?

 死んだ理由は、まったく……記憶にございません。

 

 俺さまは、君が知ってか知らぬか、知っての通り、いつも通りにおもちゃ箱の整理をしていた。

 いつも通りに、頭っから、でっかいでっかいガラクタボックスに半身突っ込んでてよ。ま、それが俺さまの日課だからだよ。


 で、そこからの記憶が頼りないんだよ。


 痛いって感覚は無いんだが、気づいたとき、腹と背中に違和感があって、手でまさぐって見たら、

 なんと! 胴を喰いちぎられていた様なんだ。


 しかも、

 ねえんだよ、俺さまの上半身が! なんでそっちなの?


 どう考えても、もう死んでんだろコレ。どこで思考が働くのかは謎なんだが。

 って言う、俺さまの身に緊急事態が発生したのだ。



 だが、痛みも無いことだし。

 そこの君も、だいたい察しはついてんだろ?

 

 そうよ! 俺さまにも、ついに異世界生活の道が開けたんだってコトだよ。


 「そ、そんな目で見ろよーっ!」


 いよいよだぞ、転生だ。

 異世界転生だよー!

 あ?

 「コジマじゃねーよ、転生だよ!」

 


 ◇

 


 で、 

 いま、どんな状態なのかっていうお話をしようかなと思っている今日この頃だ。


 「俺さまは、もう死んでいる!」


 それだけは、確かなのだ。それと、

 さっき神様の声がきこえたんだ。




 《フッ、俺さまよ、ついに天に還る時がきたようだな。そのケチな生涯に一片の悔いもないのか?

  おまえはもう……》


 「ぐわあああああああー!」


 神様でしょ? そんなオチ見えのセリフはどーでもいいから、ねぇ? ねぇ?

 転生だよね? コレって転生だよね? 

 俺さまは、神様のお告げを雄叫びで遮って、聞いちゃったのよ。



 《フッ、俺さまよ、そんなにニューヨークに行きたいかー! ニュー……》


 「ぐわあああああああー!」ちがうちがう、ちがうー!


 神様! 神様ー! そんなトコに、この状態で行かせたいのかー!?

 下半身しか無い、こんな状態でクイズ旅行は遠慮しますわ!


 「異世界でしょ? い・せ・か・い!」

 いじわるな神様だにゃー。


 《す、すまぬな。今はな、どこの異世界も満床でな。しばらく自宅待機をしといてくれ》


 ま、満床って!? 

 「俺さまは、こころのびょうきかあああああー!」

 ベッドインやなくて、フェードインさせろやあああ。


 《いや、ほんと申し訳ないの。無能な神だと思わんでくれ。異世界も予約でいっぱいなのじゃ。

  異世界では、俺さまよ、その上半身を取り戻す旅をさせてやるぞ。どうじゃな?》


 「ちがうちがう、そやないそやないノシ」ぺしぺしっ。


 ◇


 《な、なんだと! 貴様! 誰に向かってチートでスローライフだのと申しておるのじゃ!》


 「だって、それが異世界でしょう? 普通に考えても考えなくても、それが転生でしょ?」

 「思ってたのとちがうんなら、このまま死なせてくれ!」

 うわああ~ん。いじわるう。

 それが、死んだばかりの人間にかける言葉ですかー!

 それでも、人の上に立つ資格を持った神様ですかー!


 泣いた。

 そりゃ泣いたよ。



 《ふ、普通の異世界暮らしで良いのか? 来るやつ来るやつ、貴族の娘にいじめられたいだの、使い捨てダンジョンをくれだのと、願ったり叶ったりの願いを叶えてやっておるのじゃぞ》


 《呪ったり祓ったり、最強のぼっちだったり、薬草3つで売られたり、みかん3つで泣き止んだり、踏んだり蹴ったり満載の肉薄生活をほんとに望まんのか?》


 「そ、そんな過激なのは、いらないんスよ!

 小さな町から、お外に行って、出会った弱々しいやつからコツコツと戦って、少しずつ強くなって……。

 そんなありきたりのファンタジーが良いのです。ロールプレイがやりたいのです。

 魔王なんか目指しません。やれるだけやって、飽きたらそこで終いの俺さまの異世界生活でいい」


 《なんと、このフルCGのご時世に8ビット転生を望む、そんな変わり者が現れようとは……。分かったわ、望み通りにはしてやるつもりだ》


 つもりって? どういう事っすか?

