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読まなくても特に不都合はないかと。

暗黒面真っただ中なのでメンタルブレイクするかもです。


タイトル数字コードは各話の後書き参照です。




『不幸な出会い』



 太陽が空の真ん中、頂点に上る頃合い。

 一人の少女が、町の通りを歩いていた。


 年齢的には五歳頃になるだろうその少女は、どこか目的地へと向かって一心に歩いているようだったが、不意にその足が止まる。


 日陰の指す裏路地に誰かがいる。


 その人物は十代半ばくらいの歳の金髪の少年のようだった。

 その少年は、体調が悪そうにその場所でうずくまって、動かない。


 通りかかる人は何人かいるはずなのに、、しかし誰もその少年には声をかけたりはしなかった。


 少女は通り過ぎていく者達に不満げな顔をした後、その少年の下へ向かう。


「ねぇ、だいじょうぶ?」


 声を掛ける。


 それが、その後の少女の運命を大きく狂わせるだろう事になるとは知らずに。





 氷裏敬介(ひょうりけいすけ)は、ここに来る前に受けたダメージを癒している途中だった。

 人目につかない裏路地に入り、怪我の回復を行う。

 けれど、そこで立ち止まてしまう。そこから動くだけの体力はなかったからだ。


 敵との戦いで受けた怪我は予想以上に深かったようだ。氷裏は敵が多い。戦闘になったのは不幸な出来ごとだった。


 この世界には来たばかり、なのでこちらの身分はない。


 そこらを数人の人間が歩いているが声を掛けられることはないが、それを非情だとなじる気はない。騒ぎにならず幸いな事だ。

 通りを折るく物は顔意も変えず通り過ぎていく。


 皆、興味などないのだろう。

 それとも面倒事は嫌っているのか。

 賢明な判断だ。


 まあ、ちり芥に等しき凡人などわざわざどうこうしようとは、思えないが。


 しかし、


「ねぇ、だいじょうぶ?」


 そんな少年にも声をかける人間は存在していたらしい。

 幼い少女の声。

 小さな親切心でも働きに来たのだろう。


 活発そうな雰囲気を醸し出す、悪戯好きそうな丸い目の少女。その子供が一人だ。


 子供は面倒だった。好きではない。

 理屈が通じないし、利益で取引できない相手だから。


「ねぇってば」


 焦れたような声に、さてどうしてくれようかと思いながら振り返ると……。


「……はは」


 その少女を見つめて笑いが込み上げてくる。


 まさか。

 こんな偶然があるのか。


 と、そう思わずにはいられなかった。


 見つけたのだ。探し物を。


 取り逃がしたターゲットを、偶然逃げ込んだ世界で見つけるとは……。

 なんという偶然、いや行幸なのだろう。


「ぐあい悪いのー?」

「いや、まさか」


 手をのばす。

 力を込めればたやすく手折ってしまえそうな華奢な首が、少年の手の中に収まった。


 それは、ただの人間の少女だった。

 驚異的な力を何一つ行使できやしない。非力な存在。

 こんな無力な存在に成り下がってしまって。


 あのクロアディールが。実験体ゼロ番が。毒姫の娘が。


「っハハハハハ……」

「な、なに」

「ミツケタ……! ミツケタ……ッ!」

「はなして……ぅぅっ」

「ミツケタミツケタミツケタ!」


 いけない、興奮のあまり首を締めてしまう所だった。


「かはっ、……ごほっごほっ」


 氷裏の手から解放された少女は、せき込みながらその場を離れて行ってしまう。

 でも良い。

 マーカーは仕込んだから。

 これ以降、相手を見失う事はないだろう。


「何としてでもあの器を手に入れなければ」




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