プロローグ
久しぶりに小説を書いてみました。
私の名前は橘朱鳥。
この古武術の道場で当主をしている。
私は小さい頃、周りからちょっと浮いていた、その時から気付いたのだか私は所謂、秀才と呼ばれる存在だった。
天才ではない。
秀才とは、「才能に秀でている」と書いて秀才と読むが、天才は「天が与えた才能」と書いて天才と読む。
この違いはなんなのか、それは才能の質の差だと私は思っている。秀才は環境適応能力が高く、努力が出来る人間。
これだけでも普通は凄いのだが、天才はもっと凄い才能の塊だ。やり方さえ分かれば、その才能の極意まで分かるような人を言うのだと思う。
私の兄はそんな天才だった、だが自分が天才とは気付かない、かなり鈍感な人で、絵に描いたようなお人好し、さらには困っている人はほっとけないと言う、お前はどこのラブコメ主人公じゃーい!! と叫びたくなるような人だった。
そんな兄の背中を見て育った私は、天才だけど頼りない兄のフォローをするために色々と頑張った。
今では最初に言った通り道場の当主をしている。
そして、そんな私は今、絶賛散歩中である。
え?仕事はしなくていいのかって?正直に言うとぶっちゃけ道場の当主は暇である。
私に直弟子はいないし、お金関係はその専門の人に任せているし、稽古を付けようとすると何故かみんな遠慮と言う名の逃走をするのだ。
まあ、そんな訳で私は大抵自分の稽古が終わった後は散歩している。
そんな、ほのぼのとした日常の中、私の運命を変える惨劇が起きた。
ある夏の日のことである。私がいつも通りのんびり散歩をしていると、一人の少女が視界に入った、その少女は涼しげな白いワンピースを着て、白い帽子を被っており、清楚と言う言葉を浮かばせるような少女だった。
そして、その少女にイタズラな風が一陣吹いた、その風は少女の帽子を道路側へと飛ばしす。もちろん少女は、飛ばされた帽子について行きパシッと空中で見事にキャッチした。しかし、そんな見事なファインプレーはこの後の悲劇によって塗り潰された。
帽子を取った少女の前には車が居たのだ。
それを見ていた私の行動は速かった。
と言っても私の判断でした訳ではない、まさに身体が勝手に動いた、そんな状況だった。条件反射で動いた私は、そのままのスピードで少女を抱え放り投げる、
がしかし次の瞬間、骨が砕ける音が頭に響いた。どうやら私だけが轢かれ、少女は助かったようだ。
ゴポリと口から血が溢れ全身が痛い、多分内蔵が破裂している。胸が痛いことから肺も破れたか、折れた肋骨が刺さっているかもしれない。
自分が急激に死に向かっているのが分かる。しかし、不思議と頭は冷静で流れてゆく時間がとてつもなく永く感じる。
そんな永遠の時の中でふと兄の顔が思い浮かんだ。
こんな時まで兄を思い出すのか、私はとんだブラコンだな、思えばこの人生ほとんど兄に使っている気がする。まあ、それも一興かな。もし来世があるならばもっと自由に生きたいものだな。
兄は私がいつまでも決して超えることの出来ない壁だった。でもそんな兄がいたからこそここまで頑張れたのかもしれない。
でもやっぱり私はそんな兄よりもっと
「強く・・・なりたい」
私はそう願うのだった。
『その願い、叶えてやろう』




