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いつも通りの朝食。
いつも通りの学校。
いつも通りの夕食。
変わらない毎日。
変わることのない毎日。
そうそんな いつも通りの毎日。
それがずっと変わらずに続いていくものだと思っていた。
でも。
この世界に永遠など存在しない。
そんなことはわかっていた。
この日常が壊れてしまうことも本当はわかっていたのだ。
分かってはいても、理解したくなかった。
それほどに幸せな日々だったから。
しかし、それは突然で。
なんの前触れもなく。
唐突に幕を開けた。
なんのこともない言葉。
それは私の心に小さな穴を開けた。
さらさらと静かに流れ落ちる欠片。
そう、砂時計の砂は落ち始めたのだ。
一人静かに終幕へ向かって。
「聞いてる?」
その言葉でハッと我に返った。
「ん?うん」
「で?」
「ん?」
「なんかないの?」
「え?あ…おめでとう?」
「なんでそこ疑問形?」
「そんなことないよ」
「ほんとに?」
「うん」
「ほんとうに?」
「ほんと。おめでとう」
私は今、ちゃんと笑えてるだろうか。
どうしてだろう。
喜ぶべきなのに、祝ってあげるべきなのに。
素直に喜べない。
めでたいことじゃないか。
好きあった者同士が一緒になることは、とても素敵なことじゃないか。
きっとそれがこの子にとっての幸せだ。
だから…でも…
胸が痛い。
とうの昔に捨てたはずの想いが、溢れてきそうになる。
だめだ。これはいけないことだから。
しまわなきゃ。捨ててしまわなきゃ。
「…ありがとう」
微かに聞こえたあの子の声に、また胸を締め付けられた。
純白に染まった美しいあの子の姿。
でも、それは、私のものじゃない。
絵に描いたように幸せそうな二人。
私は慣れてきた笑顔を貼り付けて、二人を見送った。