 なんぞ問題でもあるのかにゃ……。

 「ねえ神様、なんか意地悪いこと言うつもりでしょ?」


 《別にワシが悪いわけでは無いわい。おぬしの死に方が悪いのじゃ。……

  ……眉間にシワを寄せて睨んでるっぽいな。まあ、聞きなさい》



 ◇


 なんか、いっぱいめんどくさい事を言われた。

 気が遠くなりそうだったが、頭部が無いので何も起こらなかった。


 《……と、いうわけじゃ。そのちっぽけな脳みそが理解を拒むのをやめたら、もう一度、話しかけてくれ》





 神様が教えてくれた問題点は、俺さまにあった。

 せっかく死んだのに、転生って簡単じゃないんだな。


 《いや、転生自体はいとも簡単じゃ。だが、転生できるのは、おぬしが人間だったらの話じゃ》



 要するに、神様の話はこうだった。


 

 俺さまは、これまで自分のコトを人間だと思い込んで生きて来た。

 俺さまの部屋は、古い井戸の中にあって、俺さまは、そこから一度たりとも外出した試しが無かったのだ。そういや外に行った覚えはない。


 そして、俺さまの日課であった、おもちゃ箱の整理の最中に俺さまは、命を落としたのだ。


 おもちゃ箱だと思っていたのは、なんと、ミミックだったのだ。


 しかし、これまでは運良く食べられなかった訳ではないのだ。

 人間だったら、とっくに食べられていた事だろうと。

 つまり、俺さまもそのミミックと同じく、元より魔物だったのだ。


 だが、俺さまには様々な人間の知識があったのだ。

 おもちゃ箱の中には、人間の記した読み物がくさるほど入っていた。


 俺さまは、その読み物から人間の情報を様々に蓄えていったのだ。

 文字を読む事を覚えたのは、どうやら誰かから与えられたスキルだと言うのだ。

 

 その誰かのコトまでは、ここの神様にも分からないそうだ。

 俺さまは、誰かは知らないが知識人と共に過ごしていて、いつの間にかこの古井戸に置いて行かれたのだった。それも、数百年以上も昔のコトで、俺さまは、全く覚えていなかったのだ。


 「俺さま」というのも、傍に居た人物の口癖だったのだろう。

 ミミックが、いつから隣りに居たのかも、俺さまは覚えていない。

 最初は、魔物同士で仲良く暮らしていたのだろう。


 だが、人語解析スキルのおかげで、ミミックが飲み込んでいた書物を読み解く様になった。

 ミミックにとっても、物語を読み聞かせてもらえる日々に喜びはあった。


 次第に俺さまは、人間に憧れを抱き、その思いが強く強く募っていったのだ。

 しかし、そのコトがミミックにとってさみしさや、苦痛となっていたコトさえ気づかず、俺さまは、人間の暮しを夢見て、ミミックに語り続けたのだ。


 ミミックは、思いやりの故か、苦痛の果てか、数百年の時を経て、俺さまを噛み殺してくれたのだった。

 

 人間の記した書物の中には、人が死んだら異世界転生が叶い、しあわせの国へ行ける。


 そんなおとぎ話も沢山あったから。


 でも、どうやらおとぎ話では無さそうだ。

 ミミックには、辛い選択をさせてしまった様だが、こうなっては後の祭りだ。

 それならば、俺さまの上半身はミミックの腹の中にあるはずなのだが。


 上半身と言ったって、そもそも人間じゃないのだから……ん? 待てよ。

 俺さまは、鏡を見たことが無かった。

 一体どんな魔物だったのかと、神様に聞いてみたんだ。

 すると、神様は俺さまにこう告げた。



 《お前さんは、LV1のスライムじゃよ》

 


 ほへ?

 いや、待て待て待て待て待て待てぇー! 待ってくだせぇーな!


 ス、ス、ス、スライムで、レベル1で、死んじまったのかあああああ!

 俺さま、トホホじゃねえか。


 ていうか、その上半身に何か特別な意味があんのか?

 ていうか、この下半身じゃ何か特別な問題あんのか?



 《問題おおありじゃわい! お前さんの身体は半分じゃぞ。レベルは1じゃぞ。半分になったらレベルないんじゃぞ。レベル認証がないのじゃ、人間なら、どんな姿で死んだとしても問題はないが》


 はあ。

 

 神様は教えてくれた。

 俺さまが、いきなり人間になる事はできないコトを。

 魔物も、死んで転生できなくはないが、せめてレベルが残っている必要ありだってコトを。


 人間は、生前の世界で何かしらの人生経験を積んでおる。

 魔物だって、勇者とそれらに与する者たちに駆逐されながら、生き残って成り上った者だけが、転生モンスターと成れるのだと。

 

 《お前さんは、井戸の中で数百年も引き籠って、夢を見ながらぬくぬくと生きてきて、レベル1のまま何の苦労もせず事故死した様なものじゃ。こちらが召喚した訳でもないのに。それを自在に願いが叶わぬと知れば、死んだままでいいじゃと! 甘ったれるんじゃないわい! 

