悪夢と助鳥と君の声
久しぶりの投稿です。
頑張ります
また少女が一人泣いていた。
薄暗い部屋の中で、土いじりをしている様だった。
音楽が聞こえてきた。それは、私が小さい頃よく歌っていた童謡だった。
少女が歌っているのだろう。曲が聞こえてくることはなく、永遠と同じ歌詞の部分を歌っている様だった。
その歌声はやがて鼻歌に変わり、ついには歌うことをやめた。
どこか気を落としている少女に近づこうと思い、歩み寄って行こうとしたが、私はまた動くことができなっかった。
声を出そうにも、出ていないのか分からないが、少女が反応することはなかった。
少女が土いじりをやめ、こちらに振り返る。
「またある……」
少女がそう言って、私の方に近づいてきた。
その姿はやはり、奇妙。いや、不気味な姿だった。
耳についた蛆虫がボトボトとおち、その落ちた蛆虫を助ける様に数匹ハエ達も下へと落ちた。
ボサボサの髪に、焦点の定まっていない眼球。
この前見た時と何一つ変わっていなかった。
私はまた少女から逃げようとしたが、また動けず、その場に囚われている様だった。
少女は私に近づくと、また鷲掴みにし、口の中へと運んだ。
「はやくしになよ」
少女がそう言った様な気がした。
ーーーーー
「……夢君。涼夢君!」
私が目を覚まし、飛び起きると、そこにはかなり焦っているアグルスがいた。
「ハァハァ……な、なんですか?」
「何ですか。か……君随分とうなされていたが大丈夫かね?」
アグルスにそう言われ、思い出したかの様に、全身から汗が吹き出した。
少女が私を噛み砕く音がまだ耳の中にこびり付いている。
思わず耳を塞ぐと、アグルスが、
「怖い夢でも見たのかい?」
そう聞いてきた。私は頷いた。
「そうか、そうか。なら私のこの手を見ていてくれ」
そういうとアグルスは、手のひらを私に見せてきた。
何かと思い、覗き込んでみると、アグルスは徐に拳を握り、その握った手開いた。
すると中には、萎れた花があった。
「ふふ、どうかね?涼夢君」
「え?どうって……花萎れちゃってますよ」
「何!?」
私がそういうとアグルスは、慌てて自分の手のひらを確認した。
萎れた花に気づいたのだろうか、彼はわかりやすく落ち込んでいた。両肩を落とし、とても声をかけられる様な状況ではなかった。
「あの……アグルスさん?」
「君に謝るついでに元気を出してもらおうと準備してきたはずが……」
「私に謝る?」
彼はハッとして、なぜかその場で一回転をして、後ろに手を組んで立ち直した。
「この前の失礼を詫びようと思い来たまでだ」
「なんの事ですか?」
「蒼真氏を呼ぼうなんて言ったから走り出したのだろう?」
アグルスさんは私の方を見るわけではなく、どこか遠いところを見つめて言った。
「そ、そうですね……」
「君がなぜ蒼真氏を避けているのか私にはわからないが、彼に言えないようなことがあったら私を頼って欲しい。私はいつでも君と出会った場所にいるから」
彼はそう言うと、辿々しい足取りで扉から出て行ってしまった。
(蒼真に言えないこと……そんなこと特にないけれど)
私がそんなことを考えていると、再び扉が開いた。
蒼真が入ってきたのだ。珍しいことに、横に早水京香はいなかった。
「どうしたの?」
わたしがそう聞くと彼は口を開いてこう言った。
「花火を見に行かない?」
かすれた声だが確かにそう言ったのをわたしの耳は聞いていた。彼はわたしの目をじっと見つめて、、、いや捕らえているのだろう。
「私、外に出ても大丈夫のなの?」
私が不安そうにそう聞くと、彼はまたあの下手くそな笑顔で頷いた。
「蒼真がそう言うなら。行こうかな花火」
私は精一杯の笑顔で答えると彼は部屋の中にあった車椅子を持ってきた。そして私の体を持ち上げ、、、ることが出来なかった。
私の骨格が変わった。それも一瞬にして。
幸い私はベッドの上に落ちた。彼は思わず手を引いた様だった。
「え?」
私はその場に固まってしまった。それは蒼真も同じで、動けずにいる。
「あなたが付いていながらこんなことが起こるんですね……」
扉の方から高めの声が聞こえてきた。
「14、いや15歳くらいでしょうか。涼夢さん、自覚があると思いますが、あなたの骨格が今まさに代わりました。気分はいかがですか?」
早水京香がコツコツと足音を立て、長く美しい茶色の髪をかき上げながら、部屋の中へと入ってきた。
「……さほど良いものではないですね」
「そうでしょうね」
私の返答に興味がないのだろうか、早水京香の返事はあっさりとしていた。
「蒼真先生、気分はどうですか?大丈夫ですか」
早水京香が覗き込むようにしてそう聞くが、蒼真はまだ動けずにいる。するとあろうことか早水京香が少し跳び、蒼真の頬に接吻をしたのだ。
「え?な、なにやってるのよ!」
私が声を荒げると同時に蒼真も接吻をされたことに気が付き驚きの目で、、、いや、軽蔑の目で見ていた。
「よかった。まだ動けそうで安心しました」
「あなた何考えてんの!ひ、人の旦那にキスするなんて!」
妻と言いなれておらず少し詰まってしまう。一方、蒼真は接吻されたところを手で触り早水京香の方唖然として見ていた。
「そんなことどうでもいいじゃないですか。あなたがいなければ蒼真先生がこんな思いをしなくて済んだのに」
「何よそれ、、、あなたはただの研究員でしょ?なんで蒼真にそんなことする必要があるの!」
「それは、、、」
早水京香が蒼真の方に目をやった。彼は目が合ったのだろう。その瞬間に私の方を見て違うっ!と訴えているようだった。
「蒼真、、、早水さん二人だけで話し合いましょ。あなたは席を外して」
私がそう言うと彼は何か言いたげだったが、あきらめたのだろう。俯き、かすれた声で「わかった」と言い扉の方へと虚ろに歩いて行った。
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