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『よくある噂』
町で噂になっている怪異の話について、とある小学校にいる低学年クラスの子供が話をしていた。
「ねぇ、知ってる? 私達の通る通学路、最近出るんだって」
「何が?」
「お化けだよ」
「お化け? 嘘だぁ。そんなの存在するわけないよ」
「えー、お化けはいるよ。ホントだって、ホントにいるんだよ。ほら、返りの通学路にちょっと狭い道あるでしょ、あそこでね……。何でも、ずっと昔に子供を失くしたらしい女の人の霊が、さ迷い歩いてるらしいの。最近の事なんだって。それで、通りかかった女の子を捕まえて、あっちの世界に引きずりこんじゃうらしいよ」
「えー、信じられない。ていうか、女の子だけなの?」
「うん、それも小学生のね」
「へんなの。怖いねぇ」
「ちゃんと怖がってよ、もー。ほんとの話なんだから」
「はいはい、噂っていうのは、そうやって語るもんなんだよね」
「もーっ」
よくある怖い話の一つとして消化され、子供の話題は次へと移っていく。
まさか、言いだした子供が、その日の帰りに実際にその当事者の一人になるとは思いもせずに。