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『方城織香』
私は病弱らしくて、あまり活発な遊びはできない人間だった。
だからその日も私は体調を崩していて、お世話になっている病院のベッドから窓の外の景色を眺める事しかできなかった。
病院の外からは元気な同年代の子供たちの声が聞こえてきていた。
いいなあ。
私もあんな風に元気いっぱい遊べたらいいのに。
そう思いながら、過ごしていると、病室に妹がやって来た。
家族になった六歳の小さな女の子。
ちょっと前までは親のいない子供……孤児だったけれど、今は養子というものになって私の妹になったのだ。
妹が欲しかった私としてはとても嬉しい存在だ。
そんな事を伝えると幼い年頃にもかかわらずすでにツンデレ属性を会得している妹は、「ただ遊び相手が欲しかっただけでしょー」とか言ってくるが。やだ、可愛い。お姉ちゃんそれ好き。
「暇してるでしょー? 遊び道具もってきた」
やって来た妹と、色んな遊びをするその時間が私はとても楽しい。
カードゲームに、ボードゲーム、一人ではできない遊びをする、考え方が違う相手と勝敗を競い合うのは凄く楽しかった。
やんちゃな妹は、ゲームがそれなりに得意らしく、そういうのが得意な私にも中々勝たせてくれないけれど、そう言う所も含めて目標があってとてもいいのだ。
「次は、んー……オセロ持ってくるね」
そう言って妹は病室を出て行く。
家に折り畳みのオセロ盤なんてあっただろうか。
かさばるそれを、そのまま持って来やしないかちょっと心配だ。
変な所で頑固だから、有言実行とか言って苦労しなければいいのだが。
そんな事を考えながら次の勝負の事を考えていると、病室の扉が開いた。
妹が忘れ物でもして戻って来たのだろうか。
そう思ったのだが、違う人間だった。
十代半ばくらいの少年だった。
「君が織香ちゃんかい?」
その少年はこちらの名前を確認してくる。
私がそれに大して、肯定の言葉を変えると少年は、それは良かったとこちらに近づいてくる。
取り出したのはナイフ。
「僕の目的の為に死んで欲しいんだけど。どうかな?」
私は枕元においてあった、ナースコールに手を伸ばす。
私はつい少し前にお姉ちゃんになったばかりなのだ。できたばかりの妹を悲しませるわけにはいかない。
そんなものはお断りだった。
「誰だか分からないけど、そう簡単には死ねないわ。だって私はお姉ちゃんだもの。病気よりも早く死んで、妹を悲しませたくない」
「大丈夫、死ぬのは表面上だけだからさ。ちょっと間違えたら君が消えて別人になってしまうかもだけれど、生きてればなんとかって言うしね」
そんなのはきっとただ生きてるだけだろう。
ぱっとみただの少年にしか見えない不気味な侵入者に相対する。
「君に見せてあげるよ。妹を持った私の、世界で一番頼もしいお姉ちゃんの力をね」