 しかしながら、ワシも転生を司る神様じゃ。何とか知恵を出して力添えをしてやろう》



 グスンと心の中で鼻水たらしながら、神様の言う事がもっともだと思い知らされた俺さまは、ぷるんと膝を落として、己の浅はかさを恥じた。


 

 だが神様にだって、死者に対して転生屋としての意地があると言われた。

 だから、条件付きの特別計らいでなら、異世界生活を叶えてやれると。



 「おお! 神よ、我を救いたまえ」


 異世界生活くれるなら、なんだってやります! 

 感謝します。あーんもう神様ったら、ステキ!

 俺さまは、乙女心が芽生えそうなくらい神様を尊敬した。



 条件その一。

 異世界の転生は諦めろ。


 条件その二。

 自分の居た、元の世界で我慢しろ。


 条件その三。

 人間たちとの、会話は望めない。


 条件その四。

 元のスライムで生きるなら、井戸の外へだしてやる。


 条件その五。

 そこから始めて、自力で人間に成りたきゃ成れ。



 ◇



 神様の魔物への風当たりのつめたいこと。

 

 「元の世界ってなんやねん!」


 転生すると思ったら、せえへんのかーい!



 神様の話だと、俺さまの居た世界も、俺さまの望むファンタジー世界だとさ。

 おお! そうだったのか。それは、知らなかった。



 つまり、こういうコトさ。


 Lv1のスライムで井戸の外に出る。

 俺さまの希望に沿った場所へ送ってくれる。

 俺さまには、神様からひとつ任務が与えられるので、遂行せよ。


 あと、人語のスキルはそのままあるから、人々の言葉は理解できる。

 スライムの姿だけでは、何かと不便だろうと、動物に変身できる能力スキルをやるから、犬と猫、どっちか選べ。


 俺さまは、秋田犬が良いと要望した。

 神様は、それがどんな犬種か知らんけど、イメージして変身すれば成れるってさ。

 そして最後に、動物の時は名前が必要になるので、俺さまの世界で迷子になったが、生存している仔犬を探してくれた。その仔犬は、俺さまのイメージで姿が変わり、元の飼い主に出会っても気付かれる心配は無いそうだ。



 《その仔犬の名は、チャオズ。お前さんの名は、チャオズだ。人間に成れない間は、それしか名乗れないのじゃ。良いな》


 「良いなって言われても、それ誰に名乗るんですか?」


 《お前さんが、町に入るには犬に成らねばいかん。存じているだろ? 魔物は人間の町には入れてもらえない事を。そこに居る動物たちとは、話せるように成っておる。それがワシの与えた変身スキルじゃ》

 


 神様は、何も意地悪じゃなかった。

 出会った時は、蘇生すな! 去勢すな! 転生せえへんのかーい! 

 などと恨みそうだったが。

 ありがとう、いい胃薬で

 生き返らせてくれて、おまけに話し相手も居る場所に送ってくれて。

 

 俺さまが住み着く町には、崩れた教会がある。

 その地下に<モフモフBAR>という、動物だけのお店があるのだとか。

 そこで情報収集をしながら、好きに暮らせばいいと。

 まさに願ったり叶ったりじゃないかよ。



 神様から与えられた任務をやり切れば、後は、俺さまの自由なのだ。


 

 ◇



 俺さまの任務内容。




 これから行くのは、ウルタの町。

 そこに勇者候補生の訓練所がある。

 人間たちが、スライム相手に試験をしているそうだ。

 なあに、相手はペーペーのガキんちょ。

 だが、油断は禁物。ヤバくなったら、逃げたって良いんだって。


 《死んだら、次はないと思え!》



 GO FIGHT !!



 俺さまは、チャオズ。

 俺さまの対戦相手は、もう目の前で身構えている。



 そいつの名は、ニルス・バオバーン。



 へへっ。覚悟しろ!

 俺さまだって、命が懸かっているんだ、容赦しねェよ。






 神様から課せられた任務名 【晴れのちスライムクエスト】




 ニルスよ。

 あんたのコトは知らねえが、俺さまぁ人間を知り尽くしたスライムだぜ!





読んで下さってありがとう。何かをひっしに頑張っています。

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