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大好きな声が私を呼んでいる。
ゆっくりと視線をそちらに向ける。
ぼやけてよく見えないが、そこには確かにあの人がいた。
どこか遠くで何かを叫んでいるような音が聞こえる。
でも、ベールを隔てているようで。うまく聞き取ることはできない。
何を言っているの?
そう言おうとしたのに、なぜか口からは気泡が溢れた。
おかしいな。ここは海の中じゃないのに。
暖かい雫が私の頬に溢れる。
あの人が私を抱きしめている。
それがとても心地よくて幸せで。
溢れる想いを零して、そっと目を閉じた。