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叶わぬ想い

作者: 茶山の狸


彼はいつも私を見ていますの。

じっと見つめるその視線に私はいつからか胸の高鳴りを感じ始めましたわ。彼の私を見つめる瞳は、時に真剣であったり、或いは楽しげに笑いながら、または悲しげに。彼はいつも様々な表情を私に向けてくれますわ。


ああ、でも私は貴方にこの想いは伝えられない。


貴方に見つめられ頬が熱を持つたび、私は恍惚とした浮遊感を覚え、しかし貴方への抑えきれない恋心を吐露出来ない苦痛に見舞われますの。私は一体どうすれば良いのかしら?そうしてただ、私をこう生み出された神を恨む日々ですわ。私には彼に声を掛ける事も寄り添う事も叶わないのですから。


私は眠っている時でさえ夢の中で貴方を想っています。


夢の中での私は貴方に声を掛ける事が出来ますの。貴方と肩を寄せ、共に愛を語り合えますし、あの……その、きっ、キスもしますわっ!私をそっと抱き寄せ、慈しみを込めた眼で見つめて……。私は夢の中では貴方と、幸せになれますの。


でも、幸せは続かない。夢は夢であって現実ではなく、目覚めてしまえば露と消える儚い幻想。


私はその余韻を噛み締めながら、ゆっくりと目覚めますの。そしてまた貴方に見つめられる程に行き場のない恋心に悩むのです。ああ神様、お願いします……どうか、どうか私に声を下さい。彼にこの身を引き裂くような想いを伝える術を私にお与え下さい。


どれだけ願っても神様は応えてはくれません。


どうして……どうしてなの!


どうして私には声を出す事が出来ないの!?


どうして彼と愛し合う事が出来ないの!?


どうして、どうしてなの神様!何故、応えては下さりませんの!?彼と目が合うたびに我が身を焦がす感情に、私は我慢出来ませんわ!誰でも良いです……誰か私を助けて下さい。こんなの、辛すぎますわ……私はどうすれば良いの……?恋する事がこんなにも苦しく辛いなんて知りませんでした。恋愛はもっとドキドキする楽しいものだと思っていましたもの。私は貴方にこの想いが伝わる事を祈りながら、今日も貴方だけを想っておりますわ。


私がその一挙手一投足を見つめている彼は私を見て、ふと呟きましたの。



「そろそろこのパソコン、vistaにするかな」





彼女はパソコンです。



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― 新着の感想 ―
[一言] 人間じゃないものの視点で文章を書くことはありますが、このパソコンのしゃべり方が独特で、ごく自然にどっかのお嬢様かな?と思い込まされたため、最後まで気付きませんでいた。 なるほど〜ってもう一度…
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